« 2015年7月 | トップページ | 2015年9月 »

2015年8月

2015.08.31

研究室便り:一期生が学会デビューしました(高橋教授)

|

 8月5日から山形市の山形大学小白川キャンパスで開催された第28回DV-Xα研究会において、研究室一期生大平君と小森君が研究成果のポスター発表を行いました。

 研究発表を終えた小森君の感想は、・・・。

 今回、初めて学会に参加し、自分なりにポスター発表する実験については理解を深めたつもりでした。
 ところが、いざポスターの前に立って他大学の先生に説明しようとしても初めは緊張もあり上手く伝えられず、質問に対して適切に答える事ができませんでした。

 その度、一緒に参加した大平くんと内容について議論し合い、どうすれば相手に理解して貰えるかをとことん話しあう始末でした。ポスター発表も終盤に差し掛かった頃、自分が説明を担当していたXPSスペクトルに関連して、『なぜ酸化チタンを使うのか』、『DV-Xα計算してどうするのか』、『今後どういう風に研究を進めるのか』等多くの質問をして頂きました。

 説明に対するさらにつっこんだ質問や、『あーなるほど!面白いね』と関心を持って貰った時の高揚感は言葉に出来ない様な感覚でした。

 しかし他大学の院生のポスター発表を近くで聞いてみると、自分たちにはポスターバックグラウンドの知識も相手に分かりやすく説明する力もまだまだ足りない事を痛感しました。場数を踏んでいるからか、堂々と先生方と話している姿にただ脱帽してしまいました。

 もしまた学会に参加する機会があるならば、院生の様な堂々とした発表まではいかなくても、相手に質問された事には相手にしっかりと納得して貰えるようにしたいと思います。

Mt_blog150817dvxa_2

続きを読む "研究室便り:一期生が学会デビューしました(高橋教授)"続きを読む

2015.08.28

化学結合~原子と原子の繋がりと電子の目線で材料の特性を解明(高橋教授)

|

 

Mt_blog1507

 以前、金属窒化物について紹介しました(その1その2)。

 金属窒化物の中で、TiN(窒化チタン)という化合物は、硬度が高く(モース硬度;9)、工具類や装飾品のコーティング材として用いられています。TiNは、硬いだけでなく金色を呈し、きらびやかな装飾品にはもってこいなのです。

 ですが、TiNという物質は案外熱に弱いのです。600℃以上の高温に曝されると、表面が酸化してTiO2(モース硬度;~6)になってしまいます。そこで私たちは、TiNを別の金属窒化物と組み合わせることで、特性を改善できることを見出してきました。私たちの研究の一端を紹介したいと思います。今回のお話は、私たちが見出した特性改善を原子のレベルで電子の目で見たらどう説明できるか、というものです。

 TiNは、4(4B)族金属の金属窒化物で、岩塩型(NaCl型)の結晶構造をとり、TiとN原子が交互に並んでいます。TiN中のTi原子の一部をAl原子で置き換えた化合物では(置換固溶)、TiNよりも酸化されにくくなりました。また、一連の金属窒化物では、周期表上、右側の金属の金属窒化物の方が熱的な安定性が低下します。

 これらの実験事実を化学結合の立場から明らかにするために、DV-Xα法という量子化学計算を行いました。

続きを読む "化学結合~原子と原子の繋がりと電子の目線で材料の特性を解明(高橋教授)"続きを読む

2015.08.27

書評 広瀬弘忠「人はなぜ逃げおくれるのか」集英社新書 2004, ダン・ガードナー「リスクにあなたは騙される 「恐怖」を操る論理」早川書房 2009 (片桐教授)

|

Photo_3

 人間の心理バイアスのうち、恒常性(正常性)バイアスを取り扱う書籍2冊を紹介します。

 東日本大震災の「大川小学校の悲劇」をごぞんじでしょうか。川を遡上してきた津波により、小学生が多く飲み込まれてしまった悲劇です。この悲劇では逃げ遅れた、避難までに無駄に時間を費やした、適切な避難場所を選択できなかった、など人災的側面を多くもちます。その関係者の証言も二転三転し、震災直後の報道と、後日の報道では亡くなった教頭先生の言動がまるで逆にななったりしており、真実は薮の中に隠されている状況になっています。

