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2015年3月

2015.03.30

東京工科大学への道~自然を愛でながら最先端の学問と技術の学舎へ(高橋教授)

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 東京工科大学の最寄りの駅、JR横浜線の八王子みなみ野駅からおよそ15分間、坂道を登っていくと東京工科大学八王子キャンパスに着きます。最新のクラウド技術を駆使した学内ICT環境を有し、学生全員がノートPC必携で大学生活を送っている東京工科大学のキャンパスは、自然豊かで人混みから離れた丘の上に拡がっています。八王子みなみ野駅から大学までの道を歩いてみましょう。大学との間を頻繁に往復しているスクールバスを使わずに。

 春から初夏、朝の道中では、緩い坂道の途中、道路脇の林から小鳥のさえずりが聞こえてきます。ヨーロッパで、公園か大学の緑豊かなキャンパスの中を散策しているような気分になります。耳を澄ますと、“つき、ひ、ほし、ほいほいほい”と鳴いているように聞こえ、サンコウチョウ[1]かと思いつつ歩いていると、否、やたら色々な鳥のさえずりが聞こえてきます。ガビチョウ[2]かもしれません。

 さえずりを耳にしながら足下に目を落とすと、どこにでもある雑草、ヨモギ、スイバ、カラスノエンドウ、オオバコ、ギシギシ、スズメノテッポウなどが競っているのが目に入ります。道路脇の林を過ぎた頃、右手に東京工科大学のシンボル的な建物、片柳研究所棟の雄姿が見えてきます(写真)。

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2015.03.23

先苦後楽のすすめ(学生時代に苦しむことには価値がある-2 )(片桐教授)

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 私はこの3月まで岡山市民でした。
岡山市には「後楽園」という名勝があります。日本三大名園にも数えられる日本庭園です。この庭園は江戸時代に池田候により、岡山城のそばに作られました。この庭園の名称「後楽園」は「先憂後楽、先苦後楽」ということばから採られたものと聞いております。

元々の意味は為政者の心がけに関するものですが、現在では転じて「先に苦労・苦難を体験した者は、後に安楽になれる」という意味の言葉・経験則的なものになっています。

 しかし、この「苦」とか「楽」とかは主観的なもので定量化はできませんし、しかも比較的なものです。以下は、私自身の経験からです。

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2015.03.16

研究室の立ち上げ(西尾教授)

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 4月に新設される応用化学科の教員は,(今年度から/次年度からの違いはありますが)10名全員が他の大学から着任します.

 私自身も,昨年度まで首都大学東京の都市環境学部におりました.現在は他の教員と同様に,4月から研究室を立ち上げる準備を進めています.

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2015.03.13

生命現象を見る指示薬?(須磨岡教授)

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 皆さんは化学の実験でフェノールフタレインやメチルオレンジに代表されるpH指示薬を使ったことがあるでしょうか。pH指示薬を使うと,その溶液が酸性なのか塩基性なのか簡単に色で判断できます。これと同じように,生命現象を色で追跡することが可能なのでしょうか。今回は,そんな研究についてお話したいと思います。

 タンパク質はいろいろなアミノ酸が縮合重合してできた高分子で,生体内で多くの役割を担っています。細胞外の情報(ホルモンなどの化学的な刺激)を細胞内に伝え,細胞応答を誘導する受容体もそのようなタンパク質のひとつです。ある受容体は,細胞外の情報に対応して特定のチロシン部分にリン酸をくっつけ,これをきっかけとして細胞を活性化しています。また,細胞中にはリン酸を取り外す働きを持つ酵素も存在していて,チロシン部分からリン酸が取り外されると細胞は元の状態に戻ります。

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つまり,チロシン部分にリン酸を付けたり外したりすることで細胞外の情報を細胞に伝え,細胞はバランスを保ちながら生命活動を維持しています。もし,このバランスが崩れてしまったらどうなるでしょうか?たとえば受容体にリン酸が付いた状態が続くと,細胞は活性化されたままの状態になってしまいます。実際に,この情報伝達の異常が,細胞のガン化(細胞の暴走)の原因のひとつになっています。

 私たちは,チロシン部分のリン酸化の状態を検出する化合物の合成に成功しました。

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2015.03.09

高校までの化学と大学での化学(原准教授 )

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 今日は高校までに習う化学と大学で習う化学の違いについてお話ししたいと思います。

 残念ながら、高校までの通常の学習内容だけでは、化学はどうしても暗記する項目が多い科目だという悪い印象を持たれてしまいがちな現状にあります。でも本当は違うのです!

