世界が良くなっている事を示す すごい 映像(江頭教授)
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高分子・光機能材料学研究室の山下です。
私たちの身の回りの世界は真空だらけです・・・って知っていましたか?巨大なビルを支えるコンクリートや鉄、河原の石、携帯電話のプラスチックなど、どの材料もよくみると真空なのです。信じられますか?
世の中の物質を構成する原子は直径が1Å(10-10m)程度の空間に広がる粒子で、その中央に10-15mの大きさの原子核があります。電子の質量は陽子の約1800分の1程なので原子の質量はほぼ原子核だけできまります。その原子核は原子の中の、長さでは105分の1、体積にすると1015分の1の空間に集中しており、その他の空間は何もない虚無の空間なのです。これは原子の内部の構造ですが、原子と原子の間にも巨大な真空地帯が存在します。
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現代の科学では、物理と化学、化学と生物、生物と物理といったように複数の分野にまたがった研究が数多く行われています。そのため、自分の専門以外のことについても幅広く興味を持ち、情報を収集することが重要となってきます。
今回紹介する本は、10年ほど前に出版され、ベストセラーとなったものなので、既に読んだ方も多いかもしれません。近年の科学は凄まじい勢いで進歩しているため少し古くなったところもありますが、遺伝子の本体であるDNAの発見からES細胞を用いたノックアウトマウスの作製までの分子細胞生物学の基本的な事柄が、そこに関わってきた科学者のエピソードとともに巧みな文章で書かれていて、生物を学んでいない読者にも十分に響く内容になっています。
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応用化学を学ぶには座学だけでは不充分で、必ず実験が必要です。以前も紹介したように、本学でも4月から学生実験(工学基礎実験Ⅰ)が開始されました。現在は基本的な実験操作に習熟するためにメスフラスコやビュレットなどの器具を使った実験を行っていますが、本学の応用化学科の特徴として最先端の装置を使った実験も予定されています。その際に利用される装置類は順次、学生実験室に設置されています。
すでに導入された装置についての個別の解説を以下に示します。
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応用化学科が管理する装置に、核磁気共鳴(NMR: Nuclear Magnetic Resonance)装置が加わりました。この装置は、分子構造を決定するのに必要不可欠な実験機器です。
分子は様々な種類の光(電磁波)を吸収します。例えば、紫外光や可視光は分子の中の電子の運動を、赤外線は分子の振動運動を、マイクロ波は分子の回転運動を活発にする(励起する)ことができます。これは、分子がいろいろな電磁波に対する「アンテナ」を持っているという風にイメージできるかもしれません。また、分子はある特殊な条件下で、別の電磁波に対する「アンテナを開く」ことがあります。そのうちの一つに、分子が非常に強い磁場の中に置かれたとき、ラジオ波を吸収するようになるという性質があります。
「ラジオ」いう言葉からを聞くと、周波数によって色々な放送局があって、それぞれには異なる雰囲気の番組がある、というようなことを連想しませんか?これに似たことが強磁場中に置かれた分子には見られます。例えば、メチル基の水素原子とアルデヒド基の水素原子は化学的には異なる環境・雰囲気にある水素であるとわかりますが、実はこの2つの水素は異なる周波数のラジオ波を吸収します。同様に、6個の炭素からなる化合物、ベンゼンとシクロヘキサンの水素も異なるラジオ波に応答します。この性質を利用すると、分子がどのラジオ波を吸収するかによって、その分子内にある原子の置かれている環境・雰囲気を明らかにできる、つまり、構造を解析することができます。
核磁気共鳴装置はこの構造解析法を実行するために使用する装置です。
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第1回、第2回、第3回と続けてきた、「持続可能な(サステイナブルな)発展」の起源の一つである「成長の限界」についての解説ですが、今回をもって一応の区切りとしたいと思います。今回の課題は持続可能な、そして、成長しない世界とはどのような世界なのかです。
本書で成長しない世界についての考察が述べられているのは「第Ⅴ章 均衡状態の世界」です。この章の前半はコンピュータシミュレーションでどのような仮定をおけば人口の急減と工業力の崩壊を避けることができるのか、が探られています。その結果は「省資源技術の導入」「サービス中心の経済への移行」「汚染の防除」「食料の平等な分配」「農地の土壌劣化への対策」「工業製品の寿命の延長」に向けた努力が行われる、という前提で、さらに人口増加の抑制が行われるとした場合、はじめて「人口の急減」を避け、全ての人が豊かな生活を送れる世界が実現する、というものでした。人口増加、すなわち人口の成長の抑制の方法には、出生率を死亡率に強制的に一致させる方法と、一家族の子供の数を2人に制限するより緩やかな方法が検討されています。最終的な豊かさには差がありますが、どちらのシミュレーション結果も少なくとも1世紀は持続可能な世界を示しています。
持続可能な世界を実現するための条件は以下の様にまとめられます。人口が一定に保たれること、死亡率を低くしたければ出生率も低く抑えること。そして、資本設備(建物や工場などのこと)の総量も一定で、投資と損耗が釣り合っていることが必要です。一方、人口と資本設備の総量の比率、つまり豊かさは成長の有無にかかわらずどんな水準でも安定させることができる、従って人々の価値観によって決めることができる、というのです。つまり、豊かさと成長を結びつけて考える必然性はないのです。