 さて、当初の報道では、裏山へ逃げることを主張した教頭先生に対して、他の教員や地域住民は「ここまで津波はこない」と主張し、意見の対立が起こり、時間を無駄にしたことが大きな原因ではないかと思われます。この「ここまで津波はこない」という主張の根拠は何だったのか、これがまさに「恒常性(正常性)バイアス」のなせる技です。

 広瀬さんの「人はなぜ逃げおくれるのか」はパニックを抑えるこの恒常性バイアスのデメリットに焦点を当て、どのように危険事象に対応すべきかについて議論しています。

続きを読む "書評 広瀬弘忠「人はなぜ逃げおくれるのか」集英社新書 2004, ダン・ガードナー「リスクにあなたは騙される 「恐怖」を操る論理」早川書房 2009 (片桐教授)"続きを読む

2015.08.26

WACE世界大会からの報告(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプセンター長の笹岡(コーオプ教育担当)です。

 今日はコーオプ教育に関する世界的な会議に出席した報告です。

 コーオプ教育に関する世界的組織としてWACE(World Conference on Cooperative & Work-Integrated Education:世界産学連携教育協会)というのがありますが、8月19日~21日までの3日間京都産業大学において、その世界大会【URL: http://www.kyoto-su.ac.jp/path/wace/overview/index.html】が開催され、私も初日だけですが出席してきました。

 最初の基調講演では、「企業が求める人材と大学教育への期待」ということで山本忠人氏(富士ゼロックス株式会社 代表取締役会長)が講演されました。講演では、同社でも入社3年以内にミスマッチにより退職する社員が約3割いるが、なんと一人当たり約2500万円程度の教育費の損失とのこと、また、最近、企業で必要とされる能力は、チームワーク、誠実さ、課題解決力とのことでした。人材育成では、VFP(Visiting Fellowship Program)を紹介し、海外からも有給のインターンシップを受入れており、当初は中国を想定していたが最近はシンガポール、インドにも拡大しているとのことでした。また、インターンシップを通じて採用した社員の離職率は低い上、パフォーマンスも高いと言えるとのことであった。これらのことから、同社のコーオプ教育に寄せる期待の高さが伺われました。さらに興味深かったのは、同社に来たインターンシップの学生にアンケートしたところ、当然仕事に関する理解が深まったことが1位でしたが、2位が「自分に必要な能力が分かった」(23%)ことと、即ち「気付き」を得たことを上げていたとのことでした。学生は意外と自分の能力を客観的に確認したいのかもしれません。

 次に、分科会で「インターンシップ中のソーシャルネットワークの活用@ミシガン大学」に関する議論に参加しましたが、インターンシップ中の学生のパフォーマンスには、企業からのスーパーバイザーに加え、大学によるメンターによる学生のフォローが極めて重要であるとの報告がありました。具体的なメンターの役割について質問したところ、学生の生活面の相談役で、企業側の方に直接言いにくいことが相談できるなどとの説明でしたので、本学でも同じ会社でコーオプ実習を受け入た先輩が後輩のメンターになることも検討できるのではないかと思いました。

続きを読む "WACE世界大会からの報告(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.25

書評:永山嘉昭、田宮拓、黒田聡、矢野りん「説得できる文章表現200の鉄則(第4版)」日経BP社2009年刊 (片桐教授)

|

永山嘉昭、田宮拓、黒田聡、矢野りん「説得できる文章表現200の鉄則(第4版)」日経BP社2009年刊

Photo

 日本語を(日本語を用いて)正しく書くことは難しい。その手助けになる本です。

 手紙など書くとき、時候の挨拶は難しい、夏がやっと本格的になった頃には「残暑厳しいおり、皆様には…」と書き出すビジネス文章は「なにか違うぞ」と思いつつも、まあ慣習だからとそれに従う。