 小さな子供が一つ一つの単語から覚え始めて、しばらくすると、それらをつないで意味のある会話として徐々にコミュニケーションできるようになる過程に似ていると私は思います。中学校や高校で化学を学習している時には、なぜ暗記しないといけないのかと疑問に思うことがたくさんあります。それでも引き続いて大学で化学を学ぶと、単に暗記するだけと思っていたいろいろなことが驚くほどつながってきます。例えば、高校で学ぶ無機化学と有機化学は全然違うもののように思えるかもしれませんが、大学ではそれらをお互いにつなげて理解することができます。

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2015.03.05

推薦図書 佐藤 文隆著 「物理学の世紀 ―アインシュタインの夢は報われるか」 集英社新書(森本講師)

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 アインシュタインの重力場方程式の解で有名な佐藤文隆先生が、主に20世紀の物理学の発展・変遷についてお書きになった本です。佐藤先生の著書としては少し前のものになりますが、すきがなく強固なものに思えた19世紀までの古典物理から現代物理が興る歴史を時代背景とともに俯瞰できる、今でも読んで楽しい一冊だと思います。

 応用化学科の人間がなぜ物理学についての本を紹介するのか、不思議に思う学生もいるかもしれません。それは現代化学が現代物理の発展と切っても切れない関係にあるからです。すなわち、現代物理学の3つの柱のうちの2つ、量子力学と特殊相対論なくして、周期表にある原子を理解することはできません。その3つの柱の全てに深く関わっているアインシュタインが提起した天才的な(普通の感覚では受け入れられない)ものの見方・考え方と、X線や放射線の発見等によって、現代物理学の基礎がつくられてきた過程とその発展を垣間見ることができます。

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2015.03.03

新学期の時間割、作成中です。その2。(江頭教授)

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2_2  今回は、以前このブログに掲載した「新学期の時間割、作成中です。」の続編。今度は1年後期の時間割を紹介します。

 前期と後期で変わるところ、変わらないところがありますが、まずは変わらないところから。

 「工学基礎実験Ⅱ」は「工学基礎実験Ⅰ」とおなじ、金曜日の午後に設定されています。1年生の間、金曜の午後は実験と決まっています。

 月曜日の1限、2限も人文・社会、教養としての自然科学の時間となっています。これは他の学科・学部でも学修する東京工科大学のスタンダードな授業です。

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「炭素ー水素結合活性化」って何??(上野講師)

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 私の専門とする有機合成化学では、常に新しい反応が開発されています。その研究対象も時代と共に変化します。そのため、大学で研究している私たちは常に最新の論文を読み、これまで誰にも為し得なかった研究成果を挙げるために日夜研究に励んでいます。

 有機合成化学の分野で、近年特に注目を集めている研究対象に、「炭素−水素結合活性化」があります。化学分野で権威のある国際雑誌の一つであるJournal of the American Chemical Societyは毎週発刊されますが、近頃「炭素ー水素結合活性化」に関連する論文を見ない週はありません。今回は、この「炭素ー水素結合活性化」とは何かということを、これを読んでいる高校生の皆さんに理解できるように紹介して行きたいと思います。

 炭素−水素結合とは、炭素(C)と水素(H)との共有結合であり、ほとんどの有機化合物には複数個含まれる結合です。例として図1にシンナーやマニキュアにも使用されているトルエンの構造式を記しました。これを省略せずに書くと図2のようになります。ここには、8個の炭素ー水素結合が含まれていることが分かると思います。有機合成化学では、こういったある分子を、医薬品や材料など価値のある別の分子に変換することを研究する学問です。ここで、トルエンのある炭素ー水素結合を別の結合に置き換える事を考えてみると次の二つの大きな問題があります。1つ目に炭素ー水素結合は他の結合よりも多くの反応試薬とは反応しにくい、2つ目に複数の炭素ー水素結合をもつために望みの炭素ー水素結合だけを変換することは困難であることです。世界中の有機合成化学者たちは、この二つの課題を克服するために、それぞれ独自の「解決法」を発見し、それが毎週のように論文として報告しているという訳です。

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