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推薦図書 松田 勝彦著 「商品から学ぶ化学の基礎」 化学同人(原准教授)

| 投稿者: tut_staff

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 我々の身近にある様々なものは、実に多くの化学の原理に基づいています。本書は、普段当たり前に接している身の回りの商品の不思議を再認識し、どのような化学で成り立っているかを知ることができます。
  例えば、花火の化学についてその歴史を含めて興味深い紹介があります。夏目漱石は「化学とは花火を作る術ならん!」と書いたとのことです。我々の心を動か す花火にも多くの化学があるのです。どのような化合物の組み合わせで夜空を彩る大爆発を設計するのか、それを実現するためにどのようにして先人は化合物を 手に入れたかが解説されています。
 また、緑茶の主成分であるテアニン(うま味)、カテキン(渋味)、カフェイン(眠気覚まし)の3つについての 紹介も読者の興味を引く内容になっています。これらの有機化合物の化学構造がさりげなく示されていますが、それよりも栽培方法と成分の関係、お茶の味との 関係、おいしいお茶の入れ方の理由などを知ることができます。これらのお茶の化学を知れば、普段のお茶の時間もさらに楽しめるかもしれません。   

 ラメはなぜキラキラするの?というタイトルのトピックもあります。真珠の養殖で行う作業について説明があり、炭酸カルシウムの結晶の薄層とタンパク質の 薄層の積層構造がシャボン玉同様の虹色の干渉色を生むことが解説されています。ここで重要となる炭酸カルシウムを起点に、他のカルシウム化合物や同類のマ グネシウム化合物の化学へと読者の関心を導いています。
 はじめから教科書のみで化学の原理を学ぶのには相当の根気がいるかもしれません。本書を手に取って身の回りのものから興味を持てる化学を発見して、化学の原理をもっと知りたいと思えるようになるのではないかと思います。

原 賢二

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