高分子の分子量ってどのくらい?(山下教授)
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図は分子量無限大の高分子ゲル
高分子は、エチレンやスチレンなどといったモノマーが多数連なった構造をしています。教科書ではポリエチレンは-(CH2-CH2)n-と書かれており、このnが重合度を表しています。一般には「nはすごく大きな数」と言われていますが、具体的にどのくらいなのかは示されていません。いったい高分子の重合度はいくらなのでしょうか?
一つの例として、もっとも単純な構造の高分子であるポリエチレンについて考えることにしましょう。n=1のときは炭素が2つの分子で、エタンと呼ばれます。エタンは沸点がマイナス89度の気体です。nが5のときはデカンという液体で沸点は174度です。nが10になると結晶となり、減圧(15mmHg)下で205度の沸点をもつようになります。nが60のときにはもろいろう状の固体、nが1000を超えるとポリエチレンのような固い固体となります。このように重合度nの大きさによって同じ構造式であらわされる物質の性質は著しく変化しますが、nが十分大きくなるとnが多少変化してもその物質の性質はあまり変わらなくなります。nが十分大きくなってはじめてポリエチレンはコンビニ袋のように柔軟で丈夫なフィルムとなるのです。このように高分子らしさを発揮するためには十分大きな重合度が必要で、高分子合成に携わる化学者にとっていかに分子量の大きな高分子をつくるかが課題になっているのです。