 でも、そのように書かれた文章は回りくどく、読みづらい。それでも、手書きの手紙が主流の時代であれば、出入りする手紙の本数もそれほどではなく、そのような雅(みやび)な対応も可能であった。

 近年の電子メールの発達により、手元に送られてくる情報の量は莫大なものになった。片桐個人の手元に送られてくる電子メールは、一日あたり50件である。保存しなければならない重要なメールだけでも1ヶ月に500件を下らない。
 このような情報を受け取り、処理するときに雅な時候の挨拶は邪魔にしかならない。同様に、企業へのエントリーでも、1人の募集枠に100通の応募がなされる。100人採用する企業では、人事担当者の元に1万通のエントリーのメールが送られてくる。そのような時代に、これまでの手紙のお作法は通用しない。

続きを読む "書評:永山嘉昭、田宮拓、黒田聡、矢野りん「説得できる文章表現200の鉄則(第4版)」日経BP社2009年刊 (片桐教授)"続きを読む

2015.08.24

混成軌道(山下教授)

|

 原子は原子核(陽子と中性子)と電子から成ることはご存知でしょう。原子核の陽子が一つ増えるごとにその元素の化学的性質も変化するため、似たような性質をもつ原子を周期的にならべたものが周期表です。原子核の周りにある電子は不連続なエネルギーを持つ軌道に存在し、最外殻の軌道にある電子が2個、8個、18個のときに原子は最も安定になります。オクテット則と呼ばれる法則です。

 しかし、周期表にある元素は全てがその条件を満たしているわけではありませんので、2つの原子間で電子を共有することによってオクテット則を満たし安定に存在することになります。このとき、2つの原子間で電子を共有している状態が即ち、原子どうしの結合なのです。

201510

続きを読む "混成軌道(山下教授)"続きを読む

2015.08.21

コーオプ実習(トライアル)の事前学習の様子(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプセンター長の笹岡(コーオプ教育担当)です。

 本日は今夏にトライアル(試行)でコーオプ実習に行くコンピュータサイエンス学部及びメディア学部の学生、約20名に対して行った事前学習のことについて非常に興味深かったので、その全ては無理ですがその一部を書かせて頂きます。

 まず最初に、講師の方が学生に12秒間与えて周りの出来るだけ多くの人と握手してくださいと指示しました。1回目は皆さん5~8人の方と握手できたようでした。次に前回よりも多くの人と握手するとの明確な目標を与えて同じことを行いました。一人を除いて全員が前回よりも多くの人と握手できました。これから分かることは非常に明快で「明確な目標を持ちそれを意識して行動すれば、目標が無い時よりもパフォーマンスは上がる」ということです。だから、今夏のコーオプ実習でも全ての学生に一定の目標を持たせるようにしましたし、本番では言わずもがなです。

 次に興味深かったことはコミュニケーション部分、特に「言葉よりも非言語のコミュニケーションが基礎として大事である」ということでした。

続きを読む "コーオプ実習(トライアル)の事前学習の様子(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.20

大川小学校の悲劇から学ぶ事故原因の解明の阻害要因(片桐教授)

|

 東日本大震災の「大川小学校の悲劇」をごぞんじでしょうか。川を遡上してきた津波により、小学生が多く飲み込まれてしまった悲劇です。この悲劇は避難までに無駄に時間を費やした、適切な避難場所を選択できなかった、など人災的側面を多くもち、現在もその責任の所在を巡って裁判などが行われています。