このシミュレーションの結果を受けて、成長しない世界についての考察が述べられています。強調されているのは成長しないのは人口と資本設備の総量だけだ、ということです。ある地域の人口が増えて他の地域の人口が減ることもあり得ます。ある産業が成長し、ほかの産業が衰退することもあるでしょう。全体が成長しなくても部分は成長することが可能なのです。ただし、ある部分が伸びれば別の部分を削る必要があるので、全ての部分がみな成長する、ということはありません。どの部分を伸ばし、どの部分を削るのか、成長しない世界では常にその判断が下されなければなりません。あれもこれも、と成長を追い求めるのではなく、自分たちが何を欲しているのか、どうなりたいのかを常に問われるのが成長しない世界だ、とも言えるでしょう。
また、人口と資本設備以外の分野、たとえば、教育、芸術、音楽、宗教、基礎科学研究、運動競技、社会的交流等の成長は「人類の危機」とは無関係です。これらの活動はその社会に暮らす人々の生活を変化させつづけて行くに違いありません。成長しない世界は変化しない世界ではありません。よりよい方向に発展しつづける世界なのです。求めるべきは成長する世界ではなく、発展する世界である。「持続的な(サステイナブルな)発展」という言葉の背景にはこのような考えがあるのです。
発展する人間活動の中には、もちろん技術も含まれます。本書には成長しない世界で歓迎される実際的な発見の例が挙げられています。
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今日は、エバポレーターという装置について紹介したいと思います。エバポレーターを一言で表すと、減圧することによって揮発性溶媒を室温付近で蒸発させるための装置です。
この装置は、エバポレーター本体のナスフラスコを回転させる部分、減圧にするためのダイヤフラムポンプ部分、溶媒を回収するための冷却器部分から構成されています。本応用化学科の学生実験室にも右の写真のように4台設置されていて、主に有機化学実験で頻繁に利用されます。
また、私の研究室でも有機合成化学に関する研究を行っていますので、このエバポレーターという装置を所有しています。有機合成化学は、反応後や単離後は、目的の有機化合物が有機溶媒に溶けていることがほとんどなので、有機化学に関する研究をしていれば、有機溶媒を頻繁に蒸発させたい状況があります。
ところで、高校生のみなさんは、「蒸気圧曲線」という言葉を習ったことがあるのではないかと思います。
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本書で述べられている「成長」は厳密には「幾何級数的成長」、つまりねずみ算式の成長だ、という点については前回詳細に紹介しました。では、何がねずみ算式の成長をするのでしょうか。
まず一つ目は明白で「人口」です。人間がねずみ算式に増える、と言われるといい気持ちはしませんが産業革命以後の人口の増加の様子をみれば正にそんな印象です。こんなスピードで人口が増えてしまえばいつかは限界に達するだろう、とは多くの人が感じることと一致しているのではないでしょうか。
もう一つ、産業革命以降に急速な成長を示しているものとして、本書は「工業生産」の成長を挙げています。正確には工業生産の速度なので加速というべきかもしれません。工業生産が資源の消費につながるとすれば、工業生産の加速は資源消費の加速に対応しており、資源の枯渇、という限界に達することも容易に想像されます。
さて、ここで「工業生産が資源の消費につながるとすれば」と書きましたが、この仮定は実は自明なことではない、というのは一つの注目点です。
例えば「自動車の生産が100台から110台に10%成長した」という状況を考えてみたとき、単純に資源消費も10%成長しただろう、と予想するかもしれません。しかし、新しく作られる自動車がすべてより小型の車だったとしたら資源消費は10%も増えない、それどころか減少しているかもしれません。
あるいは「自動車をモデルチェンジしてデザインを変えたら、10%高い値段で売れた」というケースはどうでしょうか。自動車の売り上げは10%成長していますが、資源消費が同じように成長しているとは限りません。
本書で「工業生産」は一年当たりの生産のドル換算額、つまり金額で表示されています。ですから「工業生産」の成長は資源消費の増加に直結する部分以外にも、技術やデザインの改良の寄与もあるのです。ただ、本書で紹介されている未来予測では、それぞれのシミュレーションで一定の技術レベルを固定して計算を行っているため、「工業生産」の成長が「資源消費」の成長に直結した結果が示されています。このため、資源消費に成長の限界がある、というべきところを、工業生産に成長の限界がある、と誤解する向きもあるようです。
実際、本書を企画したローマクラブが出版から40年を経て発表した「What was the message of "Limits to Growth"」というプレゼンテーションでは本書が主張しているのは「経済成長 (economic growth)に限界がある」ということではなく「今で言うエコロジカル・フットプリント(Ecological footprint, 環境への負荷の指標)の成長に限界がある」ということだと強調しています。
もう一点、本書のシミュレーションの特徴と関連して指摘しておきたいことがあります。
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皆さんは、”金属窒化物”という単語に聞き覚えがありませんか?
