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2015年9月

2015.09.30

豪雨災害 書架を歪ませる力はどこから?(江頭教授)

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 少し前のことになりますが、常総市の洪水についての取材レポート(TBSラジオ「荻上チキ セッション22」 9月15日放送「豪雨災害、取材報告」)を聞いていると、こんな話が出てきました。

 図書館が洪水の被害を受けて書架に入った本が水に浸かった。そのため「本がふくれて書架を歪ませている」というのです。

 本がふくれることで生じる力が書架を変形させるほどの強さに達しているわけです。では、この力、一体どこからきているのでしょうか?

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2015.09.29

無水硫酸銅はやっぱり白かった(江頭教授)

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 硫酸銅と言えばきれいな青色(瑠璃色)の結晶をイメージしますよね。これを加熱して無水硫酸銅を得る、という実験は高校の化学での定番のひとつかと思います。私も高校時代にこの実験をやった経験があります。もう25年くらい前のことですが今でも記憶しています。(すいません、サバ読みました。35年前ですね。)それと言うのも、この実験で少し気がかりな点があったからです。

 通常、我々が実験室で見る硫酸銅の結晶は硫酸銅の5水和物であり、硫酸イオン、銅イオンの他に5個の水分子を含んだ5水和物の結晶です。銅イオンに水が配位してきれいな青い色になる、という訳です。これを加熱すると水分子が蒸発し、本当に硫酸イオン、銅イオンだけでできた結晶、無水硫酸銅が得られます。無水硫酸銅は無色(白い粉末)ですが水に触れるとたちまち5水和物にもどり青い色にもどる、というのが実験の概要です。

 昔、この実験をやったときの記憶です。硫酸銅の結晶を蒸発皿で加熱すると色が変わり、きれいな青色が抜けて白っぽくなる、というところまでは良かったのですがどう見ても完全に白くなったとは思えず、どちらかというと水色くらいにしかならなかったと思うのです。ものの本には白、と書いてあるのに...。以後、35年間、気になっていました。

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2015.09.28

推薦図書 カント著「人倫の形而上学の基礎付け・実践理性批判」(山下教授)

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 人倫の形而上学(Die Metaphysik der Sitten )は、ドイツの哲学者インマヌエル・カントの書で、1700年代後半に「純粋理性批判」などの諸書の概念を総括しまとめたものです。実践理性批判(Kritik der praktischen Vernunft)も同年代に著され、前書と合わせて三批判書として有名です。

 私がこの書を繙いたのは高校1年の夏休みでした。
 小学校の頃は家に帰るなりランドセルを放り出し暗くなるまでは家に帰らないという生活を送っていたため、親から本を読むようにと言われました。同級生に読書家の子がおり、黙々と本を読んでいる姿をみて密かに尊敬していたこともあり、私自身も本を読むことに焦燥感を感じていました。
 ところが、親は何を読めばよいのかについては何も言ってくれなかったので、中学に入ってからは模索するように様々なジャンルの本を年間100冊以上手当たり次第に読みました。
 文豪と呼ばれる人の作品でも意外にくだらないなあと思ったり、私小説を自分の経験と重ね合わせて涙を流したりなど、かなりの刺激を受けました。おかげで、中学の成績はさんざんなものでしたが・・・。

さて、
理科系を目指す人間は自然の秩序やものの原理を統一的に理解することに何らかの喜びを感じるセンスを備えていることと思います。論理的に思考しそこから導き出されるものを煮詰めてゆくことが哲学であり、哲学は全ての自然科学の基礎となっています。

 大学の新入生からよく受ける質問の一つに、「大学で専門の勉強ができると思ったのに、1年生は教養教育の割合が多くて想定外だった」というのがあります。

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2015.09.25

記事150本到達記念「応用化学科ブログ」シリーズ記事セレクション(江頭教授)

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この応用化学科ブログも今回で150本目の記事になりました!

