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化学結合~原子と原子の繋がりと電子の目線で材料の特性を解明(高橋教授)

| 投稿者: tut_staff

 

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 以前、金属窒化物について紹介しました(その1その2)。

 金属窒化物の中で、TiN(窒化チタン)という化合物は、硬度が高く(モース硬度;9)、工具類や装飾品のコーティング材として用いられています。TiNは、硬いだけでなく金色を呈し、きらびやかな装飾品にはもってこいなのです。

 ですが、TiNという物質は案外熱に弱いのです。600℃以上の高温に曝されると、表面が酸化してTiO2(モース硬度;~6)になってしまいます。そこで私たちは、TiNを別の金属窒化物と組み合わせることで、特性を改善できることを見出してきました。私たちの研究の一端を紹介したいと思います。今回のお話は、私たちが見出した特性改善を原子のレベルで電子の目で見たらどう説明できるか、というものです。

 TiNは、4(4B)族金属の金属窒化物で、岩塩型(NaCl型)の結晶構造をとり、TiとN原子が交互に並んでいます。TiN中のTi原子の一部をAl原子で置き換えた化合物では(置換固溶)、TiNよりも酸化されにくくなりました。また、一連の金属窒化物では、周期表上、右側の金属の金属窒化物の方が熱的な安定性が低下します。

 これらの実験事実を化学結合の立場から明らかにするために、DV-Xα法という量子化学計算を行いました。

 TiNを基にして、Tiの位置に色々な金属を置き換えて計算を行い、原子間に存在する電子に着目して(電子密度の変化に注目して)解析を行いました。その結果、周期表の右の金属を置換するほどTiと置換金属の間の電子密度が減少する、つまりTiと置換金属の間の結合の強さが低下することが分かりました。この知見の下、実験で得られた熱的安定性の解析を進め、平均の価電子数と熱的安定性の間の相関を明らかにすることができました。

 研究室では、実験データを蓄積し、理論計算により化学結合の立場から物質・材料の特性を明らかにする研究を行っています。

DV-Xα法:Discrete Variational (DV)-Xα法とは、ノースウェスタン大学(米国)のD.E. Ellis教授と京都大学工学部の足立裕彦教授により開発された、密度汎関数法を用いた分子軌道計算法です。無機化合物、金属、半導体材料やスペクトルの解釈、表面・界面現象の解析をはじめとする様々な分野で利用されている量子化学計算法です。

高橋 昌男

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