組み込み型電池と二つの時定数(江頭教授)

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 先日、大学での会議に出席したのですが、ノートPCを取り出してコンセントにつなぐ、という一連の動作を何の疑問もなく普通にやっていることにふと気が付きました。

 大学の会議資料は共有ドライブ上にあって、ノートPCをつかって閲覧するのですが「そう言えば昔は紙の資料を配っていたものだなあ」などと思い出しました。これが「ノートPCを取り出して」までの話。

 そしてこの後に「コンセントにつなぐ」のですが、そこでもう一つ思い出しました。「そう言えば昔は電池が取り外し可能なノートPCを使っていたものだなあ。」

 いや、昔はノートパソコンに限らず、携帯情報機器の電池は取り外しと交換が可能なものが多かったのでは。

 ぱっと思い出すところで携帯カセットプレイヤー、えーっと有名どころではソニーの WALKMAN です。(ワークマンじゃないよ!)WALKMAN には写真の様な専用のニッケルカドミウム電池、通称ガム電池が使われていました。アダプターをコンセントにつないでガム電池を充電。電池を入れると WALKMAN が使える様になります。

 これはとても便利で、予備の電池を買っておけば出先で電池切れになっても充電済みのものと交換すれば大丈夫、という使い方ができたのです。では、こんなに便利なガム電池、なんで今は使われなくなってしまったのでしょうか。

 えっと、まず確認しましょう。今話をしているのは携帯「カセット」プレイヤーです。カセット、つまりカセットテープが記憶媒体です。テープのリールを機械的に回転させてテープを動かして磁気的に記録された音声データを読み取るのです。必要とされる電力は必然的に大きいので電池の持ちが悪い。もし内蔵蓄電池を使っていたとすると、出先で電池切れになって後は帰って充電するまで使い物にならない、という事態が頻発したと思われます。電池交換ができる、というのは便利な機能と言うより、出先で使う事を考えると必要な機能だったのでしょう。

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ガソリン車は電気自動車はよりクリーンではないのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回に引き続いて電気自動車とガソリン車の比較です。「クリーン」の解釈は今回も温暖化に注目して、「ガソリン車 は電気自動車よりCO2排出量が多いか」とします。前回は「化石燃料をエネルギー源とした場合」としましたが、今回はこの制限を取り払って考えてみましょう。

 電気自動車は走行時にはCO2を排出しませんが、これに対してガソリン車は走行時にCO2を排出します。走行時だけをみればガソリン車は電気自動車はよりクリーンではないのですが、システムをトータルでみると、あるいはライフサイクル思考を前提とすると、これだけでは判断できないことがわかります。

 極端な比較としてガソリン車をバイオマス由来の燃料で、電気自動車を化石資源由来の電気で動かしたとするとガソリン車から排出されるCO2はバイオマス成長時に吸収されたCO2とつり合う(オフセットされる)ので、ガソリン車がCO2フリー、一方で電気自動車がCO2を排出する、という状況も考えられます。

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電気自動車はガソリン車よりクリーンなのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 まずは前回と同様、「電気自動車はガソリン車よりクリーンなのか」と問うなら、まずクリーンとはどういうことかを明らかにする必要がありますよね。クリーンということが窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を出さない、ということなら「YES」ですが、今回は温暖化に注目して、「電気自動車はガソリン車よりCO2排出量が少ないか」と言い換えることにしましょう。これでも問いとしてはあいまいなので、もっと限定的に「化石燃料をエネルギー源とした場合」とします。要するに石油を出発点として自動車が走るという結果を得るとして、自動車と電気自動車のどちらが効率的なシステムなのか、という問いに言い換えることができるでしょう。

 いつものことですが答えは「ケースバイケースです」となりますが、まずは現在のガソリン自動車のシステムとくらべて電気自動車のシステムのどこにメリットがあるのか、と考えてみたいと思います。

 ガソリン車の基本部品はエンジンで、ガソリンが燃焼するときに放出されるエネルギーを直接運動に変えています。つまり、

化学エネルギー → 運動エネルギー

の1段階の変換システムです。

 一方、電気自動車の基本部品はモーターで電気を運動に変える。化石燃料がエネルギー源だとすると電気自動車は化石燃料から電力へ変換する発電所ももう一つの必須要素だといえます。そう考えると、

化学エネルギー → 電気エネルギー → 運動エネルギー

となり、電気自動車は2段階のエネルギー変換を必要とするシステムです。より正確にはバッテリーでのエネルギー変換も考えて、

化学エネルギー → 電気エネルギー → 化学エネルギー → 電気エネルギー → 運動エネルギー

という充電と放電を加えた4段階のシステムというべきかもしれません。

 一般的にはエネルギーの変換にはロスがつきものですから、変換の段階の数を少ない方が効率的なシステムになると期待できます。そう考えるとガソリン車の方が効率的で結果としてクリーン、ということになりそうです。

