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2015年10月

2015.10.30

理系の文章技術(基礎編)-5(片桐教授)

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5 指示の受け方報告のしかた

 指示を正しく受け、結果を正しく報告する技術は、学生生活を円滑に進めるために重要な技能である。

 講義において出される課題や、教室の変更、その他の指示を正確に受けなかったことによる不利益は、受けそこなった本人にかかる。後から他の人に聞けばよい、という考えで指示を受けた場合の多くは、伝聞で指示を聞くことになり、ゆがんだ情報、時には誤った情報を聞くことになる。

 数年前、レポートの締め切り日に関して誤った情報が蔓延したことがあった。情報の出所を探ると、「レポートの締切りが試験の前日なのは大変だ、1週間延びればよいのに」という希望を友人同士で話し合っているのを立ち聞きした者が「レポートの締切りが試験の前日なのは大変だから、1週間延びた」と勘違いし、それが蔓延したものである。私に確認した者がいたため、それでも過半数の者は締め切り日に提出できた。しかし、1/3の者は締切りに間に合わなかったことを理由に、大幅に減点された。この件の場合「○○の誤った情報に振り回されてしまいました。救済して下さい。」という者も複数現れた。しかし、レポートを課した立場からすればどんな噂が広がろうとそれはこちらの関知したものではない。「それは残念だったねえ。身の不運と諦めなさい。」としか返せない。

 安全工学の課題「魚の骨図」でも、課題を「分析結果の提出」と勘違いし、魚の骨を描かなかった者が多数現れた。これは教員の課した課題の意図を無視したものであり、大幅な減点や課題未提出の扱いになる。講義の流れを理解していればあの課題が要因分析を実際に行う手法の演習であり、要因の分析そのものが目的ではないことは容易に理解できる。

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2015.10.29

講義「有機化学1」第1回目の講義から-2 有機化学で使う5種類+1種類の矢印(片桐教授)

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 このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義の大事なポイントを読み物にして、解説して行きます。

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 有機化学の共鳴構造式や反応式では5種類の矢印を使います。今回は、それについて解説します。

 まず高校の教科書でもよく出てくるのは,反応を表現する→と、平衡反応を表現する⇄です。

 式(1)で示している反応の矢印については、あえて解説の必要もないでしょう。1ステップの反応は式(1)で表しますが、いくつかの反応を略する場合には式(2)のように表現することもあります。

 式(3)で示す平衡の矢印は、いつでも同じではありません。平衡の偏りをその矢印の相対的な長さで表現します。例えば、式(4)の平衡は、右側にずれている、すなわち化合物Cが大量になっていることを示します。

 さて、高校で習わないのが、式(5)の共鳴構造式の矢印です。これは同じ物質の極限構造式の間をつなぐものです。共鳴式で表現されている化合物の実際の構造は、複数の極限構造式の線形結合=足して割ったものであると言えます。例えば、式(5)で表すベンゼンの6つの結合は単結合よりも短く、二重結合よりも長い1.5重結合です。これを2つの構造で表しています。そこで、1つの構造式で示す場合は式(6)のように表す場合もあります。

 興味深いのは、この極限構造式から実際の分子の結合の強弱(結合次数の違い)を推定できることです。ナフタレンは式(7)の つの極限構造式で表されます。このとき、ナフタレン分子のそれぞれの結合に2重結合が来る極限構造の個数は式(8)左図に示すようにそれぞれ異なります。そして、実際の分子の結合長はそれぞれ式(8)の右図に示すような値になります。つまり、極限構造式の共鳴式から推定される結合次数の大きなものほど、結合長は短い=強い結合になっていることがわかります。

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2015.10.28

講義「有機化学1」第1回目の講義から-1 構造式を描くこと(片桐教授)

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 このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義の大事なポイントを読み物にして、解説して行きます。

