熱を伝える物質 伝えない物質(江頭教授)

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 前回につづいて化学で必須となる加熱の問題について考えてみましょう。基本に立ち返って熱についてみんなが知っていることを挙げると

熱は温度の高いところから低いところに流れる

ということでしょうか。これを定式化したのがフーリエの法則と呼ばれるもので「熱の流れる速度は温度の勾配に比例する」と言い表すことができます。

 「熱の流れ」は単位面積当たり、単位時間当たりに流れるエネルギーの量ですから単位は「J/m2s」あるいは「W/m2」となります。「温度の勾配」は温度の距離による微分ですから単位は「K/m」です。この二つが比例する、というのですから比例係数k(単位はW/mK)を温度勾配にかけたものが熱の流れになる、と言い換えても良い。このkを熱伝導度と呼びますが、この熱伝導度は、それぞれの物質に対して決まった値をとる、という意味で物性値と呼ばれます。(ただし、温度によって変化します。)

 同じ温度勾配に対して、熱伝導度が大きい物質なら多くの熱が、小さな物質なら少しの熱が流れる、つまり熱伝導度は物質の熱の伝えやすさの指標となります。

 では、熱伝導度はどんな値を示すのでしょうか。以下にそのデータを示します。

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大きなものを加熱するのは難しい(江頭教授)

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 化学の授業では化学反応に伴う熱の発生や吸収について学びます。でも、熱の伝わり方、伝熱についてまとまった話はありません。伝熱は化学ではなくて物理の範囲ですからね。

 とはいえ、化学反応を起こすには加熱を必要とするケースが多い(というか、温度によってコントールできる反応が興味の対象になっているわけですが……)ので、加熱する、という操作は化学にとって重要だ、ということで今回のお題は加熱についてです。

 化学実験で何かを加熱する際、小学校から高校まではアルコールランプやブンゼンバーナーなど、炎を使って加熱する操作が多かったのではないでしょうか。これは基本的には料理でつかう鍋と同じで、容器の下から加熱する、という形式です。

 普通の実験室スケールであればこの加熱法で何の問題もありません。例えば

直径5cmのビーカーに4㎝の深さで水がたまっている

としましょう。加熱は簡単で火加減によりますが5分あれば沸騰させられます。では、これが10倍になったとしましょう。

直径50cmのビーカーに40㎝の深さで水がたまっている

ことになります。容量は約80L、重さは80kgになりますから、扱うのも大変。これを大きなコンロか何かで下から温めたとしても5分で沸騰させることは不可能でしょう。

 先ほど「10倍になった」と書きました。直径や深さは確かに10倍なのですが、縦横高さ方向に10倍になったことを考えると体積は実は1000倍になっているのです。

 これを下から温めようとする場合、底部の面積は縦横10倍で100倍にしかなりません。100倍の面積を加熱して1000倍の液体を加熱する、単純に考えても同じ面積から10倍の熱量を伝えなければなりません。単純に熱エネルギーが1000倍必要だという事情に加えて、ものを加熱する、とくに大きなものを加熱するにはこのような事情があるのです。

 必要な熱量は体積に比例するのに伝熱するのは面積に比例する、このような関係は二乗三乗則と呼ばれていて、生物の世界でもよく見られる関係です。

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オープンキャンパスを実施しました。(江頭教授)

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 昨日、7月22日の日曜日、今年度2回目のオープンキャパスを実施しました。

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 これは開場前の片柳研究棟入口ホールの様子。本学のマスコット「こうかとん」の立て看の向こうに受付の準備が整っているのが分かります。

 さて、高校生の諸君は夏休みに入っているのでしょうか。前回よりも多くの来場者を迎えることとなりましたが、生憎当日は「命の危険を感じる」ほどの暑さ。本来の開場時間を繰り上げて参加者の皆さんに室内に入ってもらうことに。さきの写真とはうって変わって片柳研究棟の入り口ホールは人で一杯になっていますね。

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フレッシャーズゼミ・ポスター発表会(江頭教授)

