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カリフォルニア・ナパバレーにて開かれた国際会議に招かれました(山下教授)

| 投稿者: tut_staff

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 高分子・光機能材料学研究室の山下です。

 10月末、カリフォルニアのナパバレーで開催されたStimuli Responsive Materialsという会議に招かれました。刺激に応答して機能を発揮する材料をテーマにした国際会議で毎年開催されています。たとえばpHの変化に応答して形を変える高分子は身体の患部に選択的に薬剤を運ぶドラッグ・デリバリーとして応用されており、また我々の開発した光を照射すると形状を変化させる材料は光エネルギーによって心臓のように鼓動するデバイスや目に見えない位小さなマイクロマシーンへの応用が可能な材料として注目を集めました。

 通常、国際会議は大きな講演会場で舞台に立ち30分、または1時間の講演を行います。この会議では講演に引き続き、参加者がテーブルを囲みワインを飲みながら深夜まで延々と研究の話に花を咲かせます。ワインの産地ナパバレーで開催されるというのはそんな秘密があったのです。講演の際にも質疑応答がありますが、限られた時間で限られた質問しかできません。しかしワインパーティーでは打ち解けた雰囲気で実験の詳細を議論したり、お互いの意見を交換したりしながら、ときにはすばらしいアイデアが生まれ、それが共同研究に発展することも稀ではありません。研究の夢を語り合う人々は一様に楽しそうで、時のたつのを忘れ夜が更けるまで研究の夢を語り合いました。

 学生が最初に経験する試練の場は卒論発表会です。1年間の研究成果を10分ほどの時間で発表し試問を受けますが、演台に立った瞬間頭の中が真っ白になり何を答えたのか覚えていません。それも今となっては楽しい思い出ですが・・。次の試練は学会での発表です。講演会場の最前列には学会の重鎮の先生たちがずらっと並んで座っており、厳しい質問が飛んできてとても生きた心地がしません。そして世界をあっと言わせるようなデータが出るといよいよ国際会議にデビューすることとなります。

 国際会議で英語で発表するのはまた大変なことですが、国内の会議と異なる楽しさがあります。国際会議はアメリカやヨーロッパのリゾート地で開かれることが多く、ビールを飲みながら研究の議論をするポスター・セッションや、正装して参加する晩餐会がひらかれるなど人と人との交流の機会が多くあります。昨年はイギリスのダーラム大学で学会があり、ハリーポッターの撮影でも使われた古びたお城の中で晩餐会がありました。

 今となっては、数百人の聴衆の前で彼らの視線を一身に集め自分の研究の自慢話をできる国際会議は何とも言えない快感で、毎年招かれれば喜んで世界各地の学会に出かけています。最近では海外の学会に研究室の学生全員を一緒に連れてゆくことにしています。彼らにとって国際舞台で発表することはとてつもなく緊張感があり大変なことですが、それ以上に世界の最先端の研究に触れ、海外の文化や街並みの美しさを体感することは何物にも代えがたい貴重な経験となるからです。学生も貴重な体験に感激し一回りも二回りも成長して帰ってきます。

 東京工科大学工学部に新しい学生を迎え、3年後には卒業課題に着手します。わくわくするような最先端の研究を皆さん自身が推進し、その成果を携えて海外の学会に参加し、そして学生諸君と一緒にワインを酌み交わす日がくるのを楽しみにしています。

山下 俊

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