 以前、有機分子の構造の理解の歴史をお話ししました。我々は分子を見ることができません。確実に有機分子の形=shapeを知ることができるようになったのは20世紀の中頃です。それまでは、分子の形はいろいろな知見を元に想像したものでした。今の我々は、いろいろな分析手段により、この分子の形をかなり直接的に知ることもできるようになりました。その意味で、我々は恵まれており、手探りで有機化学を発展させてきた先人たちに敬意を払わなければなりません。(だから、有機化学の講義では、先人たちへの敬意を表するためにも、飲食は(特別な場合を除き)禁じますし、帽子も脱ぐように指導します。ただし、カツラについては見て見ぬ振りをします。)

 有機化学では分子の「形」を大事にします。したがって、有機化学では分子の形を「わかりやすく」表現する能力の習得を求めます。この習得は、とにかく良いお手本を描き写すことです。断言しちゃいます。それしかありません。

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2015.10.27

応用化学科BLOGは一周年を迎えました(江頭教授)

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 本学、工学部応用化学科の公式ブログは今日で一周年です。

 昨年の10月27日、
の三本の記事を掲載したのがこのブログのスタートです。

 この一年間で掲載した記事はこの記事を入れて172本になりました。今回はその中から、このブログ自身について書かれた記事をピックアップしてご紹介しましょう。

 まずは今年の2月23日公開のこの記事。

ブログのアクセス数の統計を利用してトップ5を発表しました。トップ5の中に上記のブログ開設時の3本のうち2本の記事がランクインしているのは、単純に公開期間が長い方がアクセスが増える、ということかも知れません。一方、それ以外のトップ5位入りの記事はすべてノーベル賞に関する記事で、
の三本でした。
 これは昨年度のノーベル物理学賞受賞者、天野浩先生と本学科の片桐教授との交友関係があってのことでしょう。来年には本学で天野浩先生の講演も計画されています。

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2015.10.26

キラリと輝くキラリティー(山下教授)

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 前稿「生命の起源の謎を解き明かす不斉誘起反応(山下教授)」では、分子のキラリティー(不斉)と生命の起源の謎についてご紹介しました。

 分子のキラリティーを測る手法の一つは旋光度という測定で、その名のとおり、物質に偏光を入射させ物質を透過する間に偏光面が回転する角度を測定します。分子の構造と光は密接にかかわっており、光で分子を反応させることも、分子で光を制御することもできます。

キラリティーは分子の不斉に基づくものなので医薬や香料、化粧品などの生理活性物質の分野でよく研究対象とされていますが、最近では光情報記録や光情報制御などのICT分野で分子のキラリティーが活躍しています。家庭でのインターネット接続も従来のような電気の回線から光ケーブルに変わってきています。従来の電気信号による通信では多くの情報を送るために信号の周波数を高くしなければなりませんが、電気の周波数が最大でGHzであるのに対し、赤外線は100THzもあり、数十万倍ものデータを処理できる能力があります。(GHzやTHzの単位については前稿「It’s a small world ~桁を表す接頭語(山下教授)」 を参照)。

 光で情報を記録したり演算を行う上で、材料の色を情報として記録するというアイデアがあります。しかし材料の色を見るということは材料がいくらかの光を吸収しているということを意味するので、その過程で材料が変化したり光が減衰することが避けられません。一方、先に述べたキラリティーを情報とした場合、光の吸収は起こることなく光の偏光面が回転するだけなので非常に高効率な光情報処理ができるわけです。

 では、光の偏光面の回転はどのようにして観察できるでしょうか?ここでディズニーランド等で見ることができる3D映画を思い出してください。

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2015.10.23

理系の文章技術(基礎編)-4(片桐教授)

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4 ノートの作り方

 ノートは人間の外部記憶装置である。しっかりとしたノートを作っていれば、これを引き金にして何年も前に受けた講義の内容を鮮明に思い出すこともできる。自分の得たものをより確かにする手段としてノートを作ることは非常に重要である。ノートを大事にしよう。ノートは世界で一つの君の宝である。単位取得後もノートを捨ててはいけない。大事に保管しよう。

