LCAの「ライフサイクル」が「サイクル」に見えない件(江頭教授)

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 ライフサイクルアナリシス(LCA)の「ライフサイクル」とは製品の原料収集、組立、使用、廃棄の全プロセスのこと...などと説明するのですが、よく考えるとLCAに出てくるライフサイクルって全然「サイクル」じゃないんですよね。リサイクル(厳密には水平リサイクルです)すればサイクルっぽいですが普通は原料→製品→廃棄物と一方通行です。

 そもそもライフサイクルってなんだっけ。例えば蝶のライフサイクルを考えてみましょう。

卵が芋虫になってサナギになって蝶になる。蝶は死んでしまいますが残された卵から再び新たな蝶の物語が始まるのです。

そう、これは完全にサイクルなんですよね。

 蝶の最期の後に卵が残っている、というところがサイクルと呼ばれる所以。命の永続性とでも言いましょうか。まさに生命=ライフのサイクルなので、工業製品などと同列に論じるのは如何なものか。

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東京工科大学工学部に「サステイナブル工学科」がない訳(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 本日(4月19日)の1限から今年度の「サステイナブル工学基礎」の授業が開始されます。対象は本学工学部の2年生。本学工学部は我々応用化学科の他に機械工学科、電気電子工学科を合わせて3学科体制ですが、この授業は全ての学科の学生が受講する必修の授業となっています。かなり特別な扱いなのですが、それもそのはず。工学部のWEBサイトをみると本学工学部の「三つの特徴」の一つとして「サステイナブル工学」があげられているくらいなのですから。

 そんなに重視しているなら「サステイナブル工学科」というのが有るのでは...と思う人も居るかも知れません。でも、本学工学部には「サステイナブル工学科」はありません。これは「サステイナブル工学」とは何か、という基本的な考え方に関わっているポイントなので、今回の「サステイナブル工学基礎」の授業でも説明しておきたいところです。

 現在の文明社会がサステイナブルではない、その最大の要因の一つは地球温暖化問題だと言って良いでしょう。この地球温暖化問題を具体例として考えてみましょう。温暖化の原因は大気中の二酸化炭素濃度の上昇だと考えられますから、この二酸化炭素を何とかすれば問題は解決します。

 大気中の二酸化炭素を吸着して集める技術、集めた二酸化炭素を大気から隔絶された状況に閉じ込める技術、あるいは二酸化炭素を保存可能な形態に変換する技術、等々。地球温暖化問題への対策はいくつか思いつくことができます。これらの対策を進めるための研究がサステイナブル工学だ、と考えればサステイナブル工学科をつくるというのは良いアイデアのように思えます。

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デマを拡散しないように 地震予知は可能か?。(片桐教授)

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<以下の記事の内容は片桐教授から2021年2月15日に投稿されたものです。記事の内容に鑑みて時期をずらして公開することとしました(江頭)>

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 13日夜11時過ぎに起こったM7.3の地震にはびっくりしました。八王子は震度3、近隣の町田や相模原は震度4でした。わたしがこれまでに経験した最大震度は5弱(鳥取西部地震)でしたので,それよりは小さいものでした。しかし、既に就寝していた上に揺れが長かったので、発表された震度よりも大きな揺れに感じました。15日朝の時点で、福島や宮城を中心にけが人が多数報告されています。皆さんが無事であることをお祈りいたします。
 今朝、研究室を確認したところ、薬品等が漏れ出ていることはありませんでした。しかし教授室の窓辺に不安定に積んであった書籍、「元素戦略」「東日本大震災 石巻災害医療の全記録」の2冊が、床に落ちていました。

 さて、このような大地震を事前に予知できれば、災害の局限対策に役立ちます。台風については、1964年に設置された富士山レーダーのおかげで、その進路や規模や到来時刻などをかなり正確に予知・予報できるようになりました。これにより多くの人命が救えるようになりました。気象災害の場合、そのインシデントの発生そのものよりも、それに対する行政から住民への周知、そして避難などの人的原因によるリスクが問題になっています。一方、地震の予知・予報は技術的に未だできていません。2004年になって,揺れの数秒前に危険を警告する「緊急地震速報」が実施されています。これが数分前、数時間前、数日前と、台風並みに予知できれば、もっと多くの命や財産を守ることにつながります。

