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(推薦図書)中西 準子著「環境リスク学―不安の海の羅針盤」日本評論社(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

51ypp70v28l  日本のリスク学の先駆者、中西準子氏の講演やインタビュー、論説を集めた本です。中西氏は、下水処理の問題を起点に環境問題に科学に基づいた現実的な解決・対応を真摯に探求し続けた研究者であり、現在も環境と安全の問題に科学者の立場から積極的に発言を続けていてる方です。氏のホームページ(今年からブログに移行しています。)は多くのアクセスを集めているといいます。

 この本は、専門家向けではなく、一般の人たちに向けた本で「リスク」の本質がわかりやすく説明されています。

 と、3ヶ月前まで思っていたのですが...。

 いえいえ、別にこの本の内容が間違っている、という訳ではないのですよ。

 たまたま、この本を工学系でない学生諸君と一緒に読む機会があったのですが、私の予想に反して、思ったほどには、本書の内容に納得してもらえなかったのです。

 さきほど、「わかりやすく説明されています。」と書いたのですが、工学系の教育を受けていない人にとって、本書の内容はそれほどわかりやすくはないらしいのです。わからないから納得できない、そういう学生さんが多かったのです。

 ここに「リスク」の問題の本質があるように思います。たとえば新しい技術が開発された、というニュースに対しては「よくわからないけど期待する!」という反応は一般的です。しかし、ことリスクについては「よくわからないけど安心だ!」とはならないのです。

 工学の勉強をこれから始める人に、敢えて今、本書を一読することをおすすめします。そして、工学の考え方を身につけたあと、もう一度、読んでみてください。おそらく、大きな変化が感じられるはずです。それは、自分自身の努力の結果であると同時に、科学者が社会とコミュニケーションをとることの難しさを示してもいるのです。

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