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光触媒で化学物質をつくりだす(森本講師)

| 投稿者: tut_staff

Photocatalysis

 触媒とは、それ自身は反応の原料にはならないけれども、起こらなかった反応を進行させたり、遅い反応を促進する作用を持つ物質のことです。ハー バー・ボッシュ法によるアンモニア合成をはじめとする現在の化学工業における重要な反応には、たいてい触媒が不可欠です。また、実験室スケールの実験で も、酸・塩基や遷移金属等を触媒とする反応が日常的に使われ、様々な新規化合物を創り出すための原動力となっています。

 この触媒の一種として「光触媒」と呼ばれる物質があります。これは、光エネルギーを吸収して、それによってある反応を促進する物質です。私たちの 身の回りでは、壁や窓ガラスに光触媒を塗ることで、光エネルギーを使って汚れを分解したり、汚れを防ぐ反応を進行させる、というような応用例があります。 また、植物が行っている光合成は、光エネルギーを使って二酸化炭素を炭水化物に変換するので、一種の光触媒系と見ることもできるでしょう。

 さらに最近、再生可能エネルギーの利用の一環として、太陽光エネルギーを用いて有用な物質を創出する光触媒も注目されています。例えば、水と光 エネルギーから酸素を発生させる光触媒、また水の電気分解と同じように、水を酸素と水素に分解する光触媒等が開発されています。また、光合成の一部を真似 て、二酸化炭素から一酸化炭素やギ酸等の炭素化合物をつくりだす光触媒もさかんに研究されています。このような光触媒は、光エネルギーを高エネルギー物質 である水素や炭素化合物に変換できることから、太陽光エネルギーから燃料や化学原料をつくりだせる物質として、その実用化が期待されています。しかし、ほ とんどの反応系はまだ研究段階の域を出ていません。

 化学を目指す学生の皆さんが将来、この研究領域に興味を持って参入し、太陽光を有効利用できる実用的な光触媒を開発することで、サステイナブル社会の実現に一緒に貢献できることを楽しみにしています。

森本 樹

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