隠れた存在(?)の,過マンガン酸カリウムに匹敵する強い酸化剤(西尾教授)
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高校の化学で酸化剤と還元剤について学びますが,教科書では,過マンガン酸カリウム(KMnO4)が強い酸化剤として紹介されています.過マンガン酸カリウムのMnの酸化数は+7という高い酸化状態ですが,相手の物質を酸化させ(酸化数を増大させ),Mn自身は還元されて酸化数が減少します.酸性水溶液中では+2に,中性・塩基性水溶液中では+4になります.
高校の化学では酸化剤・還元剤の反応の進みやすさ(強さ)を数値で厳密に示すことはしませんが,大学では,電気化学で「酸化還元電位」あるいは「標準電極電位」という,V(ボルト)での定義について学びます.酸化還元電位の高い物質やイオンは還元されやすいため,強い酸化剤となります.過マンガン酸カリウム(水溶液中では過マンガン酸イオン, MnO4-)の標準的な酸化還元電位は+1.51Vで,この数値はマンガンやアルカリマンガン乾電池の電圧程度ですが,酸化還元電位としては非常に高い値です.(電圧と電位の定義の違いも,電気化学で学ぶ重要な内容です.)
酸化還元電位を用いると,金属のイオン化傾向を数値で比較することもできます.酸化還元電位の高い金属は金属イオンから金属へと還元されやすいので,その金属はイオン化傾向が小さいという事になります.最もイオン化傾向の小さい金属として学ぶ金の標準的な酸化還元電位は+1.52Vですので,金イオンあるいは金酸化物(Au2O3)は,過マンガン酸カリウムに匹敵する強い酸化剤という事ができます.
参考として,酸化剤・還元剤の特性の比較を表にまとめました.
電気化学は,電池をはじめとして日常生活に関連の深い学問です.大学で化学を専攻したら,是非興味を持って学んでいってください.
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