今回は本ブログからシリーズ記事をセレクトしてみました。
まだ見ていない方、見逃した回がある方はぜひチェックしてください。

(1)「大学院のすすめ」三部作

 まずはアクセス数が多かったこの三部作。片桐教授がいろいろな視点から大学院進学をお勧めする記事です。大学院進学を考えている人、迷っている人、そして大学院進学を学生に勧めたい先生も必見の内容です。

個人的には「映画 日本沈没」(旧作)が懐かしかったですね。

(2)「学生実験をみてみよう」 シーズン1

こちらは記事数の多いシリーズ。
本学応用化学科、初年度前期の学生実験「工学基礎実験Ⅰ(C)」の内容、実験風景などを紹介する一連の記事で、【番外編】ではレポートについても言及されています。

ここで紹介した実験の前には安全講義や基礎的な操作の説明、実験もあります。以下の記事はこのシリーズの「エピソード・ゼロ」的な位置づけですね。

後期には学生実験として「工学基礎実験Ⅱ(C)」が用意されていますから、このシリーズはまだ続きます。

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2015.09.24

サステイナブル化学を修得したいなら物理化学を学ぼう(高橋教授)

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 前期において専門基礎科目「化学基礎」で大学の化学の入り口を学んだ1年生諸君は、後期には、有機化学、無機化学、物理化学の学習に進みます。応用化学科では、持続可能な社会の構築に貢献するために、サステイナブル化学の知識を身につけ、これを実践できるように学びを深めます。
 1年次後期で学ぶ化学の3科目は、応用化学科で学ぶ専門科目であると同時にサステイナブル化学の基盤となるものです。

 有機化学や無機化学での学びは、有機化合物や無機化合物に関連した化学だろう、というイメージが湧くでしょう。

 では、物理化学で何を学ぶのでしょうか。

名前のとおり、物理化学は物理学の理論や物理的測定方法を基にした化学の一分野ですから、この科目では物質の構造、物性、反応の理解のための基本となる法則や理論を学びます。
 物理? と毛嫌いしないでください。有機化学、無機化学、そして2年次以降の応用化学科で学ぶ、高分子化学、分析化学、化学工学、電気化学、触媒化学、生物化学、工業化学、量子化学、界面化学などの専門科目の修得のための基盤になる科目こそが、物理化学なのです。
 化学の各分野に流れる専門科目の縦糸をつなぐ横糸が物理化学、ともいえます。

 例えば、合成反応においてエネルギー論に基づく物理化学的理解が重要になります。

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2015.09.23

今日は祝日。ですが、新学期が始まります(江頭教授)

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 「今日は何の日?」
 「秋分の日です。祝日でお休みの日です。」

 はい、世間一般ではそうですね。ですが本学では今日、9月23日は祝日授業開講の日であり、後期開始の第一日となります。

 後期=新学期の始まりですが、べつに始業式などのイベントはありません。ただ、あえて探せば「コーオプ演習Ⅰ」のガイダンスはそれに近いと言えるでしょう。「コーオプ演習Ⅰ」はコーオプ教育の準備段階の授業ですから学生は全員必修の授業です。同時に教員も全員が担当者となり、各自、学生の少人数グループを受け持ちます。これは事実上、ホームルームに相当するものとなります。(コーオプ演習Ⅰについてはこちらの記事にも。)
 後期の第一日の今日、「コーオプ演習Ⅰ」の授業では全員がメディアホールに集合してガイダンスを行いますから、工学部の学生が一同に会する、という意味で始業式っぽいですね。

 さて、次は祝日授業開講日について説明しましょう。

 別に「祝日授業」という特別の授業がある訳ではありません。祝日ですが、「授業を開講」する日、という意味です。この祝日授業開講日、今年は他にも、4月29日(昭和の日)、7月20日(海の日)、11月3日(文化の日)、11月23日(勤労感謝の日)、が該当します。

 「祝日なのに授業が有るなんて!」もしあなたが高校生(あるいは中学生、小学生)ならそう思うかも知れませんね。

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2015.09.22

目からうろこの「うろこ」って何?(江頭教授)

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 「目からうろこが落ちる」とういのはいままで分からなかったことが突然理解できる様子を表す言い回しです。でも目に「うろこ」なんか無いですよね。なんでこんな言い方をするのでしょうか。

 ちょっと調べると(「デジタル大辞泉」など)、この言い回しは新約聖書から来ているそうです。目が見えなくなった人が(他の人の祈りによって)目からうろこが落ちて目が見えるようになった、という話で、別に健康な人の目にうろこがある、という訳ではないようです。