 わたしは18歳まで静岡県民でした。「東海地震が来るぞー」と脅かされて育ちました。1969年に東大の先生が東海地震の可能性を指摘し、1978年に「大規模地震対策特別措置法」が試行されました。しかし、まだ大地震の「予知」は技術的にできません。歪み計などの装置に異常が見られたら,地震予知連絡会が招集され、必要に応じて「警戒宣言」を発令するという法的・制度的な整備はそれなりにできています。しかし、それを予知する技術はまだのようです。まだM7クラスの地震の直前予知は行なわれていません。

 台風に比べ、大地震の予知が難しい理由は、その再現性の確認の困難さに尽きると思います。東日本大震災クラスの地震は数百年に一度きりしか起こらないので、その観測データと地震の因果関係を検討できません。気象庁の統計ではこの200年間の「被害地震」の発生回数は23回、約9年に一度です。これではなかなか再現性を確認できません。検証できません。
https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/higaijishin0601.pdf

 地震予知の3要素として、「日時」「場所」「規模」があります。責任ある地震予知にはこの3つの予知を求められます。台風の予想ではすでにこの3要素を満たしています。一方、地震ではまだこの3要素を満たす予報は困難なようです。専門家の方々は、実際に発生した地震についてのコメントを発しています。しかし、予報は出していません。また、ネットには多くの「地震を予言」する記事がありますが、オカルト的なものが多く、この3要素をおさえている予言はなく、また、当たりません。

 なぜ、地震予知は技術的に難しいのでしょうか?。これは地震がある種の非線形現象であり、不確定な、あるいは小さな要因で不確実化するためと思われます。何かの書籍で読みましたが、地震予知は:「下敷きを左右両側から押していく時に、上に跳ね上がるか,下に跳ね上がるかを予想するようなもの」だそうです。「力を加えていった時に「いつ」跳ね上がるか,「どっちへ」跳ね上がるかを予想することさえ難しいのに、もっと複雑にいろいろな要因の絡む地震は(まだ)予知できない。」だそうです。

 それでも、予知したいと思うのは科学者の性です。わたし自身は、直前予知の可能性を探るべく、自分の体調や月齢やその他の気象現象や地震の発生頻度を20年以上観察しています。(2015年までは紙版で記録していました。今はエクセルで記録しています。)
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その観察結果は、いくつかの「有意」とは言えないレベルでの経験則的なものを示唆しています。
(1) 月齢について:新月から上弦の前後期間に大きな地震は多いような気がします。今回の13日の地震も2011年の地震もこの期間内でした。
(2) 大きな地震の前(数週間)にやはり大きな地震があるように思います:今回の地震の2日前の11日にバヌアツでM7.7の大地震が起きています。また2011年の地震の2〜3週間前にニュージーランドで日本人留学生が巻き込まれた地震が起きています。
(3) 地震の少し前から私の体調が悪くなる(疲労感が激しくなる)。片桐はナマズなのかも知れません。
 しかし、いずれの観察も,必要条件でもなければ十分条件でもありません。先の(1)の期間以外でも大きな地震は起こりますし、バヌアツの方で大きな地震が起きた後に日本で必ず大きな地震が起こるわけではありません。まして、私の体調は「気のせい」レベルでしかありません。
 このような事象と地震発生の関係は、「疑似相関」とさえいえないようなものとは思います。しかし、その潜伏変数が明らかになれば、地震予知に役立つのかもしれません。


 12日の卒論発表会のために坂の上の会場へ向かう道すがら、息を切らしながら片桐は江頭先生へ「今日は体調が悪いから地震に注意かも。でも、未明にバヌアツで大きな地震があったから、これかな」と軽口をなにげに話していました。

 信じようと信じまいと…

 

<この2月12日、卒論発表会の会話の後、13日に実際に地震が起きたというわけです。これは2011年の東北地方太平洋沖地震の余震であり、引き続き余震が起こる可能性が指摘されていました。 (江頭)>

 

片桐 利真

 

