科学とギリシャ文字(山下教授)
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科学の法則を表す数式にはギリシャ文字がよく現れます。
しかし、ギリシャ語の講義があるわけでもなく、きちんとギリシャ文字を習った経験のある方は少ないのではないでしょうか?学会等でもギリシャ文字の読み方がいい加減な例も見られます。この際、一度まとめてみましょう。
Αα アルファ 、Ββ ベータ 、Γγ ガンマ 、Δδ デルタ 、Εε エプシロン 、Ζζ ゼータ 、Ηη イータ 、Θθ シータ 、Ιι イオタ 、Κκ カッパ 、Λλ ラムダ 、Μμ ミュー、 Νν ニュー、Ξξ クシー、Οο オミクロン、 Ππ パイ、Ρρ ロー、 Σσシグマ、 Ττ タウ、 Υυ ユプシロン、Φφ ファイ、 Χχ カイ 、Ψψ プサイ 、Ωω オメガ
α、β、γは放射線の表記でも使われます。α線は高速ヘリウム原子核、β線は電子線、γ線は電磁波です。光が透過しない物質も反応させることができるため放射線を利用した材料開発や医療用の応用が図られています。
Δは物理量の変化やその差分を表すときによく使われます。たとえば反応系の自由エネルギーをG1、生成系の自由エネルギーをG2とするとΔG=G2-G1といった具合です。
εはモル吸光係数として使われます。材料が単位長さあたり、単位濃度あたりに光をどのくらい吸収するかを表します。
ζは、電気化学でコロイドなどの電気二重層の電位を表す際に用いられます。また、ηは溶液の粘度を表します。
θは高分子物理において使われます。高分子を溶媒に溶かしたとき、高分子鎖と溶媒分子の相互作用が高分子鎖の分子どうしの相互作用よりおおきければ高分子鎖の間にどんどん溶媒分子が入ってきて、結果として高分子鎖が膨らんでしまいます。逆に高分子鎖どうしの相互作用のほうが強ければ溶媒分子は追い出され、高分子鎖は縮こまってしまいます。両者がちょうどつり合った状態をθ状態といいます。
光化学では、κは波数ベクトル、λは波長、νは振動数、ωは角周波数として用いられます。μは長さの単位としての他、化学ポテンシャルを表す際によく用いられます。
分子の軌道にはσ結合とπ結合があります。σ結合はs軌道やp軌道が重なり、結合線上に電子が局在化する結合で、π結合は隣り合ったp軌道どうしが重なり、結合線の上下に電子雲が広がるものです。
ρは密度、τは寿命、φは光化学反応の量子収率、χやΨは電子の軌道としてもちいられます。
℩は昔のランボルギーニのコード番号としてあったような気がしますが・・・。
もちろん、これ以外にもさまざまな物理量の表記にギリシャ文字が使われていますし、式の誘導の過程でギリシャ文字を使って変数を定義することも稀ではありません。皆さんも化学を学ぶ過程で少なからずギリシャ文字に出会います。ちょっと練習すれば正しく、美しく書くことができますので、正しくギリシャ文字を読み書きできるようにしておきましょう。
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