天野浩先生(ノーベル物理学賞)からの年賀状(片桐教授)
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ノーベル物理学賞を受賞された天野浩先生の学生時代の様子をうかがわせる年賀状を年賀状の束から発掘しました。
3回生のときは「勉強しているというよりレポートに追われる毎日です」 と、ごく普通の大学生であったことがうかがえます。4回生のときは「ところで今僕はネツリキガクとかトーケイリキガクとかに関することをやっているんですが、電気科出身にはチンプンカンプンなのです。」 と、電気科から無機結晶材料の世界に飛び込んだものの、戸惑っている様子がうかがえます。修士1年のときは、イラストが当時ビッグコミックスピリッツに連載されていたたがみよしひさの「軽井沢シンドローム」の版画でした。彼がひそかにマンガ好きであった証拠です。
修士2年のとき送られてきた年賀状は、彼が一番苦しんでいる頃の様子をうかがわせるものです。黒い太い字で「こちらは先がみえません」と書かれている文言に彼の苦悩が感じられます。
理系の研究室は朝早くから夜遅くまで拘束され、厳しい、俗にいう「ブラック研究室」が散見されます。片桐もそのような厳しい研究室で8年間も過ごしました。天野先生の場合も、不可能と言われる課題に挑戦しては失敗を繰り返し(報道では1500回以上の失敗を経て)、そして、そのつらい厳しい日々を超え、今年のノーベル賞という特大の栄光を得ました。学生さんは若いときに一度苦しさを味わうことが、その後の人生を豊かにするためには必要ではないかと思います。どんなつらい思い出も、すぎてしまえばみなすばらしいものになります。
そして、博士1年のときの年賀状は「今年は大吉ですよ」、博士2年のときは「唯今小さく日本中をかけまわっています。日の目を見るのはまだ先になりそうです」と明るいものにかわりました。
今回、このような年賀状を、特に学生さんにお見せすることの許可を12月5日に天野先生にメールでお願いしました。半日後の返信を転載します。
片桐先生
今、トランジットでヘルシンキにおります。
年賀状の件、もし何かのお役に立てるのであれば是非お願いします。
当時はきっかけもつかめず苦しかったので、大変懐かしいです。天野
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