金属窒化物~多様な機能性を持つ物質群への期待(高橋教授)
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皆さんは、”金属窒化物”という単語に聞き覚えがありませんか?
そうです。昨年のノーベル物理学賞の立役者である化合物、窒化ガリウム(GaN)は、金属窒化物の仲間です。この他にも様々な窒化物が存在します。今日は、この金属窒化物の紹介をします。
金属窒化物とは、金属イオンと窒化物イオン(N3-イオン)で構成される化合物群です。地球の大気の約80%を占める窒素と金属の化合物が金属窒化物というわけですが、これまでに知られている窒化物の数は、酸化物の数には及びません。(何故でしょうか。今日は、N2分子やO2分子の結合エネルギーと関係しています、というだけに留めておきます。)
酸化物と比べると窒化物の数は遠く及びませんが、窒化物の持つ性質(特性)は、構成金属の性質を反映した多種多様なものであり、金属窒化物は酸化物よりも多様な機能性を持った化学物質群です。
金属窒化物を合成する方法として、高温の窒素中やアンモニア中、プラズマ状態などの活性な窒素と金属を直接反応させる直接窒化法をはじめとする、種々の方法が提案されています。色々な方法で合成された窒化物の中で、代表的なものを周期表形式で示しました。
最初に述べたGaNの同族に窒化アルミニウム(AlN)があります。GaNが発光ダイオード(LED)に用いられていることは、多くの人の知るところとなりましたが、AlNもIC基板材料などの電子材料として活躍しています。AlNの隣の窒化ケイ素(Si3N4)は、ターボチャージャーやベアリングなどの構造材料として用いられています。このほか、窒化チタン(TiN)は金色のコーティング材料、窒化鉄(Fe4N、Fe16N2)は磁性材料と、様々な分野の実用材料として窒化物が用いられています。GaNだけでなく、色々な窒化物も私達の生活を支えていることを知ってもらえたら嬉しいです。
ところで、現在までに幾つくらいの化合物が知られているのでしょうか。米国化学会(American Chemical Society)の情報部門 CAS(Chemical Abstract Service)で収集されている世界中の化学物質の数は、9600万以上になり、日々(刻一刻)追加されています。[http://www.cas.org/]
これまでに知られていない、高い機能性を持つ新規の化合物(化学物質)を創製し、実用化することが私たちの目標の一つです。これは、東京工科大学生の皆さんと一緒に、日々研鑽している課題の一つです。
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