そうです。昨年のノーベル物理学賞の立役者である化合物、窒化ガリウム(GaN)は、金属窒化物の仲間です。この他にも様々な窒化物が存在します。今日は、この金属窒化物の紹介をします。
金属窒化物とは、金属イオンと窒化物イオン(N3-イオン)で構成される化合物群です。地球の大気の約80%を占める窒素と金属の化合物が金属窒化物というわけですが、これまでに知られている窒化物の数は、酸化物の数には及びません。(何故でしょうか。今日は、N2分子やO2分子の結合エネルギーと関係しています、というだけに留めておきます。)
酸化物と比べると窒化物の数は遠く及びませんが、窒化物の持つ性質(特性)は、構成金属の性質を反映した多種多様なものであり、金属窒化物は酸化物よりも多様な機能性を持った化学物質群です。
金属窒化物を合成する方法として、高温の窒素中やアンモニア中、プラズマ状態などの活性な窒素と金属を直接反応させる直接窒化法をはじめとする、種々の方法が提案されています。色々な方法で合成された窒化物の中で、代表的なものを周期表形式で示しました。
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前回に引き続き、今回は「成長の限界」が何を述べているのか、その内容を再確認したいと思います。
まず、タイトルが示している「成長に限界がある」ということ、それ自体はある意味自明のことです。たとえば、世界の人口がどんどん増えて、地球上のすべての生物が人間になってしまう、などという状況はあり得ないわけですから、成長が無限に続くこともあり得ない。もちろん、そんな状態になる心配をするのはずっと未来の話。我々が心配する必要はありません。
本書の主張で重要なのは「成長に限界がある」という指摘ではなく、その限界に今後100年以内に到達する、という点なのです。(21世紀中には、とあるのでこの本の出版年から数えれば正確には128年以内にですが。)100年は確かに長い時間ですが自分自身はともかく、自分の子供や孫、自分に関係ある人間は100年後にもいるはずで、必ずしも自分と無関係とはいえない程度の未来なのです。
では、成長の限界はどのような原因で訪れる、とされているのでしょうか。本書では資源の枯渇、汚染、食糧不足が指摘されています。しかし、どの要因を見ても、予測の不確実性は大きそうです。コンピュータシミュレーションのデータを少し見直したら100年ではなく、200年だった、いや300年かも、といったことにならないのでしょうか。原因が複数あるなら、そのなかでもっとも緊急性の高い原因に対して対策を打ち、他の原因に対してはその後で対応すれば良いのであって、成長そのものが問題だ、というのは筋違いではないかと感じられるかもしれません。
実は本書では、これらの疑問に答える概念が丁寧に説明されています。
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触媒化学研究室の原です。
実験室や大学の規模では所有できない規模の実験施設を利用することによって、研究・開発を飛躍的に展開できることがあります。今回は、世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設を利用した研究例を紹介します。
放射光とは、光とほぼ同じ速度になるまで電子を加速して、その後に電子の進行方向を磁石で曲げた際に発生する強力な電磁波のことです(「放射光」は「放射能」とは異なります)。このような放射光を世界の中でも最高の性能で利用できる施設の一つが兵庫県の山間部に位置する播磨科学公園都市にあります。この施設の名称はSPring-8(スプリング・エイト)です(http://www.spring8.or.jp/ja/)。この名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)の頭文字からできています。SPring-8は、研究者が共同で利用できる実験施設であり、国内外の大学、公的研究機関や企業などによって最先端の研究・開発のために昼夜を問わず利用されています。一周1436 mの円周に沿うように合計で60以上の実験ステーション(ビームライン)が整備されています。ここまで多くのビームラインが設置されている理由は、化学・物理・生物・材料など多種多様な基礎研究から実際に産業界で開発中の商品についての測定まで、行われる実験が多種多様であるためです。それぞれの目的に適した充実した実験設備が各ビームラインに整備されています。
写真は私が自分の研究のために最近よく利用しているビームラインです。