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電気自動車はクリーンなのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 われわれ応用化学科が所属する本学工学部は「サステイナブル工学」の実施をコンセプトの一つとして開設されました。そしてサステイナブル工学の授業ではLCA(ライフサイクルアセスメント)の重要性について折について触れています。その際、よく例に出すのが今回のタイトル「電気自動車はクリーンなのか」という話題です。

 電気自動車はクリーンだ、というイメージを多くの人が持っている、と言ってもそれほど異論は出ないのではないでしょうか。とは言え、「電気自動車はクリーンなのか」と問うなら、まずクリーンとはどういうことかを明らかにする必要があります。

 走行時に窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を排出しない、という意味でクリーンというならばこれは明白でしょう。ガソリン車やディーゼル車でこのような物質が発生するのは燃料に含まれる不純物や窒素と酸素が反応するほどの高温状態が存在するからであり、電気自動車にはそもそもそんなものはありません。排気ガスのにおいも気にする必要はありませんし、まして中毒になる危険もありません。この意味でなら「電気自動車はクリーンだ」といえると思います。

 では、グローバルな環境問題から考えて電気自動車はクリーンなのでしょうか。より具体的に言うなら、電気自動車からのCO2排出量はガソリン車より少ないのでしょうか。

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6月15日(日)に最初のオープンキャンパスを実施します(江頭教授)

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 いや、前にも「最初のオープンキャンパス」をやるって書いてましたよね。

 確かに。でもあれ(3月23日)は「今年最初のオープンキャンパス」でした。今回ご紹介する6月15日(日)のオープンキャンパスは「今年度最初のオープンキャンパス」となります。とはいえ、どちらも対象は2026年入学の皆さんです。おっと、2026年度以降に入学予定の高校2年生、1年生の皆さんも是非ご参加を。

 昨年度と同様、本学の来場型のオープンキャンパスは「申込制」となっています。でも入退場は自由です。また同伴者の方のご予約は不要で当日に会場で受付をすればOKとなっています。

 今年度のオープンキャンパスはいろいろ新機軸を考えています。我々応用化学科としては、なるべく大学生活をイメージできるような体験をしてもらいたい。そのために今まで講義室を借りて行っていた学科説明を応用化学科の学生実験室の一つを利用して行う事にしました。エントランスで入場手続きをされた皆さんにはすぐに応用化学科の学生実験室に行ってもらう予定です。

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今週で第一クォーター終了、来週から第二クォーターが始まります(江頭教授)

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 4月にスタートした新年度、従来の前期後期の学期制なら今頃は「前期も半分過ぎて折り返し点です」ということになるでしょう。実際、本学科の1、2年生にとってはその通り。気を引き締めて前期残りの期間を充実させましょう。

 ただ、応用化学科の3年前期の授業はクォーター制で行われています。クォーター制とは前期を第1期、第2期の二期に分けて行うもの。本来は1年を4期に分けて行うものですが、本学のクォーター制は前期後期制の一方の期を二つの分ける、やや変則的な制度です。(ハーフ・アンド・ダブルクォーター制とでもいうのでしょうか?)

 でも、なんでこんな制度に?

 これは本学工学部の教育の重点の一つ、コーオプ実習制度に対応したものです。すべての学生が企業で7週間の実習教育を受ける、というのがこの制度の要点ですが、では前期14週間の残りはどうしているのか?もちろん遊んでいる訳ではなく、授業を受けるのですが、こんどは授業期間は短くなってしまう、という問題があります。

 そこでクォータ制。1週間に受ける授業の科目数は少なくなりますが、一つの科目は原則週2回実施します。(一部2回より多い科目もあります。)半分の科目を倍のスピードですすめるのがクォータ制。そのため、本年度の第1期が本日(6月6日)で終了となったわけです。

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授業でノートをとる、ということ(江頭教授)

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 本学の新学期が始まってから大体7週間。14週間単位の2学期制の授業だとそろそろ中間試験が行われる科目もあるようです。では、その準備としてはどんな勉強をすれば良いのでしょうか。小学校から高校までの授業では教科書がしっかり準備されていましたから、まずは教科書の試験範囲の部分をしっかりと読み返す、というのが第一でしょう。大学でも初年度の授業に多い基礎的な学科の授業では多くの場合教科書がしっかりと準備されていますから、同様な対応でOKですよね。

