揮発性有機溶媒を室温付近で蒸発させる装置〜エバポレーター〜(上野講師)
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今日は、エバポレーターという装置について紹介したいと思います。エバポレーターを一言で表すと、減圧することによって揮発性溶媒を室温付近で蒸発させるための装置です。
この装置は、エバポレーター本体のナスフラスコを回転させる部分、減圧にするためのダイヤフラムポンプ部分、溶媒を回収するための冷却器部分から構成されています。本応用化学科の学生実験室にも右の写真のように4台設置されていて、主に有機化学実験で頻繁に利用されます。
また、私の研究室でも有機合成化学に関する研究を行っていますので、このエバポレーターという装置を所有しています。有機合成化学は、反応後や単離後は、目的の有機化合物が有機溶媒に溶けていることがほとんどなので、有機化学に関する研究をしていれば、有機溶媒を頻繁に蒸発させたい状況があります。
ところで、高校生のみなさんは、「蒸気圧曲線」という言葉を習ったことがあるのではないかと思います。
蒸気圧曲線は、様々な気圧における沸点を表している曲線とも言えます。有機溶媒は一般に気圧が下がれば下がるほど(つまり真空に近づけば近づくほ ど)、沸点が下がることが分かります。この特性を利用することで、大気圧下では沸点が100℃の有機溶媒が、エバポレーターという装置を使って減圧すると20℃程度 の温度で沸騰させることができます。実は多くの有機化合物は加熱すると分解してしまうことがあります。そこで、このエバポレーターという装置を用い、有機化合物を分解させないように、室温付近で有機溶媒を揮発させています。
この装置は高校ではほとんど見かけることはないのではないかと思いますが、大学で有機化学の研究に携わると頻繁に利用することになります。このように、 一見有機化学には関係なさそうな高校で学ぶ化学の内容でも、大学での授業や実験に密接に関わってきます。そのため、高校生の皆さんには、将来勉強したい研 究分野が詳細に決まっているとしても、幅広い知識を身につけて欲しいと思います。
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