 目にうろこができる病気、ということでしょうか。それも奇妙なはなしですが...。と思ってこの言い回しの英語バージョンを見てみます。(新約聖書が原典ならギリシャ語バージョンを見るべきかも。)落ちるのは scale だ、とあります。scale という言葉には「かさぶた」という意味もあるそうで、これらなら意味が分かりますよね。「目からかさぶたがとれる」。うーん、こちらは生々しくて流行らなかったのでしょうか。

 さて、この scale、実は私の専門分野である化学工学でもよく使われている言葉なのです。

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2015.09.21

測定精度は何桁まで達成できるか(江頭教授)

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 先に書いた、応用化学科の学生実験、「工学基礎実験Ⅰ(C)」のレポートの「実験精度100桁」の言葉に触発されたブログ記事、今回はその第2弾です。

 前回は「宇宙すべての物質を使った実験」などと少々羽目を外したので、今回は少し真面目に「実験精度はどのくらいの桁数が達成できるのだろうか」という問題について考えてみましょう。

 いろいろな測定例があるでしょうが、比較的多くの人が感心を持ち、複数のグループが測定精度の限界に挑んでいる、といえば物理や化学で使われる定数の測定ではないでしょうか。

 米国のNIST ( National Institute of Standards and Technology ) のWebサイトにある The NIST reference on Constants, Units & Uncertainty のページにはこの様な定数の測定結果がまとめられています。

 たとえばアボガドロ数の値は
6.022140857 x 1023 mol-1
であり、相対誤差は1.2 x 10-8。8桁に近い精度があるといいます。

 ガス定数は
8.3144598 J mol-1K-1
こちらの相対誤差は5.7 x 10-7ともう少し精度が低いですが、それでも6桁程度の精度があります。

 他にのいろいろな定数の測定値が並んでいますが、もっとも精度が高いのはどの定数でしょうか?

 真空中の光速は
299792458 ms-1
です。その精度は...100桁?いえいえ、なんと無限なのです!

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2015.09.18

フランス・アルザス地方のワイン街道をゆく(山下教授)

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 8月末から9月上旬にかけてフランス・アルザス地方にあるストラスブールで開かれた学会に参加してきました。

 アルザス地方はライン川沿いのフランス・ドイツ国境にあり、三十年戦争、仏晋戦争、第一次・第二次世界大戦にともない、ドイツやフランスが領有をくりかえした地域であることはみなさんの知るところです。ストラスブール大学はもともとはルイ・パスツール大学と呼ばれていましたが、他のキャンパスと合併し現在の形になっています。
 この大学は日本とも縁が深く(「ある国際シンポジウムに参加してきました(森本講師)」参照)、多くの日本人も滞在しています。奇しくも私の恩師である三田達教授(東京大学名誉教授、高分子学会会長、故人)も若き頃の数年を彼の地で過ごし、流暢なフランス語を話されました。学生時代にお世話になった西郷和彦教授(東京大学名誉教授、超分子化学)もレーン研究室の研究を支えた一人です。

 さて、今回ストラスブールを訪れたのにはもう一つ目的があり、Gewurztraminerというワインを手に入れるため学会の午後、レンタカーを借りワイン街道を南下して蔵元を訪問しました。

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2015.09.17

応用化学科に多目的X線回折装置が設置されました(高橋教授)

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 応用化学科に、新しい測定機器、X線回折装置(Rigaku社 Smart Lab 3)が導入されました。
 物質の結晶構造を調べるためには無くてはならない測定装置であり、応用化学実験ではこの装置を用いた実験を行います。

 この装置は、単色のX線を試料に照射し、試料から出てきたX線(回折X線)を観測します。
 X線は電磁波ですから、可視光と同じように回折現象が起こります。可視光と比べて波長が短いX線では、物質に入射されたX線が物質中の原子の周りにある電子と相互作用することで回折現象が生じます。
 この現象を利用し、回折X線を測定・解析すると物質内の原子の配列を調べることができます。

 導入された装置を用いると、粉末試料や多結晶試料をはじめ、薄膜試料など様々な材料における結晶構造や結晶粒子の大きさ、結晶化度などの情報が得られます。

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2015.09.16

書評 畑村洋太郎著 講談社文庫版「失敗学のすすめ」(江頭教授)

