「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 TVドラマや漫画などで未来世界を描くとき、一時期は「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」が必須のアイテムだったように思います。

 で、一時期ってどの時期?そうですね、私が子供だった頃ですから1970年代くらい、となるでしょうか。

 まずは「壁掛けテレビ」。昔のテレビは箱形だったのですが、これはブラウン管というガラス製で中身が真空の機器を使って映像を投影していたから。真空の中に電子のビームが送り込まれ、これが対面する表示部に塗布してある蛍光物質にぶつかって発光するという原理に基づいているものです。電子ビームが当たる位置、すなわち発光する位置を電圧で動かすので充分な移動距離をとるためにはそれなりの奥行きが求められたのです。

 でもこれは作る側の都合。利用者からすればTVは二次元の映像を映し出すための装置ですから、大きい画面のテレビが薄ければ薄いほど便利なわけです。いっそのことポスターのようにペラペラならが壁紙代わりに貼り付けるだけ大画面TVのできあがり、となる。でもそれはさすがに荒唐無稽ではないか。妥協案として額縁のような「壁掛けテレビ」が登場するわけです。

 さて、現在では「壁掛けテレビ」という言い方は一般的ではありません。正確には「薄型テレビ」となるのでしょうが「液晶テレビ」という言葉が一般的でしょう。「プラズマテレビ」も同じような使われ方をしたこともありますが今ではとんと耳にしません。液晶テレビも壁掛けされることはまれで、やはり昔のテレビと同様に自立しています。「壁掛けテレビ」という過去に作られた未来のイメージは大画面という機能の面では実現しましたが名称や形態の面ではすこし的を外した、ということでしょうか。

 「壁掛けテレビ」はまずまずとしても「テレビ電話」の方は大外れだったようです。

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「純水を飲むとおなかを壊す」という都市伝説(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「都市伝説」というのはおかしいかな。「研究室(ラボ)伝説」とでも言うのでしょうか。研究室で先輩から後輩に語られる話には大切な注意事項や奥深い教訓に混じって真偽不明(おそらく偽)なお話が色々とあるものです。

 私が学生のころに聞いたそんな「研究室(ラボ)伝説」の一つが表題の「純水を飲むとおなかを壊す」というもの。でもこれ絶対おかしいですよね。純水と普通の水の違いは微量の混合物があるかないか。主成分は水であることには変わりはありません。もちろん水が体に悪いわけはない。残りの微量な成分で問題が起こる、というのなら話は分かりますが、微量な成分がないことで問題が起こる、というのはどうにも考えにくいことです。
 それに胃袋に水が入った状況を考えても、胃袋が空っぽ、なんてことがあるのでしょうか。胃袋の中にはもともと胃液があって、それに混ざったら微量成分が無いことなんて関係なくなってしまうと思います。

 とは言えこれは机上の議論。科学者たるもの実験で確かめるのがあるべき姿でしょう。ここは純水を飲んでおなかを壊すかどうか確認するべきでは?

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飛行機の客室の温度はどのくらいであるべきか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前「飛行機の貨物室の環境」と題して飛行機の貨物室の温度と圧力の測定値について紹介したことがあります(下の図)。水深測定用のセンサーを海外(例によってオーストラリアです)のフィールドに運ぶ途中、偶然スイッチが入っていたために温度と圧力のデータが取れた、という経緯なのですが、貨物室は 0.8 気圧程度に減圧されていて温度は5℃くらい、というのが私の結論でした。


 さて、今回は貨物室ではなくてずばり客室のおはなし。でもセンサーのデータを取ったというお話ではありません。耳寄りな情報、というよりは愚痴の類いかも知れませんがおつき合いを。

 3月の始め、日本はまだ春には早すぎますが、一番寒い季節はどうにかすぎたかな、というところでしょうか。これがオーストラリアに行くとなると夏の一番暑い時期はすぎたが、と反転することに。昨年の出張では40℃越えのフィールドで作業をするという過酷な状況でしたが、今年の気象情報では30℃代だと聞いてほっとした気分で出発しました。

