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コーオプ実習のための教養講座1(笹岡コーオプセンター長)

| 投稿者: tut_staff

(本学工学部の特徴、就業力を高める本格的なコーオプ教育について笹岡コーオプセンター長が直接紹介するブログ記事です。本記事は工学部電気電子工学科BLOGにも掲載されます。)

 コーオプ実習の胆(きも)はコミュニケーション能力です。そこで意外と大事なのが雑談力です。雑談力とは?と思うかもしれませんが、実は誰とでも雑談できるってすごいことなんですよ。それができる人は、多分敵を作ることがありませんし、そういう人は自分を中心にネットワークができ、自然に色々役に立つ情報も入ってきます。ただ、だれとでも雑談できるためには何が必要でしょうか?当たり前のことなのですが、一言でいえば『幅広い教養』ということに尽きます。関心は人それぞれ、それに合わせて話題についていけるかということになります。その意味で教養課程で取る人文社会系の科目も大事です。

 コーオプ実習の場合も職場ですから、周りは目上の方ばかりと思われます。彼らは職場で日頃どんな話題で雑談しているでしょうか?普通は、新聞やニュースなどの時事ネタ(男性はスポーツもありかも・・・)が多いです。彼らの会話に自然に入っていければ、又は自分なりの持論を言えれば、コーオプ実習は大変有意義になります。

 そこで、今後のブログでは、順次、実習時に使えそうな教養的なお話を皆さんに紹介したいと思います。今回は、工学部に関係が深い製造業のことを話します。
 まず、製造業の日本経済における位置付けですが、GDP(国内総生産)に占める割合は約2割です。その割合は、今ではサービス業よりも少し低くなりましたが、 他産業への波及効果が高く(製造業が潤えば他の産業も潤う度合いが大きい)、国内生産額(売上に相当)に占める割合は3割(サービス業は24%)を超えています。また、日本の製造業のGDP比率(約2割)は、米国、英国、フランス(約1割強)よりも高いものの、中国、韓国(約3割程度)やドイツ(約2割強)より低いというのが現状です。このように日本は欧米諸国と同様先進国ですが、ドイツと並び「ものづくり志向の強い国」と言えます。これは皆さんにはちょっと驚きかもしれません。ある意味、日本は先進国の中では、工学部の学生が就職し易い国とも考えられます。

 また、最近の製造業の景気(即ち、企業収益や設備投資の動向)ですが、政府がものづくり企業を応援していることもあって改善傾向にあるようです。例えば、東証一部上場企業〈製造業〉の2014年度通期収益見通しによれば、55.5%が増収増益です。さらに、名目設備投資額は、リーマンショック(2008年10月)により78.4兆円⇒59.9兆円【▲18.5兆円】と一時的に急減しましたが、2013年度には68.2兆円まで、2014年10-12月期は、年率換算で68.9兆円まで回復してきました。2014年の政府の成長戦略においても、「3年間でリーマンショック前の投資水準を回復」することを目標に掲げましたが、この調子でいけば容易に達成しそうですね。ということで、もし皆さんが今年卒業していれば、さぞ製造業に就職し易かったことでしょう。

 さて、皆さんが就職活動に入る3年後はどうでしょうか?実は意外と為替レート(円安か、円高か)がキーになるかもしれません。というのも最近、製造業は、円安(80円/$前後⇒120円/$程度)のおかげか、生産の海外展開も一服し、国内回帰傾向が見られるようです。例えば、製造業の海外設備投資比率(全体投資の中の海外投資の割合)は、円高とリーマンショック以降の新興国(中国、ロシア、インド、ブラジル、東南アジアなど)ブームの中でのグローバル展開を背景に急拡大を続けてきましたが、近年は、さすがに30%前後で頭打ちとなっています。さらに、前年度比でみると、2011-13年度の実績では国内投資(数%の微増)に比べて海外投資が大きく増加(30~50%の大幅増)していたのですが、直近の2014年度計画では国内投資は増加(14.6%増)する一方で海外投資は減少(▲1.6%)しています。これは国内回帰に見えます。製造業の輸出も、2012年秋以降、金額(円ベース)及び数量ともに増加傾向で推移しています。ここまで来ると、さすがにアベノミクスによる円安効果では?と考えざるを得ませんよね。ただ、問題はこの円安が今後も続くでしょうか?という点でしょう。

 最後にまとめましょう。日本はドイツと並び先進国では珍しく「ものづくり志向の強い国」です。そのためもあり、日本の製造業は、リーマンショック後は一時不振でしたが、政府の政策支援もあって持ち直してきました。現在はさらにアベノミクス、特に円安で生産の国内回帰も進み、現時点では工学部の皆さんの将来は明るそうです。でも今後はどうでしょか?

 これって実は、製造業、主に自動車や電機産業に関わる会社の社長さんが皆さん考えて(心配して)、自分なりの答えを模索していることなのです。皆さんも社長になったつもりで、コーオプ演習Ⅰ(1年後期)でグループワークしながら考えみては如何でしょうか。社長が一番飛びつく話題に自分の持論を持っていればコーオプ実習だけでなく、将来の就職活動に役立つことはもちろん、就職後も会社内で皆さんは重んじられると思います。さて、如何だったでしょうか

笹岡 賢二郎

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