4.1 ノート作りということ
 まずなによりも、ノート作りを、ノート取りと混同してはいけない。ノート取りは受動的な行為であり、特に板書の書き写しは単なる(できの悪い)コピーである。コピーならコピー機の方が上手である。教員のしゃべっていることをまるまる書き取ったとしても、まだこれは単なるノート取りである。最近はViaVoice (IBM)のようなプログラムも出てきた。人間は機械に劣ってはいけない。

 ノートを作ることは高度に知的な活動である。ノートを作るためには見聞きしたことを自分の頭での処理を必要とする。必要な部分を抜き出し、並べ替え、自分の言葉でまとめる作業には、それなりの知恵と技術を必要とする。さらに講義を聞きながらノートへ記録を行い、それを頭脳で処理することを同時に行うためには訓練を必要とする。

4.2 ノートを作ることの効用
 ノート取りだけでなくノート作りを同時にやることには以下のような効用がある。
  1. 何を書くかを考えさせられるので、能動的に講義を聞ける。
  2. 今、何の話をしているかを自覚できる。
  3. ノートを自分の言葉で書けば、理解する助けになる。
  4. わからないところがどこかを、その場で明確にできる。→後で質問の役に立つ
  5. 集中できる。
  6. 記憶の助けになる。
  7. 重要なところを明確に意識できる。
  8. 復習の助けになる。

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2015.10.22

降雨量はどのくらい?(江頭教授)

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 今年の台風18号による大量の雨で関東地方にも近年まれにみる洪水被害があったことは記憶に新しいところです。その大雨に関して気象庁が発表した情報によれば9月9日から11日にかけて観測された降雨量は関東地方の一部で600ミリを超える大雨になった、といいます。

 「なるほど、600mmか...。」、って、この降雨量はどのぐらいすごい量なのでしょうか? 

 600mmだから60cm、膝ぐらいの高さでしょうか。これがたった3日で降ったとしたら、なるほど大変でしょう。でも、それって珍しい事なのでしょうか。そもそも、雨は例年どのくらい降っているのでしょうか?

 幸いなことに、日本国内の気象に関する測定データは非常に充実していますし、アクセスも容易です。気象庁には過去のデータを検索できるページがあります。

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2015.10.21

学生実験をみてみよう(第2期) その3「分離技術あれこれ」(江頭教授)

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 本学科の後期学生実験の紹介。今回は先週に引き続き基礎技術の習得を目標とした授業の風景を紹介します。

 今回のテーマは分離技術あれこれ。化学の実験で利用される基礎的な分離を体験します。(前回の「クロマト」も分離技術の一種ではありますが、物質分離が目的ではありません。物質の特徴である保持時間を調べる際、他の物質と分離されることがある、という程度でしょう。)

 さて、写真の実験風景、真ん中の西洋なしをひっくり返したような形のガラス器具が目立っていると思います。これが分液ロートです。よく見ると中に入った液体が2相に分離しているのが分かるでしょう。分液ロートは下部のコックのついた出口から液の下の層を取り出すための器具です。2相の分かれた液を分離するから「分離技術」、まあそのとおりではありますが、実際の化学実験で分液ロートが用いられるのは溶媒抽出を行う場面です。溶液の中から欲しい物質を分離するために、その溶液とは分離するが目的の物質は溶かす溶媒を巧く選んで目的物質を溶かしだして分離するのです。

 溶媒にとけた目的物質を回収するには溶媒を蒸発させてしまえばよいですよね。

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2015.10.20

水の蒸発速度はどのくらい?(江頭教授)

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 表題の質問「水の蒸発速度はどのくらい?」の答え、一般論なら「条件によって変わります。」です。