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 先日、天津の化学薬品の爆発事故に関連して「オッパウ大爆発」事件を紹介しました。いまから100年ほど前、ハーバーボッシュ法によって人類がはじめて手にれた大量の窒素肥料、硝酸アンモニウムが実は爆発性を持っていたことが明らかになった事件について紹介したのですが、その際「こんな話、どこかで読んだ記憶があるぞ」と、思い出したのが本書でした。

 この「失敗学のすすめ」は東大名誉教授で機械工学が専門の畑村洋太郎博士がその豊富な経験から「失敗」を中心とした多面的な考察を述べた本です。失敗を単にネガティブなものと見なすのではなく、失敗のプラス面、失敗を活かすこと、に注目している点が特徴的で、失敗経験を利用した教育や技術の伝承についても述べています。

 小さな失敗が個人にとって学習の良い機会である様に、人類全体の知識を増やし、新しい技術の確立のきっかけと成る様な本質的な失敗、その意味で「良い失敗」もあるとし、その具体例として本書の第1章で三つの事故を紹介しています。

 一つは自励振動によるタコマ橋の崩落。二つ目は金属疲労によるコメット機の墜落。三つ目は脆性破壊によるリバティー船の沈没です。新しい現象の発見とそれを巧く扱う技術の開発へとつながったこれらの事件を畑村教授は「未知への遭遇」と呼んで他の失敗と区別しています。畑村教授は機械工学の専門家なのでこの3件を選択したたわけですが応用化学の分野で考えれば「オッパウ大爆発」はまさに「未知への遭遇」の事例だと思います。(ここは「未知との遭遇」と言いたい所ですが...)

 さて、本書は最初、2000年11月に単行本として出版されました。私は、当時の単行本版を読んで感銘を受けたことを記憶しているのですが、今回読み直してみて「あれっ?」と思うところもありました。

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2015.09.15

AO入試、明日(9月16日)から募集スタート(江頭教授)

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 来年度(2016年度)の東京工科大学の工学部のAO入試は10月17日に行われ、募集は9月16日~24日です。この記事が公開されるころにはもう受験を決めた方がいるかも知れませんね。(詳細はこちらから。

 本学のAO入試は少し変わっていて、受験生の皆さんが、講演を聴いた内容を理解し要約してノートにまとめる力、を評価に含めています。単純に今の知識をみるのではなく、入学後に知識をつけるためのその基本となる力、つまり、授業受けてノートをまとめる力を重視しているのだと思います。(ここは筆者の個人的な見解です。)

 工学部では、面接の前に、「工学入門」と題して45分の講演が行われます。大切なのはその講義で扱われるトピックスに関する知識の多寡ではありません。講演のなかで講師がどのようなことを語っているか、それをきちんと理解してノートに要約することです。

 さて、このAO入試の主題となる「工学入門」の講義、担当は学部長ですが、その内容は極秘で学部長だけが知っている、という訳ではありません。じつはこの講演には原稿があるのです。

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2015.09.14

ラジカルに関するあれこれ-2 丸山教授の冗談の思い出 (片桐教授)

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 学生時代、1988年にスイスのチューリッヒで行われた国際学会に参加しました。

 当時の私の研究テーマは「Grignard反応の機構」というものでした。今でも多くの基礎的な教科書はこの反応はアルキルアニオン(カルバニオン)のケトンのカルボニル基への付加反応としております。 しかし、本当はGrignard試薬という有機マグネシウム試薬からケトンへの電子移動と、それに続くアルキルラジカルの移動であることを実証しました。

 私の研究成果の1つは、このアルキルラジカルの移動にはもう1分子のGrignard試薬の作用を必要とすることの実証でした。そして、過剰のジケトン(Benzil ジフェニルジケトン)を用いると、すべてのGriganrd試薬は電子移動をおこしてしまい、アルキルラジカルの移動は極端に阻害され、超寿命化したのラジカル種を観測できることを見いだしていました。

 指導教官の丸山教授はこの「超寿命ラジカル種とその発生を学会発表のときに見せたい」、と強く所望されました。

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2015.09.11

ちょっと気になる「ちょっと」という言葉(江頭教授)

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「こないだの実験結果のまとめ、どうなった?」

「まだ、ちょっと未完成なのですが...」

「ちょっと未完成、ということはほとんど完成、ということだよね。それで良いから見せてよ。」

「...すいません。えーっと、ちょっとしか完成していません。」

いやいや、最初の「ちょっと」という言葉の使い方、特に意味はなくて雰囲気を和らげるためだ、ということは理解しています。それを言えば文末を「なのですが...」とするのも曖昧で、本来なら「まだ未完成です。」で良いはずですよね。