本年度第一回目の「全学教職員会」が開催されました(江頭教授)

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 以前、こちらの記事こちらの記事で紹介しましたが、本学では「全学教職員会」という、名前通り本学の教員、職員が全員参加する講演会形式の会議をほぼ月に一度のペースで開催しています。

 4月から新年度を迎えて、4月14日には今年度最初の「全学教職員会」が開かれました。ここしばらくはオンライン実施だったこの会議、写真のように久々に対面で実施されることとなりました。第一回のテーマは、本学の運営方針、基本方針について。

 千葉理事長、大山学長に続いて副学長、教務部長、就職部長、学生部長、要するに本学の首脳陣による今年度の東京工科大学の運営方針の説明、というところでしょう。

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新年度の授業がスタートします(江頭教授)

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 2021年度新学期の授業は本日4月14日の水曜日から授業スタートとなります。例年と比べれば少し遅いスタートですが、新型コロナウイルス問題による緊急事態宣言のためにキャンパス閉鎖となった昨年2020年の新学期に比べれば「いつも通り」といっても良いくらいですね。

 昨年前期はオンライン授業をメインに、後期には対面の授業と「対面、ただしオンライン受講可」の授業を組み合わせて実施したのですが、今期は一部の授業を除いて原則対面の授業となっています。

 もちろん、三密の回避、社会的距離の確保、マスク着用などの感染防止策をとっての対面授業の実施です。たとえば学生実験では1学年を二つのクラスに分けて、週二回の実験日に分けて実施するという体制を取ることになっています。このため時間割の組み替えなどの作業を行って準備をすすめてきました。(ただし学生実験室は化学物質を利用する関係上換気能力が大きく設定されていますので、従来通りの実施でも密閉状態にはならないと見積もられています。)

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「マスク1年生」の感想(江頭教授)

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 一年前、新型コロナウイルス感染症が問題になり始めるまでは、私個人はあまりマスクに関心がありませんでした。2004年の鳥インフルエンザ騒動の時、大阪在住だったので東京に出張する際にマスクをかけていた記憶があるくらいです。(幸い、インフルエンザウイルスを人にうつすことはなかったのですが、逆にコンピューターウイルスをもらってくるという顛末に。)そんな私でもこの1年でマスクの利用者になったわけですから、世の中には同じような「マスク1年生」が山のようにいるはずです。同時にマスクの売り上げも増えていて、年末のニュースでは2020年のマスクの売り上げは4倍増だったとか。(もっとも単価の値上がりの効果もあるでしょうから単純に数量が4倍では無いかもしれません。)

 マスク1年生として感想を言わせてもらうと、「からだに直接つけるもの」にしてはおざなりだなあ、と思います。例えばメガネは一人一人オーダーメイドが普通。これはメガネのレンズの都合でそうなっているのかも知れませんが、メガネを作るときにはかけ心地が良い様に調整してくれて、そのおかげで長くかけても疲れない、耳が痛くならないメガネが手に入ります。マスクのオーダーメイドはさすがに無理でしょうか。でも、何か調節ができる様になっているとか、いろいろなサイズがあるとかないのでしょうか。

 服ならサイズ毎にいろいろあるし、靴だってサイズと幅くらいの選択肢があるものですが...。でも自分の顔のサイズというのは分からないか。試着してみる、というは無理ですね。では「顎幅13.5、耳丈16、鼻の下やや長し」とか規格をつくったらどうでしょう。メジャーで測るのは難しそうですからレーザー計測の装置をマスク店において測ってもらうとか。いや、形態だけならスマホのアプリでも行けるかも。漏れが少ないマスクをつくるという点でも意味があるのでは。

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「意外に知られていないですけどマスクの原料って石油なんです」(江頭教授)

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 いや、別に特定の環境大臣を真似して題をつけたわけじゃありません。ふと、どのくらいの人がマスクがプラスチック製品だと知っているのか、と思いまして。

 まず、ウレタンマスクですが、これがプラスチック製品だ、というのは皆さんご存じ、というか見るからにそうですよね。だってあんな見た目の素材はプラスチック以外にはないでしょうから。ということでウレタンマスクはもとをただせば石油だ、これは皆さんご存じのことでしょう。(いや、海綿で作った天然マスクとか...。)