 今回は身の回りの水がどのくらいのスピードで蒸発しているのか、を考えてみましょう。

 「食事中にコップの水が蒸発して空になってしまった」なんて事はありません。
 コップに溜まっている水の深さが10cmくらい、食事の時間はたとえば1時間とすると水の蒸発速度はどんなに早くても10 cm/hよりは小さいでしょう。
 同じように「コップに水をいれたままにしたら翌日には蒸発していた」というのもありそうもない話ですから、蒸発速度は最大でも10 cm/day 以下、これが上限です。

 逆に蒸発速度の下限、最低でもこれぐらいの速度で蒸発する、という速度について考えてみましょう。「食器を洗ったあとに拭かないと跡がのこる」という話、以前このブログでも紹介した話です。例えば深さ0.1mm程度の水滴が残ったとして翌日には乾燥していると期待できるので、蒸発速度は少なくとも 0.1mm/day よりは大きいのではないでしょうか。

 身の回り、つまり室内環境での水の蒸発速度は、最大 10 cm/day、つまり100 mm/day から最小 0.1 mm/day の間。かなり幅の広い推定ですが実際はどのくらいなのでしょうか。写真のようにビーカーにグラフ用紙を貼り付けて実験してみました。

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2015.10.19

単位の話(山下教授)

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 今年度大学に入学した学生諸君は前期の成績が出て一喜一憂していることと思います。

 大学生が最も気にするものは「単位」、これがないと卒業できません。20年ほど前は大学での学びの自由度も大きく、自分の興味のある科目を好きなだけ履修することもできましたし、講義が気に入らなければ授業に出席せず、それでも試験を受けて単位をとることもできました。当時の学生は制限がない分、自分の将来を考え、それを実現するために必要な教養をどのように身に着けるか必死になって考え、のびのびと学んでいた気がします。

 私の場合、複雑な構造の有機化合物から様々な機能が生まれることに興味をもち有機系の研究をしたいと漠然と思いましたが、有機化学を知るためにはそもそも化学結合を知る必要があり、それを理解するためには量子化学、および量子力学を理解する必要があり、量子力学を理解するためには線形代数、解析力学、行列を学ばなければならない・・・と推論しました。

 そこで大学の教養科目で開講されているもの以外にも関連している講義をとり、あるいは「もぐり」で聴きにゆき、あげくの果てには数名の仲間があつまり洋書をテキストとして輪講形式でプリゴジンの書の勉強を始めたものののなかなか手ごわいため、当時東大生産研におられた妹尾学先生の研究室に押しかけ妹尾先生を巻き込んで「押しかけ輪講」なるものを始めました。それがきっかけで大学の研究所で研究をする先生の姿に心惹かれることとなりましたが、当時妹尾先生はずいぶん多忙であったことと思いますが、勝手に押しかけてきた学生に非常に丁寧に指導をしてくださり、感謝しております。

 さて、本日の話題は大学生の気にする「単位」ではなく、自然科学で出くわす「単位」についてです。

 我々の回りの世界にはさまざまな「状態」があります。それを測る指標が「単位」です。人間の身長は「長さ」、体重は「重さ」によって測ることができますが、体重を長さで測ることはできません。現象ごとに、それを測るのに適した指標があり、それを次元とよびます。自然界にある様々な物性を測るには7つの次元、すなわち「長さ」、「質量」、「時間」、「電流」、「温度」、「光度」、「物質量」が必要で、科学の分野では国際単位系 (SI単位、Le Système International d‘Unités:  International System of Units)としてそれぞれの次元を測る基本単位を定義しています。

 また、車の速さはある時間にどのくらいの距離を進むかというものなので「長さ」と「時間」を組み合わせたものということができます。自然界にある物理量は上記の7つの単位を組み合わせることによって定量化することができるのです。

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2015.10.16

理系の文章技術(基礎編)-3(片桐教授)

