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有機化合物を作る化学(上野講師)

| 投稿者: tut_staff

 こんにちは。有機合成化学研究室の上野です。

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 有機化合物は、既に身の回りにたくさん溢れており、近代の快適な生活には不可欠です。身の回りの有機化合物としては、医薬品や液晶ディスプレイの色素などが挙げられます。しかし、実際には、これらが有機化合物であることを実感せずに、生理作用や発光を活用しているためか、有機化合物は日常生活にはあまりなじみのない言葉になってしまっています。

 ところで、これらの医薬品や液晶ディスプレイの色素に使用されている有機化合物は、どのように作られているのでしょうか。私の専門分野である有機合成化学は、まさに「有機化合物の作り方を研究する学問」です。


 例えば、ある構造の化合物の医薬品としての効能を調べようと思っても、その思い立った有機化合物を簡単に合成できるとは限りません。多くの場面では、これまでに誰も作ったことのない有機化合物を研究対象とするので、その新しい有機化合物を合成できるかどうかは、有機合成化学の発展の歴史が支えています。 これまでにたくさんの有機化学反応が開発されてきましたが、有機化合物の構造は有機化学反応よりも圧倒的に多く、まだまだ研究すべきことはたくさん残されています。

 図には、これまでに私たちの研究室で開発された有機化学反応の一例を記しました。この反応は、ケトンを出発原料に用いていて、このβ位で炭素ー窒素結合を形成しています。この研究成果を発表した当時、ケトンのβ位において結合形成する反応はほとんど知られておらず、この後、たくさんの類似研究が世界中から報告されるようになってきました。

 このブログを見ている高校生の皆さんも、これまでに誰も行ったことのない研究を成功させ、世界に向けて発信する楽しさを一緒に味わいましょう。

上野 聡

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