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「シアナミド」(高橋教授)

| 投稿者: tut_staff

 大学、企業、様々な研究機関において、有機化学、無機化学、高分子化学、生物学、医薬などそれぞれの分野で、新しい物質が日夜報告されています。

 以前に、世界中の物質を集計しているアメリカ化学会(CAS)のデータベースがあることを紹介しました。そのデータベースによると、7月時点で、1億件以上の物質が登録されています。
 これらの膨大な数の化学物質の中で、毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とし、製造、輸入、販売、取扱いなどが規制されています(毒物及び劇物取締法)。そのようなものを合成しなければ良いではないか、とも言えません。例えば、殺菌作用を有する製品を作るためには劇物、毒物に分類される物質も必要になります。

 今回、シアナミド(H2CN2)という言葉を引用したのは、この物質が毒物及び劇物指定令(*1)に追加されたと、官報(*2)第6557号(平成27年6月19日)で目にしたからです。

Blog1506

*1:毒物及び劇物取締法の規定に基づき、この法律の別表の載っていない毒物や劇物を指定する政令
*2:法律、政令、条約等の公布をはじめとして、国の機関としての諸報告や資料を公表する「国の広報紙」

 どうしてこの名前が気になったのでしょう。それは、私たちの研究で新規に合成した(発見した)化合物に含まれる特性基(CN2)が、このシアナミドに含まれているからです。私たちが合成したのは、化学式Ln2O2CN2(Ln:希土類金属)で表される一連の希土類オキシシアナミド化物です。
 この化合物は、大気中で安定で、特に水に対する安定性は希土類酸化物よりも優れています。また、La2O2CN2にEuやSmなどの希土類金属を添加した化合物は、蛍光物質として応用できる可能性を持っています。

 一連の希土類オキシシアナミド化物は、少なくとも皮膚への影響などの問題も無く、金属シアナミド化物(*3)とは性質を異にする物質群と位置付けられます。とはいえ、同じ特性基を持つ物質が毒物及び劇物指定令の条文の中に記載されたというのは、あまり気持ちのよいものではないですね。

*3:例えばカルシウムシアナミド(石灰窒素)という化合物は、化学肥料や農薬として用いられていますが、皮膚に接触すると有害のおそれがあり、取り扱いには十分な注意が必要です。

高橋 昌男

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