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 「フレッシャーズゼミ」は本学全体で行われている一年生向けの授業です。本学固有の授業なのでしょうか、「フレッシャーズゼミ」で検索すると本学のサイトの以下の説明が表示されました。

1年次演習科目「フレッシャーズゼミ」では、全教員が15名程度の新入生を受け持ち、読み・書き・プレゼンテーションするスキルを演習スタイルで教育し、学生の日本語能力を強化する。

 大学に入ると「クラス」というものが無くなってしまい、学生諸君は時間ごとに授業の行われる教室を転々とすることになります。大学で自分の居場所ができるのは研究室に配属された後となります。これが通常の大学のスタイルなのですが、入学から数年の間、居場所の無い期間は大学生にとっていろいろな意味でリスクの多い期間でもあります。

 そこで、本学ではアドバイザー制度を設けて新入生の時点からいわゆる「担任の先生」のような教員を一人一人の生徒に割り当てています。

 フレッシャーゼミはいわばその「担任の先生」が受け持つホームルームの様な授業だ、と思ってください。1年生向けのその授業時間の中で、学生諸君はグループワークを行ってポスターを作成し発表会を行った、それが今回7月17日の水曜日に実施された発表会です。

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「Market DrivenとMarket Drivingは違うんだ」という話(江頭教授)

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最近、タクシーに乗ったとき、その車種がトヨタのプリウスだったので、運転手さんとトヨタの次世代自動車について話す機会がありました。この会話を通じて、大学時代の先生が40年近く前に海外の企業を訪問した際に聞いた話を思い出しました。先生はそのとき、「Market DrivenとMarket Drivingは違うんだ」と言われ、その話を私たち学生にしてくれました。この二つの概念は似ているようでありながら、実際にはビジネス戦略において大きな違いがあります。以下に、自動車産業に限定して、両者の違いについて詳しく説明します。

Market Drivenとは、市場のニーズやトレンドに基づいて戦略や製品を開発するアプローチを指します。自動車産業においては、消費者の要望や市場の変化に敏感に反応し、エコカーなど、需要に応じた製品を提供します。この方法は、顧客の声を積極的に取り入れ、競争相手と同じ土俵で戦うことを意味します。例えば、燃費の良い車や安全性能の高い車を開発することで市場のニーズに応える企業が典型的な例です。背景には、ユーザーの選択に任せるという姿勢があります。つまり、企業はユーザーが何を求めているかを重視し、それに応えることで信頼を得ようとします。

この戦略の代表的な企業がトヨタです。トヨタは、消費者の声を大切にし、ハイブリッド車のプリウスをはじめとするエコカーや、安全技術を搭載した車両を提供することで市場のニーズに応えています。トヨタのアプローチは、常に顧客中心であり、市場の変化に迅速に対応することで、信頼と高い評価を得ています。トヨタは、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池式の水素自動車、水素エンジンを利用した水素自動車など、多様な選択肢を提供することで、消費者の多様なニーズに応えています。Fig_20240717101901

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改修された「講義実験棟」(江頭教授)

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 昨日の記事では先日行われた「地域連携課題」の発表会について紹介しました。その発表会が行われたのが「講義実験棟」という建物。我々応用化学科のある片柳研究棟から見ると坂の上の方にある、下の図の赤丸の建物です。

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発表会が行われたのは下の写真の右手、一番奥の部屋。実は少し前に改修工事が行われて結構きれいになっているのです。で、それはさておき写真の左側、階段をのぼった少し広めのスペースなのですが、ここの様子にご注目を。

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地域連携課題」の発表会が行われました(江頭教授)

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 今週の月曜日(2024年7月15日)2024年度、第二期の「地域連携課題」の学科内発表会が行われました。

 「地域連携課題」という言葉、聞いたことがない、という方も多いと思いますが、本学の授業の名称です。本学科では3年生前期の授業。つまりクォーター制(前期を1期、2期の2つに分ける制度)で実施されるコーオプ実習の際、大学に残っている学生に向けて行われている授業です。シラバスには授業の内容は、「学生が地域の関係者と連携しながら地域・社会的な課題等に取り組む」ものとあります。

