ある国際シンポジウムに参加してきました(森本講師)
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7月の初め、「Supramolecular Chemistry...and beyond !! International Symposium Celebrating 50 Years Labo Lehn」と題された国際シンポジウムが、フランス・アルザス地方の都市ストラスブールで開催され、これに参加してきました。
タイトルの最後「Labo Lehn」とは、1987年ノーベル化学賞を受賞したJean-Marie Lehn(ジャン-マリー・レーン, 1939年-)教授の研究室を指しています(私は2005年に訪問研究生として在籍していました)。そして、今回のシンポジウムは研究室創設50周年を記念したシンポジウムでした。
ここで驚くことが二点。一つは、研究室が50年(1965年-)も続いている点。日本の大学だと60代で退官するのが普通なので、どんなに早く研究室を立ち上げたとしても、研究室創設40周年を迎えることさえ稀です。Lehn教授は20代半ばから現在まで研究室を主宰し、今なお第一線で活躍され、海外を飛び回っておられます。
二つ目は研究室を立ち上げてから22年でノーベル化学賞を受賞されている点。1987年同時受賞のペダーセン氏(クラウンエーテルの合成と機能解明で有名)、クラム博士(Cram則で有名)がそれぞれ1904年、1919年生まれなので、いかに若くして受賞されたかがわかります。
今回のシンポジウムは、Lehn教授による2時間にわたる講演で始まりました。50年間の研究内容を概観し、ノーベル化学賞の受賞理由でもあるクリプタンドの話はもちろん、いわゆる超分子化学に関わってきた歴史が語られました。その他にも、私の研究対象でもある二酸化炭素還元光触媒(実はこの手の光触媒もLehn教授らによって初めて報告されました)、多座配位子を巧みに用いた多核金属錯体や超分子ポリマーの話がありましたが、とても2時間では語り尽くせないご様子でした。また、Woodward-Hoffmann則で有名なホフマン教授(1981年ノーベル化学賞)やレーザー冷却法で有名なコーエン-タヌージ教授(1997年ノーベル物理学賞)による講演もあり、講演者の名前だけでも圧倒されるシンポジウムでした。
今回のシンポジウムでは、大学の教科書に当たり前のように載っている化合物・法則・事象も、ある一人の、あるグループの地道な研究から生まれてくるものなのだな、と改めて認識させられました。今化学の研究者を目指している皆さんが将来行う研究が、ひょっとすると10年、50年、100年先の教科書に載って、世界中の化学者が常識として学ぶ知識になっているかもしれません!そう考えると、研究者もすごく夢のある職業だなと思いませんか?
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