フランス・アルザス地方のワイン街道をゆく(山下教授)
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アルザス地方はライン川沿いのフランス・ドイツ国境にあり、三十年戦争、仏晋戦争、第一次・第二次世界大戦にともない、ドイツやフランスが領有をくりかえした地域であることはみなさんの知るところです。ストラスブール大学はもともとはルイ・パスツール大学と呼ばれていましたが、他のキャンパスと合併し現在の形になっています。
この大学は日本とも縁が深く(「ある国際シンポジウムに参加してきました(森本講師)」参照)、多くの日本人も滞在しています。奇しくも私の恩師である三田達教授(東京大学名誉教授、高分子学会会長、故人)も若き頃の数年を彼の地で過ごし、流暢なフランス語を話されました。学生時代にお世話になった西郷和彦教授(東京大学名誉教授、超分子化学)もレーン研究室の研究を支えた一人です。
さて、今回ストラスブールを訪れたのにはもう一つ目的があり、Gewurztraminerというワインを手に入れるため学会の午後、レンタカーを借りワイン街道を南下して蔵元を訪問しました。
ワイン街道は広大な農地の中を一本の道が続き、時々小さな村に入ると木骨組みの家々には鮮やかな色の花が飾られ、フランスとは一味違った雰囲気に包まれていました。
オベルネ(Obernai)をこえると、遠方の山の上に古城(オー・ケニグスブール城)が見えたので立ち寄り、再びコルマール目指して出発したところ、山の尾根を進む道に入ってしまいました。途中シュヴァルツヴァルトの村のようなかわいい家々を見ながら、ようやくなだらかな丘陵地になったところであたり一面が葡萄畑となりました。
畑毎に葡萄の品種を書いた大きな看板がありました。目指すKaefferkopfという村は葡萄畑の中にある小さな村でいくつもの酒蔵がありました。今まさに収穫の時期で、トラクターで葡萄を運んできては加工用の樽に入れる作業をしており、街中葡萄の甘い香りに包まれていました。
このワインは一昨年ストラスブールを訪れた再に偶然手に入れたもので、あまりのおいしさに今回わざわざ蔵元まで来ることになったのです。蔵元で話を聞きながら、ラベルに記されている語句一つ一つの謎が解けました。試飲してみると、たしかに他の銘柄とは違う芳醇な味わいがしました。往復の飛行機の中でも1本ン万円というワインを出してくれるのですが、それよりもはるかに美味しいと感じました。
さて、さて、
当然のことながら、今回このワインを手に入れたのは化学の研究を行うためです!!。
この光学異性体の概念を世界で初めて示したのはルイ・パスツールであり、彼は酒石酸塩の結晶を分割することに成功し、この発見に至ったのでした。パスツールの発見もアルザス・ワインが身近にあったからにほかなりません。
私が手に入れたワインでの研究成果については次稿に譲ることにしたいと思います。
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