「電気化学的脱合金」~リチウムを利用してナノスケールの構造を作る~(西尾教授)
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近年,「脱合金」による金属微細構造の作製が注目を浴びています.
「脱合金」(dealloying)は,2種類以上の金属が均質に混ざった合金(alloy)を強酸あるいは強塩基の水溶液に浸漬し,卑金属の成分を選択的に溶解除去する手法です.(“dealloying” の “de“ は接頭語で,attach:くっつける / detach:引き離す に代表される様に,「離れる」,「取り除く」などを意味します.) 適切な条件で脱合金を行うと,残された貴金属に無数のナノスケールの孔が形成されます.近年は,こうしてできた金属の多孔質構造を触媒に応用する研究が活発に行われています.
脱合金は,ナノスケールの金属加工を容易に行う優れた手法ですが,均質な合金の調製に手間がかかるほか,濃硝酸,水酸化ナトリウムなどの危険な試薬を使います.私は,純金属を出発材料にしたナノスケールの表面加工に関する研究に注力していますが,研究テーマの1つに,リチウムを使った電気化学的脱合金があります.
リチウムはイオン化傾向が大きく,水溶液中では常にイオンの状態ですが,水を含まない有機溶媒中なら金属に還元させることができます.ところが,金など,特定の金属の表面でリチウムイオンを還元させると,リチウム原子が電極の内部に入り込んで行きます.この操作を,「電気化学的な合金の作製」と言うことができます.その後,電場を酸化方向に反転させると,合金中のリチウム原子がイオンとなって有機溶媒中に戻ります.この過程で,従来の脱合金と同様の多孔質構造が得られましたので,この操作を「電気化学的な脱合金」と言うことができます.
上述の方法で金と白金の多孔質構造を作製した結果を,それぞれ論文で報告してきました.リチウムを用いると,従来の脱合金では作製不可能な卑金属の多孔質構造も原理的には作製可能ですので,更に研究を進めています.
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