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「ケミカルバイオロジー」という言葉(須磨岡教授)

| 投稿者: tut_staff

6  ケミカルバイオロジー(chemical biology,化学生物学)は,比較的最近になって使われるようになった言葉で,化学と生命科学とが融合した学問・研究領域とされています.似たような言葉に,バイオケミストリー(biochemistry,生化学)がありますが,ケミカルバイオロジーとバイオケミストリーでは何が違うのでしょうか,バイオケミストリーが生命現象を化学構造や化学反応を用いて理解しようとする学問であることに対して,ケミカルバイオロジーは化学的な手法を用いて生命現象を解明する学問とされています.

このケミカルバイオロジーの研究分野のひとつとして,バイオイメージングという研究領域があります.これは,プローブを用いて生きたままの状態で生体分子の機能解析を行い,生命現象を解明しようとする研究領域です.ここで,「プローブ(probe)」という単語が出てきましたが,英和辞典で調べると「探り針」などという意味が出てきます.ケミカルバイオロジーでは,未知の生命現象を探る機能性の小分子のことを指しています.

 具体的なプローブの例を一つあげてみましょう.図に示したのは,バイオイメージングの研究の先駆けのひとつで,2008年のノーベル化学賞の受賞者の1人であるロジャー・チェンらが開発したfura-2という化合物の構造です.

fura-2は,カルシウムイオンと結合する性質があり,結合することによって独特の蛍光の変化を示します.実際にfura-2は,細胞内でのカルシウムイオンの役割の解明に大きく貢献しました.

 その後,様々なバイオイメージングのためのプローブが報告されています.我々の研究室でも,研究テーマ紹介「生命現象を見る指示薬?」(2015.3.13-応用化学科BLOG)で紹介したように,チロシン残基のリン酸化の状態に対応して光る小分子の合成に成功しています.
 バイオイメージング分野に限らずケミカルバイオロジーの研究は,医薬品開発に向けた研究が特に注目されています.しかし,生命現象を理解することは,農薬や食品産業などの様々な領域にも応用が可能です.もちろん,工学部の目指すステイナブル社会の実現への貢献もそのひとつだと考えています.

須磨岡 淳

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