 さて、この話、どう転がしていきましょうか。

「科学・工学の分野では余計な修飾を廃して正確な言葉遣いを」とかでしょうか。
「仕事での連絡は簡潔で正確に」というとコーオプ教育の雰囲気になります。
「コミニュケーションのスキルは大切で云々」といって肯定的に扱うの有りですね。

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2015.09.10

嗚呼、高校四年生(江頭教授)

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 この時期、東京工科大学の先生達は高校訪問に出かけます。我々応用化学科の教員もあちこちの高校へ、特に化学の先生達のところへ、学科紹介を半分の、高校の化学教育に関するいろいろな情報収集をもう半分の目的として伺っています。それがきっかけとなって出張実験を行ったり、高校生の発表会に参加することもあります。

 さて、今年の訪問校の中には東京工科大学、工学部応用化学科の1年生の出身高校もあります。そんなとき、従来ならば「OBの○○君の成績は…、まだ一学期の成績が出ていないので何とも言えませんね。」となるところですが、今回、我々はもう少し詳しい情報を持っています。

 下の写真を見てください。これは本学の講義室の机の一部です。プラスチックのふたの下にはノートPC用の電源コンセントとイーサーネット端子(いまは無線LANに移行して使われていません)が有ります。そのとなりには2次元バーコードとIDの数字のシールが貼ってあるのが分かると思います。これは本学の全ての教室の全ての席にあるのですが一つとして同じものは有りません。これは授業中に着席している席を示すIDなのです。

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2015.09.09

化学実験で測定精度は何桁必要か(江頭教授)

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 応用化学科の学生実験、「工学基礎実験Ⅰ(C)」についてはいままでこのブログでも紹介してきました(その1その2その3その4その5その6その7その8番外編)。

 この実験では、最初にイントロダクションとして測定精度についての実験を行っています(内容はこちら)。先日、そのレポートを見せてもらったのですが、とても面白い感想を書いてくれた人がいました。

 その学生さんは「化学という学問の長い歴史を考えれば100桁位の測定精度の実験ができていて当然だ」と言うのです。これに対する採点者の須磨岡先生のコメントは「そんな精度が必要か、考えてみてください」でした。

 と、いう訳で本日のお題「化学実験の測定精度は何桁必要か」について考えてみましょう。

 普通に考えると「ケースバイケースです。」で終わってしまうのですが100桁という大胆な言葉に敬意を表してこちらも大風呂敷を広げてみましょう。

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2015.09.08

化学薬品と爆発(江頭教授)

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 本年(2015年)8月に起こった天津市の爆発事故と、それにつづく火災や爆発の報道を見ると化学物質を安全に取り扱うことが如何に大切か、が再認識されます。

 化学薬品の爆発には古い歴史があるのですが、今回は「オッパウ大爆発」について紹介したいと思います。

 この「オッパウ大爆発」は1921年、ドイツで起こった事件で、これについて私が知ったのはオーストラリアの乾燥地での植林実験を行っていた際、森林総合研究所所属(当時)の田内裕之さんに教えてもらったときでした。

 私たちは乾燥地の乾いて硬くなった土壌に水がしみ込みやすくするために爆薬を利用した土壌改良を行っていましたが、そこで利用していたのがANFO爆薬(Anmonium Nitrate Fuel Oil explosive)でした。このANFO爆薬は安全性が高く、取扱も比較的容易だ、ということで 10kgの袋入りのANFO爆薬を担いで運んだりしたものです。

 もちろん、手順通りにANFO爆薬にbooster(起爆用の爆薬)をセットして通電すれば大きな爆発を起こすことができます。(爆発の様子はこちら

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2015.09.07

ラジカルに関するあれこれ-1 Chemistry Joke (片桐教授)

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 化学の世界ではラジカルとは不対電子をもつ化学種のことです。一方、社会科学では「過激派」とか「急進派」とかの意味も持ちます。化学種としてのラジカルは高い反応性をもち、単寿命の中間体として知られています。

 もう15年ほど前ですが、大宮で行われた国際学会へ参加したときの話です。
 お昼ご飯を食べに行った帰り、学会会場の前の広場で労働組合のシュプレヒコールが響いておりました。それを見たポーランドの先生は私に「What are they?  What are they doing?」と尋ねてきました。

