講義「有機化学1」第1回目の講義から-1 構造式を描くこと(片桐教授)
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このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義の大事なポイントを読み物にして、解説して行きます。
以前、有機分子の構造の理解の歴史をお話ししました。我々は分子を見ることができません。確実に有機分子の形=shapeを知ることができるようになったのは20世紀の中頃です。それまでは、分子の形はいろいろな知見を元に想像したものでした。今の我々は、いろいろな分析手段により、この分子の形をかなり直接的に知ることもできるようになりました。その意味で、我々は恵まれており、手探りで有機化学を発展させてきた先人たちに敬意を払わなければなりません。(だから、有機化学の講義では、先人たちへの敬意を表するためにも、飲食は(特別な場合を除き)禁じますし、帽子も脱ぐように指導します。ただし、カツラについては見て見ぬ振りをします。)
有機化学では分子の「形」を大事にします。したがって、有機化学では分子の形を「わかりやすく」表現する能力の習得を求めます。この習得は、とにかく良いお手本を描き写すことです。断言しちゃいます。それしかありません。
そして、その描き方については、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)のルールブックにより厳密に定められています。しかし、このルールは何年かごとに書き直されるため、注意が必要です。特に、立体を表現する方法はコロコロ変わります。
2006年のルールはpdfで公開されています。
このルールブックの表記法と、皆さんの使っているマクマリーの教科書の違いはわかりますでしょうか。そう、紙面より奥向きの点線の書き方が異なります。この点線に関するIUPACのルールも、1996年版ではまた異なります。
原則として、IUPACの最新版を使うのが好ましいのですが、2006年版は誤解を招きやすいので、私個人は(ごまかし半分で)IUPAC1996年版を板書では使っています。
この点線の表記方法は教科書によっても異なります。SolomonsのOrganic Chemistry 9th Ed (2006年刊)では、IUPAC 2006年版の書き方、SmithのOrganic Chemistry 3rd Ed (2011年刊)ではIUPAC 1996年版の書き方が採用されています。とにかく、マクマリーの描き方はIUPACでは認められていないものなので、この描き方はしないように注意してください。
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