 実際に現地に到着すると昼の気温が30℃代の中頃になるものの夜はちゃんと涼しくて過ごしやすい温度でした。数週間前まで熱波( Heat Wave )が来ていて大変だった、という話を聞くにつけ良いタイミングだったと思う次第。とは言え日本と比べればかなり暑いので服装もまったく違います。

 行った先のオーストラリアについてはそれなりの服装を準備して荷造りしてOK。でも日本からオーストラリアに移動する途中の飛行機ではどんな格好をしたら良いのでしょうか?日本から空港に向かうまではそれなりに暖かい服装が必要ですが、もし飛行機の中が暑かったらどうしよう。服を脱げば良い、といっても限度がありますし…。

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オーストラリアの SUBWAY で驚いたはなし(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回もオーストラリア出張のお話です。表題の「SUBWAY」は地下鉄のことではなくてサンドイッチのチェーン店のほう。日本にもありますから知っている人も多いかも知れませんが、オーストラリアにも展開していて今回はそこで昼食を取ったときのお話です。

 西オーストラリアの内陸部を車で移動中に Merredin という町で昼食を、という事になりました。内陸から移動してきたので久々のファーストフードということで SUBWAY に。さて、出張中はどうしても食べ過ぎになる(体を動かしていておなかは空くし、食事もおいしい)のでカロリーにきをつけよう。ということで少し小さめのサンドイッチを頼みました。SUBWAY はサンドイッチはお客の注文に合わせたトッピングを入れてくれるのですが、その代わりに注文が結構難しい。(英語で野菜やソースの名前を早口に言われても分からない!)。なんとか注文が終わり、ふとパネルにあるカロリー表示をみると「950」という数字が。

 えっ、こんな大きさでこんなに高カロリーなの!

と驚いたのですが…。

 

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少しさびしい卒業の日(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 2020年、3月19日は本学科の2期生の卒業式が予定されていました。残念ながらこの卒業式は今般のコロナウイルス問題のために中止となりました。それだけではありません、学科で予定されていた学位記の授与式、学部、学科でそれぞれ行う予定だった卒業記念パーティーもキャンセルとなってしまいました。今年は各研究室にて学位記を手渡すことで卒業式の代わりとすることとなったのです。

 さて、本来の予定では卒業式の会場は本学の八王子キャンパスの体育館。鎌田キャンパスの卒業生を含めて卒業生全員が一堂に会するはずでしたから、本来だったら下の写真のようににぎわうはずでした。(写真は昨年2019年3月のものです。)

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 ところが今年は以下の通り。全く人気が無くて寂しい限りでした。

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学位記授与(卒業)はなむけのメッセージ(高橋学科長)

| 投稿者: tut_staff

<今回は今年度の卒業生に向けた高橋学科長からの祝辞を紹介します。>

 新型コロナウイルス感染・拡大防止の観点から、本学における学位記授与式は中止となりました。工学部応用化学科では、学科で行う予定であった学位記授与式を中止し、卒業課題を履修した研究室で学位記を授与しました。


 大学生活の締めくくりである学位記授与において、以下の卒業生諸君へのお祝いのメッセージを応用化学科から届けました。

 ご卒業おめでとうございます。皆さまの門出を祝ってメッセージをお送りします。

 皆さんは東京工科大学工学部の第2期生として入学し、勉学に勤しんでこられました。大学入学後の第一印象はどのようなものだったでしょうか。大学に入って、さぁ、何をする? 何をしようか、と考えていた人もいるでしょう。
 学部長 大山先生(入学時)から、「皆さんは学びたいと考えて大学に入学したのだよね」と言われたことを覚えていますか? その学びたいという気持ちを貫き、1年生の教養科目から応用化学の専門科目まで学びを進め、4年生では東京工科大工学部応用化学科での学びの “皆さんそれぞれの” 集大成である卒業論文を執筆しました。1年生の基礎科目から卒業論文までの成果が認められ、学士(工学)の学位を獲得したのです。