 この事故の新聞報道では、その関係者の証言が二転三転しています。震災直後の報道では

『複数の児童が、避難場所をめぐって教頭が地域の人と話し合っている場面を証言。「(裏)山に逃げた方がいい」と話す教頭に対し、地域の人は「ここまで(津波)は来るはずがない」「三角地帯に行こう」と言っていたという。 一方、別の教員から「(山は)危ないから駄目なんだ」と言われた児童もおり、教員間でも避難場所について意見は一致していなかった…』(山陽新聞2011.8.24)。

あるいは、

『5、6年生の男子たちが、「山さ上ろう」と先生に訴えていた。当時6年生の佐藤雄樹君と今野大輔君は「いつも、俺たち、(裏山へ)上がってっから」「地割れが起きる」「俺たちここへいたら死ぬべや」「先生なのに、なんでわからないんだ」とくってかかっていたという。 
2人も一旦校庭から裏山に駆けだしたが、戻れと言われて、校庭に引き返している。 (中略) 教諭たちの間では、裏山に逃げるべきか、校庭にとどまるべきかで議論をしていた。市教委の報告書には<教頭は「山に上がらせてくれ」といったが、釜谷(地区の)区長さんは「ここまで来るはずがないから、三角地帯へ行こう」といって、けんかみたいにもめていた>と記されている』(週刊ダイアモンド2011.11.3)

でした。しかし、生存した唯一の教諭の手紙によると

『あの日、校庭に避難してから津波が来るまで、どんな話し合いがあったか、正直わたしにはよく分からないのです。そのなかで断片的に思い出せることをお話しします。 (中略) 校庭に戻り「どうしますか。山へ逃げますか」と(教頭らに)聞くと、この揺れの中では駄目だというような答えが返ってきました。』(毎日新聞2012.1.22)

と、現場の指揮官であった教頭の発言がまるで逆になっています。

 なぜ、このような食い違いが生じたのか。これはこれらの証言内容が事故の人災的側面の「責任の所在」に関わるためではないかと思われます。

続きを読む "大川小学校の悲劇から学ぶ事故原因の解明の阻害要因(片桐教授)"続きを読む

2015.08.19

コーオプ実習のための教養講座4「IOT」(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。 本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 私は専門に情報セキュリティが含まれていることもあり、毎年5月にビックサイト(お台場)で開催される「JAPAN IT Week」のセキュリティEXPOに行っています。その際、いつも講演を聴くとことにしているのですが、今年は時間が合わず、情報セキュリティではなくIoT(Internet of Things)の話を聴きました。インテル社副社長のジョナサン・バロン氏の話でしたが、会場は立ち見もでる大盛況でした。おそらく、今話題のホットなテーマだったのだと思いますし、私も聴いていてなるほどなぁと思いましたので是非ご紹介したいと思います。

続きを読む "コーオプ実習のための教養講座4「IOT」(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.18

ある国際シンポジウムに参加してきました(森本講師)

|

Photo

 7月の初め、「Supramolecular Chemistry...and beyond !! International Symposium Celebrating 50 Years Labo Lehn」と題された国際シンポジウムが、フランス・アルザス地方の都市ストラスブールで開催され、これに参加してきました。
 タイトルの最後「Labo Lehn」とは、1987年ノーベル化学賞を受賞したJean-Marie Lehn(ジャン-マリー・レーン, 1939年-)教授の研究室を指しています(私は2005年に訪問研究生として在籍していました)。そして、今回のシンポジウムは研究室創設50周年を記念したシンポジウムでした。

 ここで驚くことが二点。一つは、研究室が50年(1965年-)も続いている点。日本の大学だと60代で退官するのが普通なので、どんなに早く研究室を立ち上げたとしても、研究室創設40周年を迎えることさえ稀です。Lehn教授は20代半ばから現在まで研究室を主宰し、今なお第一線で活躍され、海外を飛び回っておられます。