 とはえい、大学も学年が上がってくると教科書が指定されていない授業や、教科書の範囲を超えた内容を講義する科目も増えてきます。さてどうするのか。

 授業でノートをとる、昔はこれが普通の対応でした。だって授業の中で口頭で説明された内容、黒板に書かれた内容などは一瞬で消え去ってしまいます。教科書がなければ記録をとっておけるのは手書きのノートのみ。ノートを読み返して試験に備えるのですね。

 でも2025年現在、これはどうなのでしょうか。大抵の授業では講義資料のPDF版などを授業中にも、授業終了後にも参照することができます。だとすれば、今はもうノートを取る必要はないのでしょうか。

  

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新しい教職員証は色違い、ではないのです(江頭教授)

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 自分の持っている教職員証に「有効期限」が記入されているということに気が付いたのは、実は新しい教職員証が配られることを聞いたときでした。本学に入職してすでに10年以上。有効期限切れもやむ得ない話ですね。

 で、新しい教職員証をもらったのですが、今度の教職員証は色違いで紫色なのか……いや、ちょっと待てよ。

 思い出したのですが、私は以前、教職員証をパスケースに入れて首にかけていました。最初はソフトビニール製のパスケースを使っていたのです。ところが、風が強い日に煽られて教職員証をなくす、という信じられないようなトラブル(幸い、教職員証はすぐに教務課にとどいていました)に見舞われて、ハードなプラスチック製のパスケースに変更しました。

 その後、問題なく使っていたのですが首にかけているパスケースを何となく外す様になって研究室内に置き忘れる、というトラブルに。何回かそんなことが続くので、今度は定期入れにいれて胸ポケットに入れて持ち歩くようになりました。

 そのとき久々にパスケースから教職員証を引き出してみたところ、透明でないパーツで隠れている部分だけ色が違っていたのです。

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サステイナブル工学基礎 学内施設見学(2025年度)(江頭教授)

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 本学の工学部が掲げる「サステイナブル工学」、その最初の授業として本学2年生が履修している授業が「サステイナブル工学基礎」です。本年四月からは2024年度入学の第10期生が受講を始め、第10回目の講義が行われています。

 この「サステイナブル工学基礎」で行われるのが学内施設の見学。工学部三学科が代わる代わる学内のサステイナブル工学に関係の深い施設を見学します。6月2日には我々応用化学科の見学が行われました。この見学、コロナ禍の影響で2020年、21年と中止され、昨年22年に再開されました。ですから、授業は10回目ですが見学会は8回目となります。

 見学は、まず「スマートハウス実習棟」という専門学校の施設からスタート。太陽電池が乗っている建物です。太陽電池パネルの発電量は6kWだとか。その電力と、建物の断熱性を高めて冷暖房の必要エネルギーを削減すること、地中にたまった熱を熱源として用いることで消費エネルギー以上の暖房効果を実現すること、などいろいろな家庭向けエネルギー関連技術の設備があり、その運用や施工方法を学ぶ場所となっています。

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授業に原稿はない!(江頭教授)

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 いや、中にはちゃんと授業の原稿を用意してそれを読み上げている先生もいるのかも知れません。とはいえ普通は、少なくとも私は、原稿なしで授業をやっています。一コマ100分の授業、下手をすると映画一本分の時間を原稿なしのアドリブでやるわけですが、それでも大した苦もなく毎年基本的には同じ話ができる。年によって話の流れが変わったりすることはありません。(時間が延びて尻切れトンボになることは、時にはあるのですが...。)これは別に私の特殊能力というわけではなくて、多くの教師が普通にやっていることです。

 でもよく考えるとこれはかなり不思議なことなのではないか。出所を失念してしまったのですが、このような能力についての研究を紹介した文章を読んだことを思い出しました。研究では琵琶法師が語る「平家物語」を題材として、琵琶法師が話す「平家物語」の内容をたくさん集めて比較検討した、というのです。たしかその結論は、

(1)琵琶法師の語る「平家物語」はその都度微妙に変化している。

(2)しかし、どの語りでも必ず一致している部分がいくつかあって、その部分は揺らぐことがない。

(3)琵琶法師はその一定している部分だけをハッキリと記憶していて、その間を無理のないようにつないでゆくことで長い物語をコンパクトに記憶していると考えられる。

というものでした。だとすれば、

(4)一定している部分が物語のキーポイント、クライマックスなどに相当しているのではないか。

と思うのですが、先の文章がここまで言っていたかどうか、ちょっと定かではありません。

 さて、なんでこんな話をしているか。実は学生さん達の発表練習を聞いていてこの話を思い出したのでした。

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