本を読もう:読むことと書くこと、書くために読む(高橋教授)
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読書の勧めを、色々なところで耳にし、また目にはいると思います。私たち応用化学科のブログでも、お勧めの図書が挙がっています。来年の受験を控えた受験生の皆さんからは、『そんな時間無いよ』という声が聞こえてきそうですね。私たちの東京工科大学では、学生諸君の日本語力増強のために、今年度、“本を読む”ことに力を入れています。では、なぜ読書を勧めるのでしょうか。ここではその理由を考えてみましょう。
それは、自分の考えをまとめて人に伝える場面では、知識の蓄積が必要だからです。まとまった書き物をするためには(アウトプットするためには)、十分な情報が必要(インプットが必要)なのです。外からの情報(知識)を得ずに著作物を仕上げることができる人は、そう多くないでしょう。著名な作家であっても、著作物を作るに際して数多くの資料を集め、それらを参考にされているのです。著名な作家の蔵書量が数万冊という話を聞いたことがあると思います。
皆さんは、司馬遼太郎という作家をご存知でしょう。数多くの歴史小説や評論を残されていますね。大阪府東大阪市にある司馬遼太郎記念館では、6万冊におよぶ多くの蔵書や資料などが展示されています。以前この記念館を訪問した際には、その蔵書と晩年に使われたという書斎を拝見し、「こういう書斎でじっくりとまとめることができるといいな」でも、「やはり書くためには、読んで知識を得ることが大事だな」と感じ入りました。(写真は、記念館外観と書斎です。)
すなわち、読む価値があると判断される本には、数多くの知識が凝集されているのです。これは、“本”を読むことを勧める理由とするべきかもしれません。多くの知識の凝集の後、書き下ろされた原稿に、幾度となく推敲が加えられます。これも、司馬遼太郎記念館での展示物のお話です。各色の色鉛筆を使い、何度も推敲された原稿が展示してありました。こうして知識の凝集体から新しい著作物が産まれているのです。だからこそ、読書、特に“本”を読むことが勧められるのです。
三つ目の理由として、読書することで自分とは異なった価値観や考え方を知り、自分とは別の人生を瞬時に(1冊の本を読み終える間に)経験できることです。もちろん、読書で得た(経験した)知識の凝集をして自分自身の糧とするために、記録として整理することが大切ですね。この繰り返しにより、知識の蓄積とともに表現力も身につきます。IT技術の進歩によってますます増える電子媒体の書籍でも、マーカーやメモを付けることが可能になっています。是非とも利用したいものです。
読書を勧める理由、なぜ本を読むことが大切なのかを考えてみました。考えをまとめて人に伝えるために、読書による知識の蓄積が重要であると、私は考えています。さらに大学で学びを進める中では、読書で得た知識を昇華させて知的な生産につなげる力を身につけて欲しいと願っています。
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