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医薬品に役立つ有機フッ素化学(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

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 こんにちは。有機分子設計学研究室の片桐です。

 私の専門は有機フッ素化学です。有機フッ素化合物というと、普通まず思い浮かべるのはテフロン(フライパンなどのコーティング剤)やフロン(エアコンや冷蔵庫の冷媒)ではないかと思います。これらの物質は有機フッ素化合物の「化学的に安定である」あるいは「分子間相互作用=ファン•デル•ワールス力が小さい」という性質によります。

 このほかにも、有機フッ素化合物は医薬品などの生理活性物質としてよく使われています。最近の新規な医薬品の15〜20%にはフッ素原子が含まれています。しかし、天然に存在する有機フッ素化合物はわずか数種類、数えるほどしかありません。そのため、フッ素を含む有機化合物は「毒か薬」になります。特に、天然有機物のどこかにフッ素を入れると、薬や毒になりやすいようです。

 

 私の研究テーマの一つは「含フッ素アミノ酸」の効率的な合成法の開発です。

 医薬品などに求められる含フッ素アミノ酸は天然に存在しないので、合成しなければなりません。特にアミノ酸はほとんどが光学活性体であるため、立体選択的な反応を行わなければなりません。

 立体選択的な反応は有機化学の華です。野依先生のノーベル賞のお仕事は、この立体選択的な反応の開発です。そして、有機化学者はどうしてもその「腕」をアピールする仕事をしたがります。しかし、腕が必要な合成法は、その習得に長い練習期間を必要とするため、実用的ではありません。

 私の戦略は、「立体特異的」な反応により光学的に純粋な含フッ素アミノ酸の共通中間体を作り、それを広く利用していただくことにあります。この戦略の第2弾としてα-トリフルオロメチルアミノ酸の共通中間体を合成しました。現在、第3弾としてα-ジフルオロメチルアミノ酸の共通中間体の合成に挑戦しています。これができればアフリカの原虫病の特効薬を安く簡単に作ることができます。

 そんな人類の役に立つ分子を設計し、実際に作ることが私の使命です。

片桐 利真

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