人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか? その2 (江頭教授)
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前回に続き、「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?」がお題です。
一人当たり年間 10 トン…、というのは前回やりました。いま考えているのは人間社会が化石燃料を燃やして出している二酸化炭素ではなく、生物としての人間が呼吸して出している二酸化炭素量のお話です。
人間が消費するカロリーから計算して年間 0.33 トン、という数字を計算しましたが、今度は別の観点から計算してみようと思います。直接的に、人間が呼吸する量からの計算です。
まず、人間の呼吸量はどのくらいでしょう。「NHK for School」にあるビデオ「ヒトが呼吸する空気の量」 をみると一日の呼吸量は「 500 mL ペットボトル2万本分」とあります。つまり一日で 10 m3 の空気を吸って、吐いています。
では、この 10 m3 のガスのうち、どれくらいが二酸化炭素なのでしょうか。
極端に考えて、空気中の酸素がすべて二酸化炭素になっている、としましょう。
空気中の酸素の割合は約20%ですから10m3の20%、すなわち2m3が二酸化炭素だ、という計算になります。
2m3の二酸化炭素は常温なら大体83 mol で、重さにすると 3700 g = 3.7 kg。一年365日で 1.34 トンとなります。
あれっ、前回の計算とくらべて、かなり大きいですね。
やっぱり「空気中の酸素がすべて二酸化炭素に」なる、というのは極端過ぎる仮定のようです。
実は人間がはき出す空気の中にも酸素はたくさん残っていて、二酸化炭素に変化しているのは実際には4%ポイントくらいだそうです。先ほどの計算では 20 %、としてましたがその1/5の4%しか二酸化炭素は含まれない、ということですから年間の二酸化炭素排出量も1/5になります。
つまり 1.34÷5 = 0.27トン 程度の二酸化炭素を排出する、ということです。
前回の 0.33 トン、今回の 0.27 トン、ぴったり一致するわけではありませんがかなり近い数値です。この二つの計算値は全く別のデーターから得られたものだ、という点に注意してください。別の根拠から同じ結論がでる、ということで、より信頼性が高まったと考えています。
さて、「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?」という設問には「約年間0.3トン」と答えれば良さそうです。主に化石燃料を利用することで発生する二酸化炭素と比べると約30分の1。やはり二酸化炭素排出の大部分は化石燃料の利用のようです。
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