« 理系の日本語:「が」の使用をやめると、文章から曖昧さを排除できる。(片桐教授) | トップページ | デフォルト問題とグローバル教育(山下教授) »

コーオプ実習のための教養講座3「コーポレートガバナンスコード」(笹岡コーオプセンター長)

| 投稿者: tut_staff

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。 本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプセンター長の笹岡(コーオプ教育担当)です。

 皆さん、最近ニュースで東芝の不正会計処理問題が大きく取り上げられていますが、どのように感じられていますか?新聞では内部統制がなってなかった、経営者の行き過ぎた利益至上主義などと報じられています。東芝は日本を代表する企業ですし、経団連のトップも出す名門ですがこのような事件を起こし、同社だけでなく日本の企業自体のコーポレートガバナンスに対し世界中から疑いの目が向けられるようになったような気がして私としても残念でなりません。折しも、今年の6月から日本証券取引所(JPX)が全ての上場企業を対象に「コーポレートガバナンスコード」を策定・導入したばかりでしたのでなおさらでした。ところで、皆さん、「コーポレートガバナンスコード」って、ご存じだったでしょうか。丁度良い機会ですのでちょっと解説しましょう。
 「コーポレートガバナンスコード」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みです。これに照らせば、東芝の経営陣が行った今回の不正会計処理は、株価を大きく下げて株主は損失を蒙りましたし、「透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」とはほど遠いものだったといえます。

 もう少しこれを掘り下げてみますと、同コードは以下の五原則から成っています。

1.株主の権利・平等性の確保
 ここでは大株主やプロの機関投資家だけでなく、少数株主(個人株主)や外国人株主についても十分に配慮を行うべきことも書かれています。

2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
 株主以外のステークホルダーとは、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会のことです。また、その中ではさらに、上場会社は社会・環境問題をはじめとするサステナビリティー(持続可能性)を巡る課題について、適切な対応を行うべきであることも定められています。これは、もちろん、今後ますますサステイナブル工学は重要になるということですね。

3.適切な情報開示と透明性の確保
 上場企業は、1)会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、2)経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について法令に基づく開示を適切に行わなければなりませんが、東芝の今回の問題はこの基本原則に反したことになります。

4.取締役会等の責務
 特に重要なのは、独立社外取締役です。少なくとも独立社外取締役2名以上が選任され,業務執行とは一定の距離を置き,独立した客観的な立場から経営陣に対し実効性の高い監督(モニタリング)を行う役割・責務を果たすべきであるとの原則が提示されています。彼らはには、今回の東芝の事案のように生え抜きの経営陣が暴走するのを抑える役割が期待されます。

5.株主との対話
 これにより、最近、上場企業は資本を如何に効率的に活用して利益を稼いでいるかを示す指標である自己資本利益率(企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合:ROE)を8%以上にするとか、株主優待制度を設ける企業が増えてきました。これからの企業経営は株主、とりわけ株価を意識せざるを得なくなっています。

 コーポレートガバナンスコードとサステイナブル工学が繋がっているとは意外だったのではないでしょうか。コーオプ実習では、期間も2か月と限定されてますし、実習中にコーポレートガバナンスコードを意識するようなことは無いかもしれませんが、サステイナブル工学の重要性は同コードの五原則の一つ【2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働】で明確に謳われていますので、工学部で学んだことは今後皆さんが就職した先において必ず役に立つことでしょう。その意味でコーポレートガバナンスコードの導入は、サステイナブル工学を学ぶ工学部の学生にはとても追い風ではないかと私には思えますが、如何でしょうか?

笹岡 賢二郎

« 理系の日本語:「が」の使用をやめると、文章から曖昧さを排除できる。(片桐教授) | トップページ | デフォルト問題とグローバル教育(山下教授) »

コーオプ教育」カテゴリの記事