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3 学びの技術ついて

3.1 学習法の分類
 学習法は大きく4つに分類できるとされている。
  1. 活動的学習
  2. 熟考的学習
  3. 理論的(体系的)学習
  4. 現実的学習
学習法は各人の個性や科目との相性により異なる。自分がその科目を学ぶ際に、どの学習法が最も適しているかを見いだすためには、全ての学習法に精通しなければいけない。

3.2 自己診断

 自分はどの学習法を行えるタイプなのかをチェックしてみよう。
1.活動的学習タイプ
  • 開放的な人柄である。
  • 新しい出来事を楽しめる。
  • 活動的に日々を送っている。
  • 問題が起こったらみんなで相談して解決する。
  • 物事を次々にやっつけていく。
  • 挑戦することが好きだ。
  • みんなと一緒に仕事をするのが好きだ。
  • みんなの中心に居たい。
2.熟考的学習タイプ
  • 忍耐強く物静かである。
  • 物事を色々な側面から考えるほうだ。
  • データーを集めて解析するのが好きだ。
  • 結論に至る前に色々考える。
  • 結論に至ることを先延ばしにすることがある。
  • 車で後ろの席に座り、人の運転を見るほうが好きだ。
  • 全体像がみえないと動かない。
3.理論的(体系的)学習タイプ
  • 分析的に物事を見る方だ。
  • 理論と理性に価値を見いだす。
  • 多くの事柄を一つの理屈に乗せたがる。
  • 完全主義者である。
  • 理論とか原理とかに敏感である。
  • 判断するのがにがてである。
  • 複雑な理論構成が苦にならない。
4.現実的学習タイプ
  • プロジェクトXの「地上の星」タイプ
  • 理屈のための理屈ががまんできない。
  • 現実的解決を好む。
  • 理論は実践できるものにだけ価値を見いだす。
  • とのかくまず手を動かすほうだ。
  • 自分の行動に自信を持っている。
  • 問題が発生している情況を好む。
 自分が全てのタイプに当てはまれるならば、それにこしたことはない。しかし、自分が当てはまらないタイプがあるのなら、その欠点をうめるべき努力、自己研鑽をすべきであろう。

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2015.10.15

「東京工科大学の魅力は...」コーオプ演習Ⅰ実習講義より(江頭教授)

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「東京工科大学の魅力は何ですか?」

「はい、高尾山に近いことです!」

えっ!そこ!?

 実はこれ、コーオプ演習Ⅰという授業の一コマです。ブレインストーミングの例題として「東京工科大学の魅力」を50個挙げましょう、というややむちゃ振りのお題に対する答えの1つ。ブレーンストーミングを知っている方なら、なるほど、とお思いではないでしょうか。

 さて、これまでも折に触れて紹介してきた本学のコーオプ教育ですが、1年生後期には「コーオプ演習Ⅰ」という授業が行われています。授業内容は、講演会などもありますが、主にグループワークとプレゼンテーションです。
 コーオプ教育では後々、企業での実際の業務にかかわって仕事に参加することになります。その時、チームで問題に対処する能力を養うため、グループで活動する、そのテクニック・やり方を身につけよう、というのがこのグループワークの目的です。

 高校まで、いえ、大学に入ってもほとんどの授業は個人の能力に焦点をあてた内容になっています。極端な話、学科試験で問題に協力して解答したら不正行為になってしまいます。もちろん、個人の能力を伸ばすのがこの段階での授業の目的ですから、これはこれで正しい。しかし、実際の会社、いえ、社会は個人の能力だけで問題解決ができるほどシンプルではないことが多い、したがってグループでの作業が必須となるのです。

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2015.10.14

学生実験をみてみよう(第2期) その2「クロマトあれこれ」(江頭教授)

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 本学科の学生実験「工学基礎実験Ⅱ(C)」について紹介するシリーズ、第2期、第2回は前回に引き続き個別の実験テーマを体験する前段階として準備された「基礎技術」の項目から紹介しましょう。今回のお題は「クロマトグラフィー」略して「クロマト」です。

