「金のサビ」でナノテクノロジーに貢献します(西尾教授)
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有機分子設計学研究室の片桐です。
天野浩先生のノーベル物理学賞の受賞をお喜び申し上げます。
自分の友人からノーベル賞受賞者が出るなんて、学生時代には思ってもいませんでした。私は天野先生と小学校、中学校、高等学校と同じクラスで勉強した仲です。高校の卒業アルバムには放課後の教室で彼と私が机を並べて勉強している「やらせスナップ写真」があります。
そのため、10月の7−9日は新聞社からの電話取材が次から次へとやってきました。 彼の人柄はテレビのワイドショーなどでみられるように、いつもニコニコしていて優しさに満ちたものであるのは、昔からかわりません。人を気遣うことのできる、「よいひと」です。そのためか、学生時代から「敵」はおらず、私も今回の受賞を心から喜ぶことができました。
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こんにちは。化学工学研究室の江頭です。
今回は「沙漠緑化でCO2を固定する技術」と題して紹介した研究について少し補足をしましょう。(まだ見ていない人はここをみてください。)
沙漠の緑化をしています、という話しを聞いて皆さんはどう感じますか?悪いことをしている、という印象を持つ人は少ないのではないでしょうか。荒れ果てた土地に樹木が育つのは、なんとなく良いことの様に思う人が多く、沙漠の自然が破壊されている、と感じる人はすくないと思います。(これは国内に沙漠を持たない日本人特有の感覚かもしれません。沙漠を身近に感じている人たちには別の印象をもつひとも確かにいます。)
ただし、この研究の目的は「CO2を固定する」ことによって地球の産業社会全体をサステイナブルにすることに貢献しよう、という点です。
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こんにちは。有機分子設計学研究室の片桐です。
私の専門は有機フッ素化学です。有機フッ素化合物というと、普通まず思い浮かべるのはテフロン(フライパンなどのコーティング剤)やフロン(エアコンや冷蔵庫の冷媒)ではないかと思います。これらの物質は有機フッ素化合物の「化学的に安定である」あるいは「分子間相互作用=ファン•デル•ワールス力が小さい」という性質によります。
このほかにも、有機フッ素化合物は医薬品などの生理活性物質としてよく使われています。最近の新規な医薬品の15〜20%にはフッ素原子が含まれています。しかし、天然に存在する有機フッ素化合物はわずか数種類、数えるほどしかありません。そのため、フッ素を含む有機化合物は「毒か薬」になります。特に、天然有機物のどこかにフッ素を入れると、薬や毒になりやすいようです。
私の研究テーマの一つは「含フッ素アミノ酸」の効率的な合成法の開発です。
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分子には化学構造は全く同じであっても、立体的に構造が異なるものがあります。たとえば右手のグローブと左手のグローブは同じ構造ですが、同じように右手にはめることはできません。このように鏡に映したような関係にある分子構造の特徴を不斉と呼び、その分子は互いに対掌体であるといいます。化学反応によって不斉構造をもつ分子ができるとき、両方の分子は本来同じ構造なので全く等確率で生成するため、不斉源がないところから一方の対掌体のみを得ることはできません。しかし対掌体によって薬理作用が大きく異なるため、いかに対掌体を作り分けるかが化学者の大きな研究テーマになっています。
我々生命体を形成しているペプチドもアミノ酸からできていますが、不思議なことにそのアミノ酸は一方の対掌体のみからできています。もし、両方の対掌体が存在すればペプチドはランダムな構造となり精密に制御された酵素などの機能を発揮することができず、我々は生命を維持することもできません。太古の宇宙に目を向けるとBig Bangによって宇宙が形成され、素粒子や原子が融合しながら単純な分子を作り上げ、地上で生命体が生まれてきました。その過程で、本来等確率でしか生成しないはずの光学活性なアミノ酸が自然の原理に反して一方の対掌対のみとなって我々生命体を形成していることは生命の起源であり、同時に未だ解明されていない謎なのです。