乾燥地植林によるCO2固定はサステイナブルな地球に役立つのか?(江頭教授)
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こんにちは。化学工学研究室の江頭です。
今回は「沙漠緑化でCO2を固定する技術」と題して紹介した研究について少し補足をしましょう。(まだ見ていない人はここをみてください。)
沙漠の緑化をしています、という話しを聞いて皆さんはどう感じますか?悪いことをしている、という印象を持つ人は少ないのではないでしょうか。荒れ果てた土地に樹木が育つのは、なんとなく良いことの様に思う人が多く、沙漠の自然が破壊されている、と感じる人はすくないと思います。(これは国内に沙漠を持たない日本人特有の感覚かもしれません。沙漠を身近に感じている人たちには別の印象をもつひとも確かにいます。)
ただし、この研究の目的は「CO2を固定する」ことによって地球の産業社会全体をサステイナブルにすることに貢献しよう、という点です。
沙漠に木が育てば、その木の分だけCO2が固定される、これは育った樹木の高さと太さを測ることで固定された炭素量を確認できるので、確かな事実です。ですが、緑化を行う、という事業が全体としてCO2の固定に役立っているか、サステイナブルな地球に役立っているか、というと目に見える部分だけではわからないこともあるのです。
例えば、塩水の淡水化、という技術があります。海水(あるいは塩湖の水)を淡水化し、その水を撒けば沙漠でも簡単に木を育てることができます。しかし、塩水の淡水化にはエネルギーが必要で、一般には、そのエネルギーは化石燃料から得られています。目の前の木は育っても、その木に与えた水の淡水化で消費した石油から、もっと大量のCO2が出ていた、となればCO2固定には役立たない、という結果になります。つまり、沙漠に植林された木が本当にCO2固定に役立っているかどうかは目の前の木をみるだけではわからない、という事です。
目の前にある製品(この場合は樹木ですが)のライフサイクル(作られてから廃棄されるまで)にどれだけの資源を消費したかを調べる分析をLACと呼びます。研究紹介の中で「40倍のCO2が固定された」と述べましたが、これもLCAによって得られた結果です。
本学の工学部での「サステイナブル工学」の教育ではLCAについて学修することによって、見かけだけではない、本当にサステイナブルな製品開発を進める力を養います。
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