 この「クロマトグラフィー」は実は前期の学生実験にも出てきます。「学生実験をみてみよう その1『ペーパークロマト』」がそれです。ろ紙にインクや色のついた化学薬品の混合物をつけておき、液体をしみ込ませるとあら不思議、成分が分離されて色が分かれる、というのがペーパークロマトでした。

 今期の実験では「薄層クロマトグラフィー」に挑戦します。ろ紙の代わりにガラス板上に形成されたシリカゲルの薄い層に未知のサンプルと標準試料を並べてしみ込ませます。蓋付きの瓶の中で溶媒を浸透させて移動させるとクロマトグラフィーによる分離が起こるという手順です。
 下の写真はその様子。「ペーパークロマト」では現象の理解を目的として色のついた試料をもちいて実験しましたが、今回はよりリアルに色のついていない試料をもちいているのでやや華やかさに欠けるかも知れません。

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2015.10.13

10月11日、12日に紅華祭が開催されました。(江頭教授)

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質問です。「紅華祭」はどう読むでしょう?

「べにかさい?」

「あかはなまつり?」

いえいえ、「こうかさい」と読みます。
東京工科大学と日本工学院専門学校がある八王子キャンパスの学園祭で、たぶん工科(=「こうか」)祭とかけているのでしょう。11日と12日の二日間、この学園祭が開催されました。

 写真は片柳研究棟(応用化学科が入っているビルです)の10階からの学内風景です。初日の午前中は生憎の雨でやや人の入りが少ないですが、研究棟(半円形の建物が向かい合っている特徴的です)まえに設置された特設ステージをはじめとしていろいろな場所でイベントが開かれました。

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2015.10.12

換算係数(山下教授)

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 先日、末娘からなぞなぞを出されました。

学生3人が旅館に泊まりました。宿泊費は1人1万円で、学生の1人が集金した3万円を宿の女将さんに渡しました。女将さんはしばらくして「学生さんだから少しおまけしましょう」と思い、5千円を学生に返すようにと女中さんに手渡しました。女中さんは、「5千円は3人で割り切れないから、自分が2千円をもらってしまいましょう」と考え、残り3千円を学生に返しました。

宿代は3万円でしたが、学生は1人千円づつ返してもらったので、1人9千円の支払いをしたことになります。学生が払った9千円×3=27000円と女中さんがもらった2000円を足して29000円となりますが、残り1000円はどこに消えたのでしょうか?

横で聞いていた母親が思わず吹き出してしまいました。

 化学の勉強をしていても似たようなことに出くわすことは少なくありません。ある酸性溶液に試薬を入れて反応させてから滴定を行った、とか、試薬Aと試薬Bを反応させるとき一方が過剰量あるのですべて反応させることはできないとかです。慎重かつ合理的に順序をおって考えれば必ず解けるのですが、濃度と物質量の換算とか、単位の換算などがからんでくると見かけ上複雑になり混乱してしまいます。

 このようなとき、「換算係数」という方法を用いると、頭を使うことなく機械的に単位や量を変換することができるのです。

 換算係数とは、対応するものを等号で結び、左右の項を互いに割ることによって作った係数です。

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2015.10.09

理系の文章技術(基礎編)-2(片桐教授)

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2 学びのタイミングとプロセス

 新しい教科の学習はだいたい4つの時期を経て進行する。

  1.  第1期:新しいものごとに親しむ時期である。先生はこの時期に補助する。ゆっくり進歩する時期である。焦りやすい。
  2.  第2期:興味が出てくれば理解も進み、理解が進めば興味も湧くという、良循環の時期である。勢いよく進歩する時期である。
  3.  第3期:難しさに出会う時期であり、学びても学びても前に進まず、いらいらする時期である。ダイエットと同じでこの時期を越えられるかどうかで、その科目をモノにできるかどうかは決する。
  4.  第4期:完成期。腹をくくり高い山に挑むがごとく、ゆっくりと登り続ける時期である。ここまで来ればあなたは一人の探究者として、教員と同じレベルに達したと言える。その科目を人に教えられるはずである。