 その一方で、ガーゼタイプのマスクは名前のとおり、ガーゼを重ねてつくられたもの。これは綿製品なので石油から作ったとはいえないでしょう。これは例外です。

 で、2021年現在、一般にマスクと言われて一番に思いつくのは不織布マスクではないでしょうか。今回指摘したかったのはこの不織布マスクです。見た目からなんとなく紙でできている、と思っているひとも多いのではないでしょうか。実際、昨年前半のマスク不足の際にはトイレットペーパーも品薄になったのですが、その理由の一つが「マスク増産によってトイレットペーパーの素材が不足するのでは」と思う消費者の行動があった、という説明もある様です。(私自身は「オイルショック」の記憶が影響している、と思ったのですが。)

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小説「タイムマシン」(江頭教授)

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 先週は1959年製作ジョージ・パル監督の映画「タイムマシン」について紹介したのですが、今回はその原作(の翻訳)であるH.G.ウェルズの「タイムマシン」について紹介しましょう。古い作品で、有名な作品でもある本作はいくつかの翻訳版がある様ですが今回私が読んだのは阿部知二氏による翻訳で東京創元社の「ウェルズSF傑作集」の第1巻に所蔵のもの。その電子書籍版です。

 さて、大枠のストーリーは先に紹介した映画版と同じ。

1899年の大みそかのロンドン、タイムマシンを発明した主人公が80万年未来の世界での冒険を友人たちに語る、というのが物語の筋立て。主人公は未来世界で理想郷のような暮らしを送っている人類の子孫、イーロイ人と出会います。しかし未来世界の地下には人類のもう一つの子孫であるモーロック人が住んでいる。両種族の関係には身の毛もよだつような秘密が...、という展開です。

ただ映画と小説ではいくつか興味深い相違点があります。

 まず映画では主人公は80万年後の世界での冒険のあと、すぐに現在(映画で描かれる現在なので1899年です)に戻るのですが、小説版ではそれより遙か先の未来にも旅をして地球の文明、いえ、地球の生命の終焉まで見届ける、という展開があるのです。めぼしい冒険も活劇もないのですが地球の最期という非常に思索的なモチーフでSF的な感動をうける部分でした。

 そしてもう一点。地上の楽園で暮らすイーロイ人と地下に暮らすモーロック人、この二つの人類の子孫の由来が映画と小説では全く異なっていました。(以下には小説「タイムマシン」にネタバレを含みます。)

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新入生ガイダンスと記念写真(江頭教授)

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 先週の金曜日、4月の2日に本学にはじめてやってきた新入生たち。今週に入って月曜日は学部ガイダンス、火曜日は入学式ときて水曜日、4月7日には学科のガイダンス、となりました。

 学科ガイダンスは応用化学科の約100名弱の新入生と我々教員約10名の参加となり、大きな教室を用いれば距離をとって実施が可能です。授業を受けるためのガイダンスや大学での生活上の注意といった工学部全体のガイダンスにつづく内容に加えて、我々応用化学科の教員全員による自己紹介なども。

 アドバイザー教員(入学から卒業研究のための研究室に配属されるまでの間、学生各自の相談役になる教員のことです)との顔合わせもこの学科ガイダンスの時。さらに授業受ける教室の場所を確認するために学内を回るちょっとしたツアーも実施しました。ツアーの途中では片柳研究棟をバックに恒例の写真撮影なども。

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2021年度入学式(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 昨日、4月6日に東京工科大学の入学式が行われました。

 入学式の会場は本学の蒲田キャンパスの地下アリーナです。例年、本学の入学式では大学のすべての学部の新入生が参加して行われていました。デザイン学部、医療保健学部の新入生は蒲田キャンパスに、メディア学部、コンピュータサイエンス学部、応用生物学部、そしてわれわれの工学部の学生は八王子キャンパスに通います。でもこの入学式のときばかりは全学部が一同に会する、はずだったのですが今年は新型コロナウイルス感染症対策のため、午前の部、午後の部の二回に分けての実施となりました。

 我々工学部の入学式は午後の部で行われました。

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