 皆さんの努力を讃えるとともに祝意を表したいと思います。心より、おめでとうございます。

 大学での学びでは、コーオプ実習もありました。大変な業務に勤しむことになった人もいたでしょう。きっと、これからの人生のどこかで役立つことがあると思います。また、大学生活では、授業だけでなくサークル活動のような課外活動でも大いに学生生活を満喫した人も多いのではないでしょうか。

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デマを拡散しないように-4 イブプロフェンを使ってはいけないとするフランス保健相Twitterコメントへの個人的コメント (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 この2020年のコロナ感染症騒動における3月15日のフランス保健相の「イブプロフェンを使ってはいけない、アセトアミノフェンを使え」というTwitterでのつぶやきは社会不安をかき立てています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20200315-00167830/
しかし、なぜイブプロフェンを使ってはいけないかについて、詳細な情報は無く、そのためこの情報をFake Newsと主張する人もいるようです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakazuhonda/20200317-00168265/
なぜ使ってはいけないかという理由は、その薬の作用機序を理解し、感染症への影響を考えれば、理解できるかもしれません。以下は、30年前に細胞性IV型アレルギー(対ウイルス免疫の暴走)の薬の開発に関与していたことのある、片桐の個人的な情報提供と見解です。

 風邪を引くといろいろな症状が出ます。これらの「症状」はウイルスが起こすというよりも、ウイルスに感染した細胞を白血球が攻撃する細胞性免疫反応により起こります。発熱は免疫細胞を活発化するための人間側の防御反応のひとつです。炎症はその白血球の攻撃=活性酸素の流れ弾、で周囲の細胞も傷つくことにより起こります。咳や痰も同じく、感染症への免疫による防御反応です。
 しかし、これらの感染症への防御反応は行き過ぎると患者の命を奪うこともあります。わかりやすさのために少しウソのある説明ですが、肺炎は肺に感染したウイルスを白血球がやっつけようと攻撃するために、肺の機能を奪うことにより生じます。肺の感染細胞を攻撃するために、白血球は血管からしみ出してきます。そのため血管壁の透過性が高くなり血しょうもしみ出して肺水腫を起こします。これは最終的にその人の呼吸を困難にし、命を奪います。がん治療中に治療がうまくいきガンが小さくなると、これまでがん細胞を攻撃していた免疫系が暴走してARDS(急性呼吸切迫症候群)を起こし死に至ることがあります。作家の遠藤周作さんはガン闘病中に肺炎でなくなりました。

 むやみやたらと症状を抑えるのは感染を広げるおそれがあり、得策ではありません。一方で免疫系の暴走を許すと命にかかわります。適切にコントロールしてやらなければならないということですね。

 発熱や頭痛などの不快な症状を緩和するために、市販の風邪薬にはこれらの症状を抑える成分が多数含まれています。鎮痛剤、抗炎症剤、解熱剤と呼ばれるお薬成分です。よく使われるそのようなお薬を大きく分けると、ステロイド系のものと非ステロイド系のものになります。ステロイド系のものは細胞性免疫系を元から止めて炎症を抑える薬です。感染症に使ってはいけない薬です。肌荒れによく効くステロイド軟膏を水虫に使うともっとひどくなります。

 非ステロイド系のお薬には、今回話題の中心になっているイブプロフェンやアセトアミノフェンの他にもエテンザミド、イソプロピルアンチピリン、アセチルサリチル酸(アスピリン)やインドメタシン(貼り薬)などがあります。これらのお薬の作用はアラキドン酸カスケードと呼ばれる痛みや炎症を伝達する物質を作る生体内の反応系を阻害することです。より具体的にはシクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素の阻害です。このアラキドン酸カスケードの作るプロスタグランディンは何種類もあり、そのような生体情報の伝達だけではなく、胃壁の保護などにも関与します。だからインドメタシンを使い続けていると、胃潰瘍のような副作用を起こします。

