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2014年11月

2014.11.25

人工酵素は天然酵素を超えられるか(須磨岡教授)

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 こんにちは。生物化学研究室の須磨岡です。

 私たちの研究室では、応用化学科の共通言語である「化学」を用いて生命現象を理解し、生命にはできない機能を人工的に発現させることを目指しています。もちろん、生物は何億年もかけて進化して現在の形になってきたわけですから、それぞれの生物が生きていくうえでは、その形や機能が最も適しているのかもしれません。しかし、その機能はあくまでもその生物のためのものであり、必ずしも人間が必要としているものではありません。ここでは、私たちが開発した人工酵素のお話をしてみたいと思います。
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2014.11.17

本学の技術で開発した高強度高耐熱性ポリイミド樹脂が実用化(山下教授)

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 こんにちは。高分子・光機能材料学研究室の山下です。

 ポリイミドは450℃の高温に耐える唯一の高分子で、人工衛星などの宇宙材料やコンピュータの回路などに使われている材料です。 
 私たちは産業技術総合研究所、住友精化株式会社と共同で、ポリイミドに粘土などの無機物を分散したハイブリッド・フィルムを開発しました。陶器やガラスは水や空気を通さず優れた絶縁性をもつ材料ですが、曲げることはできません。柔軟な高分子と無機物をハイブリッド化することで、優れた性能と柔軟性という2つの特徴を両立することができたのです。

 開発の当初は、優れたガスバリア性があることから太陽電池用材料としての応用を検討しました。実際、現在市販されている太陽電池用材料はせいぜい10年しか耐久性はありませんが、私たちの開発した材料は少なくとも30年以上もの耐久性があることが分かりました。

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2014.11.14

アボガドロ定数の10兆分の1の金属を調べて現代のエレクトロニクス社会を支えています(高橋教授)

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 こんにちは。材料物理化学研究室の高橋です。

 皆さんが毎日使っているスマートフォンや携帯電話、タブレットなどのICT機器に無くてはならないもの・・・、それは、シリコン基板を使って作製された高度集積回路(LSI)やダイオードなどの半導体デバイスですね。これら半導体デバイスは、ICT機器だけでなく洗濯機などの家電製品の中でも活躍しており、現代生活を支えています。

 今回は、より高性能の半導体デバイスを開発するための化学屋さんの仕事ぶりを紹介しましょう。

 半導体デバイスの作製するためにシリコン基板を使います。そのシリコン基板の表面に、ほんのわずかな“余計な”金属が存在すると、半導体デバイスがつまりはスマートフォンが正常な働きをしなくなることがあります。今回の話題は、シリコン基板の表面のほんのわずかな金属についてのお話です。

 では、いったいどのくらいの“余計な”金属が存在するといけないのでしょうか。シリコン基板表面の面積の5万分の1程度を“余計な”金属が覆うと、半導体デバイスが異常な動作をする原因になるのです。半導体デバイスの分野では、この“余計な”金属のことを、汚染金属(もしくは金属汚染)と呼んでいます。安定に動作し、高い信頼性を保った次世代の半導体デバイスを創り出すためには、汚染金属の量を50万分の1以下に減らすよう、努力が続けられています。

 私たちは、このわずかな汚染金属を除去する方法を研究しています。その研究の中で、表面の5万分の1程度の極めてわずかの金属がどのような形態をしているか、確かめることにしました。敵を倒すには敵のことを知らないといけませんね。

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2014.11.11

カリフォルニア・ナパバレーにて開かれた国際会議に招かれました(山下教授)

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 高分子・光機能材料学研究室の山下です。

 10月末、カリフォルニアのナパバレーで開催されたStimuli Responsive Materialsという会議に招かれました。刺激に応答して機能を発揮する材料をテーマにした国際会議で毎年開催されています。たとえばpHの変化に応答して形を変える高分子は身体の患部に選択的に薬剤を運ぶドラッグ・デリバリーとして応用されており、また我々の開発した光を照射すると形状を変化させる材料は光エネルギーによって心臓のように鼓動するデバイスや目に見えない位小さなマイクロマシーンへの応用が可能な材料として注目を集めました。