 しかし、学びは必ずしもこれらの過程を経て進むものではない。学ぶ事柄や、学習環境により、当然、大きく異なる。大事なのは勉強の進まない時期に至っても、それは能力の問題ではなく、当然経るべき一つの時期であると認識し、焦ったり、あきらめたりしないないことである。あなたの情熱の続くかぎり、どんなに歩みはのろくても、学びは必ず前に進む。そして、前に進めば必ず高いレベルに到達できる。

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2015.10.08

ガラス器具洗いと皿洗い(江頭教授)

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本学応用化学科に新入生が入って学生実験を始めたばかりのことです。

「あのー、ガラス器具を洗ったのですが布巾はどこですか?」
「えっ?布巾って、何で?」
「だって、残った水を拭かないと跡がつくじゃないですか。」

そうか、化学の実験でのガラス器具の洗浄方法は食器の洗い方とは違うのですが、一般の人(それに入学したばかりの学生さん)には知られていないですよね。

 ガラス器具はブラシで洗う、必要なら洗剤を使う、本当にしつこい汚れがついた場合には特殊な洗浄方法もありますが、この辺は食器洗いと同じでしょう。ガラス器具には気づかないうちにひびが入っている可能性があるので、手で洗わないこと、という注意を受けますが、本当は食器洗いでも同じですよね。

 違いはその後。ガラス器具は純水(イオン交換水など)で流して自然乾燥、あるいは乾燥器(低温のオーブンのようなものです)に入れて乾かします。最初の話のように、残った水は拭き取らずに乾燥させてしまうのです。

 ポイントは「純水で流す」という部分です。純水と普通の水道水には大きな違いがあります。下の写真は片方が水道水、もう一方が純水です。

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一見、まったく違いが分かりませんが、これを放置して乾燥させると違いが分かります。

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2015.10.07

自然豊かな八王子キャンパスとその周辺(西尾教授)

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 東京工科大学の魅力の一つは,16階建ての片柳研究棟をはじめとするキャンパスのスケールの大きさだと感じています. 私自身,こちらにに着任して1年半が経過しましたが,今でも八王子キャンパスに入る度に感動を覚えます.

 その一方で,豊かな自然も魅力の一つだと思います.特に,キャンパスの南側(斜面の上側)には,ここがキャンパス内かと疑う様な見事な雑木林と遊歩道があります.南側境界線の外側にも一般の遊歩道があり,私はこちらを良く通っています.写真の柵の右側がキャンパス内の遊歩道,左側が一般の遊歩道で,一般の遊歩道は絹の道(大塚山公園,道了堂跡)から通じています.このあたりで蛇と何度か出くわしていますが,先日は,非常に鮮やかな色彩をもった虫に出会いました.

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2015.10.06

学生実験をみてみよう(第2期) その1「分子モデリングソフト」(江頭教授)

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 新たに開設された本学の応用化学会、その学生実験である「工学基礎実験Ⅰ(C)」についてはこのブログでも紹介してきました。(その1その2その3その4その5その6その7その8番外編

 今回からは後期の学生実験「工学基礎実験Ⅱ(C)」について紹介していきましょう。

 後期の学生実験は前期と同様、金曜日の午後から始まります。
 まずは、第1回の授業でガイダンスに引き続き行われた個々の実験に対する「実験講義」の内容を理解し、実験テキストを参考にしながら各自の実験ノートに目的や原理、実験操作のフローチャートなどを作成して実験日に備えます。

 さて、写真は実験当日の様子ですが...。
 あれっ、何か普通の授業風景の様に見えますよね。でも、クランプを固定するスタンドの鉄柱がみえていますから、ここが実験室であることは分かると思います。