 このCOXという酵素も大きく2種類あり、さらにその作り出す物質は場所等により異なるようです。そのため、薬によってCOX阻害作用の効果は異なってきます。イブプロフェンは強い「抗炎症作用」を持ち、アセトアミノフェンはそれに比べて弱いと言われています。そして、アセトアミノフェンは別のシステムで痛みを止めると考えられています。詳細は、例えば「日本ペインクリニック学会」のページをご参照ください。
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html

 結局、強力に炎症を抑えてしまう抗炎症作用の強いお薬、例えばイブプロフェンは免疫まで抑制してしまうために、対コロナウイルス感染免疫を抑制してしまうから好ましくない、ということだと思われます。このような風説は30年前から言われていました。そのため,前のブログでも風邪薬のアセトアミノフェンについてほんのちょっとと言及しておりました(2020.3.5)。よく効く「良い」薬ほど、そのような副作用に注意すべきだということです。あまりにも当たり前の結論になってしまいました。また、抗炎症作用の弱いアセトアミノフェンには肝臓機能障害の副作用があります。

 以上、長々と述べましたが、抗炎症・鎮痛・解熱剤を理解して使うためには、それなりの知識が必要です。薬は毒にもなります。使う際にはバランスが必要です。その作用には個人差があります。生兵法は大怪我のもとです。専門家であるお医者様に相談して診断を受け、薬剤師の処方する最適なお薬を正しい用法で使うのが一番です。

 応用化学科の学生さんは、もしコロナ感染症が怖いと感じたなら、良い機会ですから一度、自分の使っている風邪薬や頭痛薬の「成分表」(薬の箱の横に書かれている)も読んでみましょう。

 

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 しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 

片桐 利真

 

オーストラリア版トイレットペーパー騒動(江頭教授)

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 ブログの前回の記事にも書きましたが、私は3月1日から11日までの間、オーストラリアに出張中でしていました。この日程はちょうどコロナウイルスに騒ぎが深刻になってゆく期間に当たっていて、入国時はちょっと注意という感じだったものが、出国時には大きな脅威のように扱われる時期にちょうど居合わせたわけです。

 特に印象的だったのはトイレットペーパーの品不足です。

 私が出国する際、ティッシュやトイレットペーパーが売り切れになっている、というニュースが流れていました。フィールドワークに備えてウェットティッシュを買おう、と思っていたのですが近所の店では品切れ。オーストラリアに入ってやっと立ち寄ったスーパーマーケットで購入できました。

 さて、旅行の行程をこなしてゆき半分を過ぎたころ、オーストラリアのニュースでもトイレットペーパーの品不足が云々され始めました。そんなことが、と半信半疑だったのですが3月6日に立ち寄ったスーパーの様子は以下の通り。

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 さらに以下の様な断り書きが張り出してありました。

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オーストラリアに出張してきました(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今月(2020年3月)の1日から12日まで、オーストラリアの植林サイトに出張してきました。12日と書きましたが実はオーストラリアにいたのは11日まで。機中泊で早朝に日本に到着する、という日程でした。

 さて、話題の新型コロナウイルスに広がりに対応して、3月15日からオーストラリア政府は全ての海外からの旅行者に14日間の自己隔離を要請しています。2週間ずれていたら飛行機を降りたところでそのまま隔離されて帰国、という状態になっていたところですが、今回は運良く全ての日程をこなすことができ、まずは一安心しています。

 以下の写真は帰りの空港の発着案内。中国行きの便が軒並みキャンセルされています。そのせいかどうかは分かりませんが空港はガラガラ。飛行機も空き席が多く、人と人の距離は優に 1 m 以上ある、という状態でした。

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デマを拡散しないように-3 マスクは鉄壁ではありません(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。