続きを読む "ある国際シンポジウムに参加してきました(森本講師)"続きを読む

2015.08.17

デフォルト問題とグローバル教育(山下教授)

|

 ある日の学生の会話です。

「最近テレビでギリシャのデフォルト問題が報じられているけど、デフォルトってどういう意味なの?」

「債務不履行って言ってるね。ユーロを借り入れたものの杜撰な国家予算のため返済ができなくなったんだ。」

「そうなんだ。でもデフォルトって初期設定っていう意味じゃないの?」

「そうだね。つまりお金を借りても返さないってことが初期設定なんだ。返すのはオプションで、基本、返さなくっていいってことじゃね?」

「そうだよね。よかった。」(お互い納得)

・・・・って、違います。

 デフォルトは古期フランス語に語源がありde+fault 、本来やるべきことをやらないという意味です。スポーツなら試合を棄権すること、金融では返すべき借金を返さないという意味です。
 コンピュータの世界では本来はダイアログにユーザーの選択肢を入れないといけないのに、それをしなかったという意味で、その場合コンピュータはあらかじめ設定された選択肢になるので、意味が転じて初期値のように解釈されているわけです。
 なぜマスコミが急に債務不履行と言わずデフォルトというカタカナを使いだしたのか不思議に思いますが、きっと同じようなやりとりがあって、デフォルトの意味を知ってうれしくなったので使ってみたくなったのかなあと想像しています。

化学の世界でも似たようなことがあります。

20159

続きを読む "デフォルト問題とグローバル教育(山下教授)"続きを読む

2015.08.14

コーオプ実習のための教養講座3「コーポレートガバナンスコード」(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。 本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプセンター長の笹岡(コーオプ教育担当)です。

 皆さん、最近ニュースで東芝の不正会計処理問題が大きく取り上げられていますが、どのように感じられていますか?新聞では内部統制がなってなかった、経営者の行き過ぎた利益至上主義などと報じられています。東芝は日本を代表する企業ですし、経団連のトップも出す名門ですがこのような事件を起こし、同社だけでなく日本の企業自体のコーポレートガバナンスに対し世界中から疑いの目が向けられるようになったような気がして私としても残念でなりません。折しも、今年の6月から日本証券取引所(JPX)が全ての上場企業を対象に「コーポレートガバナンスコード」を策定・導入したばかりでしたのでなおさらでした。ところで、皆さん、「コーポレートガバナンスコード」って、ご存じだったでしょうか。丁度良い機会ですのでちょっと解説しましょう。

続きを読む "コーオプ実習のための教養講座3「コーポレートガバナンスコード」(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.13

理系の日本語:「が」の使用をやめると、文章から曖昧さを排除できる。(片桐教授)

|

 私は前職、「技術表現法」という講義を受け持っていた。最近の日本語で書かれたレポートの質の低下に急遽2013年から開講された講義であった。日本語教育、特に理系の日本語教育はどこの大学でも大きな課題になっている。また、それ以前、1995年から化学英語という講義も担当した。以下は、これらの経験を元にした「意見」である。

15

 日本語は英語などの西洋言語と異なる。結論から言えば、英語は「事実」を述べるのに適した言語であり、日本語は「意見」を述べるのに適した言語である、と私個人は思っている。例えば、道端の穴によそ見をして落ちそうな人を見つけたとき、日本語では「危ない!」と自分の意見をもって注意を促し、英語では「Watch out!」と具体的に取るべき行動を指示する。英語では、主語の明示や時制などにより、事実と意見は完全に区別される。一方、日本では主語を必ずしも明示しないために、自分の意見をあたかも事実であるかのように記述できると思われる。

 中学校高等学校の英文法というと、単語の正しい並べ方を教育する。そのような英文法の試験問題は正解をもつ。これは、英語は「ルールさえ守れば万人に使うことのできる言語である」ことを示している。そして、単語を少し聞き落としても、そのルールの縛りは聞き取れなかった部分の補完を容易にする。このような「言語としての易しさ」ゆえに、英語は国際語としての地位を獲得した。一方、日本語は,それに比べて「主語は誰か」などの暗黙の了解事項を多くもつために、必ずしも万人向けとは言えない。