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2014.11.05

サステイナブル社会に貢献する新しい触媒の開発に挑戦しています(原准教授)

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Photo 触媒化学研究室の原です。

 みなさんは、「触媒(しょくばい)」という言葉を聞いたことがありますか?液晶材料、医薬品、プラスチック製品など、我々の身の回りには触媒によって作られたものがあふれています。触媒は、我々の生活に必要な様々なものを、エネルギーをあまりかけずに、また、環境に悪影響を与える廃棄物を極力出さずにつくるために使われるいわば魔法の物質です。

 それぞれの触媒についての研究の成果が認められ、2001年に野依良治先生が、続いて最近、2010年に鈴木章先生と根岸英一先生がノーベル化学賞を受賞されました。これらの日本人の先生の受賞例に限らず、日本では、実に多くの触媒についての重要な研究がなされてきました。

 我々の研究では、既存の手法にとらわれず自由な発想によって、我々が直面する資源・エネルギー問題、環境問題の解決につながる触媒や日々の生活や健康の質を向上させる触媒の開発に取り組んでいます。

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2014.11.04

今年度ノーベル化学賞受賞のマーナー教授に聞く(山下教授)

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 高分子・光機能材料学研究室の山下です。

 今年のノーベル化学賞はスタンフォード大学のマーナー教授ら3人の化学者に授与されることになりました。前日の日本の研究者らのノーベル物理学賞受賞に国内が熱狂している最中、化学賞の記事は小さくしか扱われていなかったのですが、大学から帰る途中の電車の中でスマホを見ながら「ほー、Bezigが受賞したのかぁ~」と思いながら画面をスクロールしてゆくと「William. E. Moerner」と名前を発見しました。

 Moernerさんは現在カリフォルニアのスタンフォード大学の教授です。Moernerさんとは20年来の親交があり、私は昔から彼のことを「ダブリュイー(W.E.)」と呼んでいたので(彼はそう呼ばれることを望んでいたので)、記事を見ながら「そういえばWilliamという名前だったんだぁ」と思いだした次第です。

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2014.11.03

光エネルギーから「使える物質」をつくり出す化学(森本講師)

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Co2conc  こんにちは、光機能性錯体化学研究室・森本です。

 今回は太陽光エネルギーを「化学エネルギー」に変える話です。

 人類は古くから太陽光エネルギーを利用して、様々な形態のエネルギーを獲得してきました。例えば、オリンピックの聖火を採火するときのように、太陽光を1点に集めて火をおこす時代もあったようです。また現代の日常生活では、建物の壁や屋根に太陽電池を設置して、光エネルギーを電気エネルギーに変え、電化製品を使用しています。しかし、地球上には人類が現れるずっと昔から太陽光を利用している生物が存在します。それは、私たちの身の回りの植物とその祖先です。

 小学校・中学校でも学習するように植物は光合成を行い、太陽光と水(H2O)と空気中に0.04%しか含まれていない二酸化炭素(CO2)から、炭水化物(C6H12O6)と酸素(O2)を作り出します。この光合成は、生物を構成する重要な元素である炭素に注目すると、二酸化炭素から炭水化物を作る化学反応だと言えます。つまり植物は、太陽光と二酸化炭素を原料にして、自分たちの生命活動を維持するために「使える化学物質」である炭水化物を生産しているのです。この点で光合成は、太陽光エネルギーを「化学エネルギー」に変換するための装置なのです。では人類も太陽光と二酸化炭素を原料にして、人間にとって「使える化学物質」を生産することはできないでしょうか?現在これを実現しようと、光合成(に似た反応)を人間の手で行う人工光合成の研究が世界中で行われています。

 当研究室では、植物と同じように空気中のわずかな二酸化炭素を濃縮する金属錯体を見つけました(図を見てください。)。

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