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2015.10.05

混成軌道 その2 (山下教授)

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 以前の記事(「混成軌道」)では軌道が混成し新しい結合を形成する過程を説明しました。
 では、炭素がエチレンなどの二重結合を作るメカニズムはどうなっているのでしょうか?

 sp3混成では、2s軌道と3つのp軌道の合計4つの軌道が混成し、新たに4つの軌道を作りました。

 一方、sp2混成では、2s軌道と2つのp軌道(すなわちpxとp)を混成させて新しく3つの等価な軌道を作ります。このとき、2s軌道もpx軌道、py軌道いずれもxy平面内にあるので、混成によってできた新しい軌道もxy平面内にあることになります。また、新しくできた混成軌道はその平面内で等価であるということは、混成軌道は正三角形の中心から頂点に向かった配置で互いに120°の角を為すと予想されます。実際に図に示すように3つの軌道が120°を為しています。

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2015.10.02

理系の文章技術(基礎編)-1(片桐教授)

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 文章を書くこと=情報を発信することは難しい。

 現在の中等教育(中学、高校)の内容を見てみると、情報を発信するという能動的な能力を育てるというよりも情報を正しく受信し、それをアクションに移す受動的な能力の涵養にとどまっている。これは、1割の指示者(従わせる者)と9割の作業者(従う者)からなる現在の社会構造に合致する。私には、義務教育や高校教育は、従う者を育てることを目的としているように思える。その中で、自ら情報を発信できる能力を身につけた者は、指導者や指示者になれる。

 もちろん、指示を出す者は指示を受ける能力を持つ者でなければならない。これは、プロ野球の監督はプロ野球の選手の経験を必ず持っていることに似ている。プレーヤーの能力と経験を持たない者には、プレーヤーを監督し、指示し、動かすことはできない。しかし、すべてのプレーヤーは監督になれるわけではない。監督になるためにはプレーヤーとしての技能に加えて、指導者に特有の技能を獲得しなければならない。それは、情報発信能力である。プレーヤーのわずかに数%の者しか監督になれないことを鑑みれば、この能力の獲得の難しさを理解できる。

 これから,何回かに分けて情報発信能力=文章を書く能力の身につけ方についての個人的な意見をまとめる。

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2015.10.01

この夏のコーオプ実習(トライアル)の実施について(須磨岡教授)

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 コーオプ実習トライアルの話題(「コーオプ実習のある工学部って、ひょっとしてお得?」「コーオプ実習(トライアル)の事前学習の様子」)がコーオプセンター長のブログで紹介されています.工学部は本年度の4月に設置されたばかりなので,今回のトライアルには既存の学部(コンピュータサイエンス学部,メディア学部)に在籍している2年次,3年次の学生が参加しました.実施期間は夏季休業中の8月の後半からの約1ヶ月間(実習先の企業によって日数は異なります)で,約10の企業に分れての実習です.

よく,「インターンシップとの違いは?」という話があるので,簡単に説明してみましょう.

 コープ教育は,企業に学生を単に送り出すだけではありません.体験の前後に特別なカリキュラムが組まれています.応用化学科では,1年次の後期から2年次の後期にかけて「コーオプ企業論」,「コーオプ演習Ⅰ」,「コーオプ演習Ⅱ」などの事前学修が行なわれます.そして,3年次の前期にいよいよ就業体験(「コーオプ実習」,約2ヶ月間)が始まります.この実習プログラムも,企業任せではなく大学も関与する形で作成されています.さらに実習後には「コーオプ演習Ⅲ」があり,実習体験の振り返りを行なうとともに,事後の学修意欲の向上に繋がるようなカリキュラムとなっています.もちろん,このようなコープ教育はその後の就職活動にも役立ちます.

 また,コープ実習は通常行なわれているインターンシップと比べて長期の就業体験であることや,就業体験に対して就業先より賃金が支払われることも大きな特徴です.

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