 本学部は八王子キャンパスにありますから、この場合の「地域」は具体的には八王子市のことです。八王子市の「担当者等を講師に招いて地域が抱える各種の課題を学んだ後」に、「学生が自ら主体的に地域から課題を選定」し、その解決方法を提案する、それが地域連携課題の授業内容です。この授業はグループワークを基本とし、いろいろな施設や企業を訪れて課題の解決方法を調査・分析、結果を比較検討することで効果的で具体的な提案を目指します。

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今日(7月15日)は休日なのですが(江頭教授)

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「今日は何の日?」

「7月の第三月曜日なので海の日です。祝日でお休みの日です。」

はい、世間一般ではそうですね。ですが本学では今日、2024年7月15日は祝日授業開講の日です。

 さて、祝日授業開講日について説明しましょう。 別に「祝日授業」という特別の授業がある訳ではありません。祝日ですが、「授業を開講」する日、という意味です。

「祝日なのに授業が有るなんて!」もしあなたが高校生(あるいは中学生、小学生)ならそう思うかも知れませんね。

 大学の科目は原則として14回の授業と1回の期末試験とで構成されています。ですから前期・後期、それぞれ15週間で終わります。つまり、年間30週間しか授業は無い、ということです。高校まではいつも授業があって、その間に休みがある、という感じでしたが、大学では30週間の授業を一年間に割り当てる形になっていて、それ以外は休み、ということになるのです。休日の意味合いが違いますよね。

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電池が付属しない時計を買いました。(江頭教授)

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 私が子供の頃には蓄電池というものは無くて……なんて嘘ですよね。今でも(ガソリン)自動車の「バッテリー」として一般的に使われている鉛蓄電池など100年以上の歴史があるので、61歳の私が生まれるよりずっと前から実用化されていたのです。にもかかわらず、私が蓄電池が新しいものだ、と感じるのは身近な電池、つまり単三電池や単四電池の代用になる電池が世の中に出てきたころのことを思い出すことができるからでしょう。

 単三や単四形の蓄電池は使い捨ての電池に比べて高価ですが、一度購入すれば再充電して利用できるのでもう新たに電池を買う必要はない。これは良い、と思った私は乾電池が切れるたびに新しい蓄電池型のものに買い換えました。ほぼ交換は終了。いまの私は自分の家の引き出しに単三や単四の充電式乾電池を常備していて、なにかの電池がなくなった場合に備えています。これで私は「使い捨て乾電池」を卒業したことに。ちょっぴり未来の生活に踏み込んだ……と思っていたのですが。

 実際には身の回りから「使い捨て乾電池」をなくすことは意外と難しい。とくに新しく電池を使う家電製品を買うと「使い捨て乾電池」が付属してきますからね。

 などと考えていたら、先日買った時計式の置き時計のパッケージをみると以下の様。

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核戦争と石油危機(江頭教授)

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 先日の「人間はサステイナブルか?」という記事では、「人類はサステイナブルか?」と考える意識が広まったことが「人類をサステイナブルにするにはどうすれば良いか?」を考えるサステイナブル工学の始まりだろう、という私の考えを書きました。

 今回は、「人類がサステイナブルではなくなる」つまり、人類が滅亡してしまうかも知れないと考える理由、何が起これば人類が滅亡してもおかしくない、と考えられるのか、そのシナリオについて考えてみたいと思います。

 まず一つ目は全面核戦争。広島、長崎の原子爆弾によって核兵器の強力さは多くの人々に強く印象づけられていました。第二次世界大戦後にはアメリカとソ連の間での核兵器の開発競争が起こり、原子爆弾よりも強力な水素爆弾の実験に両国が成功します。核兵器を搭載した大量のミサイルが作られ、全面核戦争でそれらが一気に爆発すれば人類滅亡が起こりうる、という状況が出現しました。

 人間が開発したものによって人類が滅亡してもおかしくない、この状況はおそらく人類の歴史で始めての現象だと思います。それだけに多くの人に「人類滅亡」の可能性とその意味について、リアルに考える事を強いたのだと考えられます。

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«実験が「失敗」するということ(江頭教授)