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「The Limits to Growth (成長の限界) 」はサステイナブルな社会づくりについて語られるとき、「Our Common Future」とともに必ず名前の出てくる書物です。1972年の出版で、すでに43年前の書物ですが、この本で述べられている考え方が現在の世界を形成する思想的な支柱の一つとなっている一方で、この本で語られた概念が正しく理解されていない様にも見えます。そこで本書の内容を、私の個人的な記憶を交えながら紹介していきたいと思います。
「成長の限界」、日本語訳はダイヤモンド社から出版されていて正式なタイトルは
ローマ・クラブ「人類の危機」レポート
成長の限界
D.H.メドウズ、D.L.メドウズ、J.ラーンダズ、W.W.アベランズ三世 著
大来佐武郎 監訳
となっています。本書はローマ・クラブという、今で言うシンクタンクの依頼を受けてMITの研究グループが当時最新のコンピュータシミュレーションを駆使して行った研究の報告書です。そのタイトルに「人類の危機」という、当時では(今でも?)きわもの的な言葉が使われていることがとても印象的でした。
では、「人類の危機」とは具体的には何を指しているのでしょうか。序章で著者たちは本書の内容を三つにまとめていますが、その一つ目が「人類の危機」についてです。以下に引用します。
(1)世界人口、工業化、汚染、食料生産、および資源の使用の現在の成長率が不変のまま続くならば、来るべき100年以内に地球上の成長は限界点に到達するであろう。もっとも起こる見込みの強い結末は人口と工業力のかなり突然の、制御不可能な減少であろう。
学者的なストイックな言い回しですが、人口の「かなり突然の、制御不可能な減少」は具体的には多くの人々が寿命を全うすることなく死に至る、という事を意味しています。工業力が失われる、ということは生き残った人々も苦しい生活を余儀なくされる、ということです。
1970年代、核戦争による「人類の危機」というイメージはすでに広く行き渡っていたと思いますが、「成長率が不変のまま続く」という悪意ではなく、むしろ善意で人々が行動することによって「人類の危機」が訪れる、というのです。
この様に書くと「成長の限界」が示したヴィジョンが非常に斬新なものだったように思えるかも知れません。
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前回に引き続き、今回もTOEICの話です。今回は、TOEICでもう50点多く獲得する方法です。私は、TOEICの試験で450点の壁を越えられない学生を多数指導してきました。その経験からのお話です。
まず、1回TOEICを受験してみましょう。そして、その結果を記したスコアシートを眺めてみましょう。スコアシートはリスニングとリーディングの2項目それぞれの得点を示しています。スコアの点の伸び悩む人は、リスニングよりもリーディングの点を取れていないようです。これは、英語力そのものの問題ではなく、2時間にわたる試験のあいだ、英語で考える集中力を維持できないことによります。
2時間の間、1問あたり36秒で回答し続けるTOEICの試験は過酷です。日本語で行われる試験でも2時間の集中をきらさないことは至難です。まして、英語の頭で2時間も集中力を維持するのは、多くの人には困難を感じるものです。試験の終わり近くになると、机に突っ伏した受験生を多く見うけます。したがって、2時間の英語脳での集中を継続できるトレーニングを行うことにより、少なくても50点、人によっては150点程度のスコアの向上を期待できます。
以下にそのようなトレーニング法の一つを紹介します。
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ものを増幅することは、人間にとってとても大切なことです。たとえば、皆さんがもっている百円玉が翌日には200円、翌々日には400円・・・と
増えていったとしたら、これほどうれしいことはありません。科学の世界でも増幅は大変重要な技術です。電気の世界では、微弱な電流の変化をスピーカーから
大きな音として出すために「アンプ」が使われます。物理の世界では弱い光を種として鉄をも焼き切る強力な光を出す技術がレーザーです。生物の世界では一粒
の種から植物が実のり、どんどん食品が増えてゆきます。
では、化学の世界ではどのような技術があるでしょうか?
実は、物質を増幅するというのはとても大変なことで、本当の意味で化学の力でものを増幅する技術はまだありません。あえて言えば「触媒」が化学で分子を増幅する一つの方法です。
みなさんが使っているコンピュータの集積回路はすべて「化学増幅」という技術を使って生産されています。感光性樹脂を使いコンピュータの微細な回路を作る
とき、十分な感度がないと生産するのに時間がかかってしまいます。触媒的に反応を増幅することができれば、短時間で回路素子を生産できるようになります。
この技術を発明したのは、日本人の伊藤洋さんなのです。