 なぜ、このような違いを生じたのかについては諸説ある。

続きを読む "理系の日本語:「が」の使用をやめると、文章から曖昧さを排除できる。(片桐教授)"続きを読む

2015.08.12

コーオプ実習のための教養講座2「製造業の国際展開」(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。 本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプセンター長の笹岡(コーオプ教育担当)です。

 コーオプ実習で肝になるのが、コミュニケーション力=雑談力という話を前々回のブログで行い、それではということで、社長が常日頃頭の中で考えていると思われること、即ち製造業の現状と将来について具体的な統計データを織り交ぜながら解説しました。

 さて、新しくできた工学部の3つの特色をご存知でしょうか?①サステイナブル工学、②コーオプ教育、③世界に通用するエンジニア(グローバル化への対応)です。①②はこれまでの私のブログでも触れましたが、③についてはまだでしたので、今回は製造業のグローバル化、特に最近の国内回帰傾向などについてちょっと解説してみたいと思います。

 経済産業省が2014年末に実施したアンケート結果(上場している製造業740社対象)によると、そのうち約7割の企業は、海外拠点への移転の決定要因として、海外市場の拡大を挙げています。つまり、マーケットの近くで生産した方が有利と考えたということでしょうか、当然と言えば当然です。

続きを読む "コーオプ実習のための教養講座2「製造業の国際展開」(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.11

学生実験を見てみよう【番外編】(須磨岡教授)

|

Photo

 学生実験を紹介するシリーズ,今回は番外編です.

 近年,実験ノートが話題になりましたが,学生実験でも実験ノートに結果を記録することは必須です.また,実験ノートの記録に基づいて実験レポートを作成しなくてはいけません.レポートでは,実験の目的や原理,実験方法,結果をまとめるだけでなく,得られた結果から考察を行なうことも必要です.手を動かす実験(作業)とレポート作成がひとつのセットとなって学生実験は構成されています.

 写真は,応用化学科90名の学生が1回の実験で提出したレポートの山です.かなりの厚さがあることが分かると思います.学生実験は毎週実施されるので.学生の皆さんは約1週間でレポートを完成させる必要があり,かなり苦労しているようです.実は,学生さん達だけではなく,これを採点する教員側もとても大変な作業だったりするのですが・・・

続きを読む "学生実験を見てみよう【番外編】(須磨岡教授)"続きを読む

2015.08.10

恐怖の化学物質(山下教授)

|

Photo

 先日の化学基礎演習の問題の中に、気体の密度からその分子量を求める問題がありました。計算した結果、分子量は140となり、黒板の前でその問題を解答した学生に「ちなみにその物質は何だと思いますか」と尋ねたところ「サリンです」との返事がありました。

・・・・
正解です!

サリンは,CH3P(O)FOCH(CH3)2 (分子量140.09)という構造をもつ化合物で神経ガスとして知られています。

続きを読む "恐怖の化学物質(山下教授)"続きを読む

2015.08.07

コーオプ演習Ⅰにむけた教養講座「サステイナブル工学」(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。 本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプセンター長の笹岡(コーオプ教育担当)です。
 先日、工学部1年生のフレッシャーズゼミのポスター発表を見てきました。これは、4~5人のグループが工学部の各研究室を回り、研究内容をヒアリングして1枚のポスターにまとめるというものでした。会場一杯に数十のポスターが置いてあり、私も面白そうなポスターがないか見て回りました。工学部はサステイナブル工学に力を入れていますので、当然それに関わるポスターも目に入りましたが、その中で私の目についたのは「電気自動車は地球温暖化防止のためになる」という行でした。その学生は何の疑問もなく、ガソリン自動車と電気自動車を比較して書いたようですが、私は米国で環境科学も勉強したことがあって、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の考え方から「電気が何で発電されたかで変わるかもしれないよ」とそのポスター担当の学生に言いました。

続きを読む "コーオプ演習Ⅰにむけた教養講座「サステイナブル工学」(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.06

工科女子の撮影(西尾教授)

|

 東京工科大学では,学内で活躍している女子学生を中心に紹介した「工科女子」のサイトを作っています.

