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無水硫酸銅はやっぱり白かった(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 硫酸銅と言えばきれいな青色(瑠璃色)の結晶をイメージしますよね。これを加熱して無水硫酸銅を得る、という実験は高校の化学での定番のひとつかと思います。私も高校時代にこの実験をやった経験があります。もう25年くらい前のことですが今でも記憶しています。(すいません、サバ読みました。35年前ですね。)それと言うのも、この実験で少し気がかりな点があったからです。

 通常、我々が実験室で見る硫酸銅の結晶は硫酸銅の5水和物であり、硫酸イオン、銅イオンの他に5個の水分子を含んだ5水和物の結晶です。銅イオンに水が配位してきれいな青い色になる、という訳です。これを加熱すると水分子が蒸発し、本当に硫酸イオン、銅イオンだけでできた結晶、無水硫酸銅が得られます。無水硫酸銅は無色(白い粉末)ですが水に触れるとたちまち5水和物にもどり青い色にもどる、というのが実験の概要です。

 昔、この実験をやったときの記憶です。硫酸銅の結晶を蒸発皿で加熱すると色が変わり、きれいな青色が抜けて白っぽくなる、というところまでは良かったのですがどう見ても完全に白くなったとは思えず、どちらかというと水色くらいにしかならなかったと思うのです。ものの本には白、と書いてあるのに...。以後、35年間、気になっていました。

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 さて、今回まとまった量(といっても100gくらいです)の無水硫酸銅が必要になり、乾燥器と真空加熱炉を利用して無水硫酸銅を作成してみました。高校の時と違って、最初の5水和物の硫酸銅の結晶からどのくらい質量が減ったのかを確認ならがの実験です。
 写真の左側、平底の蒸発皿に乗っているのは乾燥器で150℃に加熱して脱水したものです。質量の減り具合から1水和物であることが分かっています。

 「そうそう、こんな感じ。」高校生のころの実験で作った「無水硫酸銅」もこんな感じで水色が残っていたっけ。

 さて、さらに真空加熱炉で300℃に加熱し、ほぼ無水硫酸銅だと思われる値まで重量が減少したのが右のルツボに入ったサンプル。なるほど、やっぱり無水硫酸銅は白い(灰色?)のですね。高校の実験では完全な無水硫酸銅にはなっていなかったのでしょう。

 実験では「○○すれば××ができる」というだけでは不充分で、ちゃんとできているのか確認することが肝心だ。35年ぶりの実験結果に納得しながらそんなことを考えました。

江頭 靖幸

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