大学院のすすめ-1 「大学院へ行くことのメリット」(片桐教授)
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1. 現代の科学技術の最前線に追いつくため
前世紀後半からの科学技術の進歩は凄まじいものです。自分のプロフェッションとして科学技術の職に就くつもりなら、その最前線を理解するに必要な知的基盤を必要とします。しかし、そのレベルは科学技術の進歩に伴い、どんどんと高度化しています。工学部でもそのような高度な技術を身につけてプロとなるためには、大学の4年間では不十分になってきました。医学部は昔から6年制でした。比較的最近に薬剤師養成の薬学部のコースは6年制になりました。すでに欧米(例えばドイツ)では6年制の工学部も散見されます。まだ今は大学卒でもそれなりにプロの道は開けています。しかし、社会で皆さんの活躍する20年後には、大学院卒でも今の大卒と、大卒は今の高卒と同じように処遇される時代になると思われます。
2.就職に有利
世間では「博士号を取ると就職が難しくなる」とまことしやかに言われています。これは半分本当で、半分嘘です。
確かに、博士号もちに営業まわりをさせたり、電話番をさせたりする会社はないでしょう。博士号をもつ方は、研究や開発に特化した能力を持ちます、少なくとも持っていると見なされます。 そのため、求人数の圧倒的に多い営業や一般事務としての採用の可能性は下がり、そのため、求人絶対数は少なく見えます。
一方、研究職や開発職を 目指す場合には、最低でも修士、できれば博士の学位が要求されます(特にグローバル化の激しい創薬では博士すら最低ラインになりつつあります)。これらの求人数は少ない状況です。しかし、博士号持ち人材の絶対数も少ないので、有効求人倍率は決して低くありません。さらに、博士号持ちの採用は定数を定めにくいため、会社の側も候補者に応じて採用を検討しはじめます。私は博士号を取得してポスドクを2年経験した後に企業へ就職しました。その際、私の採用は、通常の新卒の学生さんのような人事部長決裁ではなく、中途採用扱いの社長決裁だったそうです。
さらに、次回に述べるような理由から、博士号を取得すると、海外での就職も比較的容易になります。国内での可能性は狭まっても、海外に可能性は広がります。そして、海外での採用は、大学のブランドではなく「学位」のレベルとその人の専門と、その個人能力を評価します。
ここで間違ってはいけないのは、大学院は知的な能力を身につけにいくところであり、肩書きを身につけにいくところではないということです。実力を持つことは大前提です。その上で、肩書きも大事だということです。大学院はあくまで実力をつけにいくところであるとご理解ください。
また、最近ネット上では「学歴」ということばを「大学ブランド」と同じ意味で使っているケースを見かけます。しかし、本義の学歴=学位は、大学ブランドとは異なります。就職のとき、特に専門性の低い文系や学部卒での就職活動では、まず大学ブランドにより候補者を選抜するケースはあります。しかし、大学ブランドは実社会においてそれほどの意味を持ちません。実社会は実力こそを評価します。数年前の東洋経済という雑誌に「学歴(この場合は大学ブランドのこと)は負け組の最後の砦」と書かれていました。一番大事なのは、あくまで実力を持つことです。その手段として大学院は有効です。
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