 現在はコンピュータサイエンス学部,メディア学部,応用生物学部の3人の女子学生を紹介していますが,今年度新設された工学部の女子学生も工科女子に加わる事になりました.

Photo

続きを読む "工科女子の撮影(西尾教授)"続きを読む

2015.08.05

コーオプ実習のための教養講座1(笹岡コーオプセンター長)

|

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプ実習の胆(きも)はコミュニケーション能力です。そこで意外と大事なのが雑談力です。雑談力とは?と思うかもしれませんが、実は誰とでも雑談できるってすごいことなんですよ。それができる人は、多分敵を作ることがありませんし、そういう人は自分を中心にネットワークができ、自然に色々役に立つ情報も入ってきます。ただ、だれとでも雑談できるためには何が必要でしょうか?当たり前のことなのですが、一言でいえば『幅広い教養』ということに尽きます。関心は人それぞれ、それに合わせて話題についていけるかということになります。その意味で教養課程で取る人文社会系の科目も大事です。

 コーオプ実習の場合も職場ですから、周りは目上の方ばかりと思われます。彼らは職場で日頃どんな話題で雑談しているでしょうか?普通は、新聞やニュースなどの時事ネタ(男性はスポーツもありかも・・・)が多いです。彼らの会話に自然に入っていければ、又は自分なりの持論を言えれば、コーオプ実習は大変有意義になります。

 そこで、今後のブログでは、順次、実習時に使えそうな教養的なお話を皆さんに紹介したいと思います。今回は、工学部に関係が深い製造業のことを話します。

続きを読む "コーオプ実習のための教養講座1(笹岡コーオプセンター長)"続きを読む

2015.08.04

八王子みなみ野・八王子について(森本講師)

|

 今回は大学・応用化学科や研究・学習に関する話題から少し離れたトピックを。 

 本学からはJR中央線・八王子駅とJR横浜線・八王子みなみ野駅にスクールバスが出ています。八王子駅からは、大学まで歩くのは無理!というくらいの距離があるのですが、八王子みなみ野駅からは徒歩で15-20分もあれば到着できます。しかし、大学は丘(山?)の上にあるので、足腰に不安のある人向けに、そして、夏のこの時期は汗っかきにはとても耐えられない坂道なので、バスが往復してくれているのだと勝手に思っています。

 そんな立地の本学がある八王子・八王子みなみ野エリアですが、個人的にはとても住みやすい地域だと思っています。

Photo

続きを読む "八王子みなみ野・八王子について(森本講師)"続きを読む

2015.08.03

科学とギリシャ文字(山下教授)

|

科学の法則を表す数式にはギリシャ文字がよく現れます。

2015

 しかし、ギリシャ語の講義があるわけでもなく、きちんとギリシャ文字を習った経験のある方は少ないのではないでしょうか?学会等でもギリシャ文字の読み方がいい加減な例も見られます。この際、一度まとめてみましょう。
 Αα アルファ 、Ββ ベータ  、Γγ ガンマ 、Δδ デルタ  、Εε エプシロン 、Ζζ ゼータ 、Ηη イータ 、Θθ シータ  、Ιι イオタ 、Κκ カッパ 、Λλ ラムダ 、Μμ ミュー、 Νν ニュー、Ξξ クシー、Οο オミクロン、 Ππ パイ、Ρρ ロー、 Σσシグマ、 Ττ タウ、 Υυ ユプシロン、Φφ ファイ、 Χχ カイ 、Ψψ プサイ 、Ωω オメガ

 

続きを読む "科学とギリシャ文字(山下教授)"続きを読む

« 2015年7月 | トップページ | 2015年9月 »