 先のブログ記事「デマを拡散しないように-2」でマスクについていくつかコメントしました。


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 コロナウイルスの大きさはNIID国立感染症研究所のページに、MERSコロナの情報として「他のコロナウイルスと同様、脂質二重膜のエンベロープに包まれた直径100 nmの楕円体で、エンベロープ表面に王冠に似た突起、スパイクがある。」と記載されています[https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2320-related-articles/related-articles-430/6116-dj4304.html]。
<中略>
この100 nmという大きさはPM2.5の粒子の25分の1の大きさということです。この大きさでは、300 nmの粒子を95%シャットするN95と呼ばれるマスクでも減らすことはできても完全に防ぐことは難しいでしょう。一般のガーゼマスクで呼気中のウイルスを防ぐのはほぼ困難でしょう。
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さらに、少し古いものですが2009年に国民生活センターが「ウイルス対策をうたったマスク」という報告書を出しています。http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20091118_1.pdf
それによると、検査対象の国内販売の15商品のうち、記載されているスペックを満たしていたのはわずか3種類だったそうです。「ウイルス除去率99%」とうたっていても、実際は40%程度という商品もあったようです。そのためか、現在はウイルス除去率をうたって販売しているマスクはなくなりました。記載されていても、以前のように大きな文字で堂々とは書かれていません。

 このような記述を読むと「完璧にブロックできないのなら、マスクは無意味」と考えてしまう方がおられます。確かにマスクは鉄壁の防御ではありません。しかし、まったく無意味ではありません。
 飛沫感染を防ぐ効果はN95マスクでなくてもある程度期待できます。マスクもせずにくしゃみや咳をしている人のそばに行く場合には効果を期待できます。また、マスクをかけていると、ウイルスに汚染されている手指を口に触れさせない効果もあります。
 マスクは鉄壁ではなくても、やはりある程度の効果を期待できる予防対策です。大事なのは、マスクだけに頼らないことです。マスクはひとつの予防メソッドであり、それだけに頼ってはいけません。手洗やうがいなどの対策、免疫を高めるための栄養・食事への気配りなど他の対策と併用すべき対策です。金曜日にトイレで手を洗っていたら、マスクをかけた学生が手を洗わずに後ろを通り過ぎました。コロナ感染予防的に見ればちぐはぐな対応です。手を洗うチャンスがあれば必ず手を洗いましょう。

 先日参加した安全環境に関する研究会で、O大学の先生がコロナ騒動に関して「政府の水際対策は失敗したとお考えの方は手を上げてください」と観客に話をふった時に会場にいた大多数の人(大学や企業の安全の専門家)は手を上げました。手を上げなかったのは私を含めて1〜2割程度だったと思います。
 政府の水際対策はマスクと同じです。いろいろな対策のひとつと位置づけるべきであると、私も思います。いろいろな批判もありますが、確定患者の半数以上の感染経路を明らかにできるほどには流入の抑制に成功した今回の水際対策は、鉄壁ではなくてもそれなりに成功しているというのが私の意見です。

 安全工学の講義の「対策立案」の時に、一般の人の危険認識について「個別的認識と統計的認識」の話しをしました。「ガンの治癒率60%の治療法と40%の治療法があるとして、どちらが優れた治療法だろうか」というものですね。統計的には60%の治療法の方が優れていますが、患者にとっては自分に有効な治療法が優れています。どんな治療法でも患者は生きるか死ぬかの二択になり、60%生きている状態になることはありません。
 個人としてはコロナ肺炎にかかるかかからないかの二択です。だからこそ、水際対策には100%の完璧さを求めたくなります。そして100%でなければ0%の評価を下します。しかし、社会全体の統計的視点では、60%の対策もまた有効な対策であると評価できるわけです。

 マスクに100%の防御力を期待しては行けません。マスクをしていれば大丈夫と不用意に安心してはいけません。だからといって、100%でないのなら無意味であるとマスクをあきらめてもいけません。大事なのは多重的より多面的な対策により小さなインシデントの不幸な偶然の重なりを避けることです。これはヒヤリハット対策で大きな事故を避けることに似ています。

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