水の蒸発速度はどのくらい?(江頭教授)
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今回は身の回りの水がどのくらいのスピードで蒸発しているのか、を考えてみましょう。
「食事中にコップの水が蒸発して空になってしまった」なんて事はありません。
コップに溜まっている水の深さが10cmくらい、食事の時間はたとえば1時間とすると水の蒸発速度はどんなに早くても10 cm/hよりは小さいでしょう。
同じように「コップに水をいれたままにしたら翌日には蒸発していた」というのもありそうもない話ですから、蒸発速度は最大でも10 cm/day 以下、これが上限です。
逆に蒸発速度の下限、最低でもこれぐらいの速度で蒸発する、という速度について考えてみましょう。「食器を洗ったあとに拭かないと跡がのこる」という話、以前このブログでも紹介した話です。例えば深さ0.1mm程度の水滴が残ったとして翌日には乾燥していると期待できるので、蒸発速度は少なくとも 0.1mm/day よりは大きいのではないでしょうか。
身の回り、つまり室内環境での水の蒸発速度は、最大 10 cm/day、つまり100 mm/day から最小 0.1 mm/day の間。かなり幅の広い推定ですが実際はどのくらいなのでしょうか。写真のようにビーカーにグラフ用紙を貼り付けて実験してみました。
上の写真が実験の結果です。左が実験開始時点、右がその6日後の水位です。
6日間で約10 mmの蒸発がおこりましたから、蒸発速度は約 1.7 mm/day です。10cmのコップの水が無くなるには60日間、約2ヶ月かかる、というのは何となく感覚にも合っていますね。2ヶ月で10cmですから一年で約60cmです。
さて、この蒸発速度は室内での値ですが、屋外での水面からの蒸発速度はどうでしょうか。これについては気象に関する研究のなかで実測データが取られています。日本では大体年間50~100 cm程度の値となり、今回の数値とそれほど変わりません。
ただし、これは水面からの蒸発で、地面からの蒸発はこれとは異なっています。土が乾けば蒸発速度は遅くなりますよね。でも地面に植物が生えていると、そこから水が大気中に放出される(これを蒸散とよんで蒸発と区別しています)のでそれほど単純ではありません。
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