 キタ!と思い、私は「They are radicals.  Because, they are unionized.」(このunionizedは発音を曖昧にしなければならないので難しいものです)と答えました。それを聞いて、そのポーランドの先生はキョトンとしていました。しかし、横にいたアメリカの先生には「Ha ha ha!  You nice joke!」とわかっていただけました。

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2015.09.04

人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか? その2 (江頭教授)

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 前回に続き、「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?」がお題です。

 一人当たり年間 10 トン…、というのは前回やりました。いま考えているのは人間社会が化石燃料を燃やして出している二酸化炭素ではなく、生物としての人間が呼吸して出している二酸化炭素量のお話です。

 人間が消費するカロリーから計算して年間 0.33 トン、という数字を計算しましたが、今度は別の観点から計算してみようと思います。直接的に、人間が呼吸する量からの計算です。

 まず、人間の呼吸量はどのくらいでしょう。「NHK for School」にあるビデオ「ヒトが呼吸する空気の量」 をみると一日の呼吸量は「 500 mL ペットボトル2万本分」とあります。つまり一日で 10 m3 の空気を吸って、吐いています。

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では、この 10 m3 のガスのうち、どれくらいが二酸化炭素なのでしょうか。

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2015.09.03

人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか? その1 (江頭教授)

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 今回のお題は「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?」です。

 これを聞いて「日本人なら年間10トンくらい。」と答えられた人はなかなかのものです。でも、今回の質問はちょっと意味が違います。

 日本人が年間10トン程度の二酸化炭素を排出する、というのは日本という国が排出している二酸化炭素を日本の人口で割った値で、そのかなりの部分は化石燃料を燃やす際に放出される二酸化炭素です。

 今回問題にしたいのは人間が生物として放出する二酸化炭素の量、つまり呼吸することによってどれだけの二酸化炭素を放出するか、という問題です。

 この問題、どうやったら答えがでるでしょうか?人間が二酸化炭素をはき出すのは食べ物を体内で分解するから。それを元に二酸化炭素の量を推算してみましょう。

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2015.09.02

昨年のノーベル物理学賞受賞者の天野先生にあってきました。(片桐教授)

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 8月1日に小学校・中学校の同窓会があり、同級生のみの会合だったため、1月の高校の同窓会よりも規模が小さく、やっと天野先生といろいろお話しする機会がありました。

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 同窓会ではあのノーベル賞受賞前後のいろいろについて短い講演をされた後に、懇親会でした。ノーベル賞の授賞式でのご本人とご子息の貸衣装が、1人あたり3万円だったけど、先に受賞された方の奥様や大使のアドバイスに従っていたら、お嬢さまの貸衣装代はその100倍近くになり、奥様のお着物はさらに高価で、着物の着付けの方を同行されるだけで百万単位のお金がかかり、大学からお金を借りたことなどなど、2ヶ月にわたったドタバタの面白い話をうかがいました。

 懇親会では、皆に取り囲まれあまり食べ物にありつけていない様子がお気の毒でした。その宴の中ごろに飛び入りで、私も「天野先生の学生時代」という彼からの年賀状をもとにしたパワポのプレゼンを行いました。

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2015.09.01

logの底はいくつですか?(江頭教授)

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 表計算のソフト MS Excel のVBA (Visual Basic for Application)でプログラムを書いているときのこと。
 「あれっ! 関数 LN() がコンパイルエラーになる。」
この関数、Excelのシートでは使えるのですが…。

 LN()は ln、つまり自然対数のことです。「えっ!自然対数は底を省略して log と書くのでは」と思った人、あなたは若い!今の高校の授業では自然対数を log と書くのですが、昔は常用対数(底が10の対数のこと、つまり log10 )を log と書いていたのです。つまり「 log 」という記号が表す関数は昔は10が底の常用対数、いまはeが底の自然対数へと、いつの間にか変更されてしまったのです。

 このため、いろいろとやっかいなことが起こります。最初に書いたExcelの関数の問題もその一例です。=LOG(10)はシート上では1ですが、VBAでLOG(10)は2.302585093を返します。ややっこしいですね。

 授業のなかで、しかもテスト問題にからむとさらにやっかいなことになります。

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