混成軌道 その2 (山下教授)
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以前の記事(「混成軌道」)では軌道が混成し新しい結合を形成する過程を説明しました。
では、炭素がエチレンなどの二重結合を作るメカニズムはどうなっているのでしょうか?
sp3混成では、2s軌道と3つのp軌道の合計4つの軌道が混成し、新たに4つの軌道を作りました。
一方、sp2混成では、2s軌道と2つのp軌道(すなわちpxとpy)を混成させて新しく3つの等価な軌道を作ります。このとき、2s軌道もpx軌道、py軌道いずれもxy平面内にあるので、混成によってできた新しい軌道もxy平面内にあることになります。また、新しくできた混成軌道はその平面内で等価であるということは、混成軌道は正三角形の中心から頂点に向かった配置で互いに120°の角を為すと予想されます。実際に図に示すように3つの軌道が120°を為しています。
この混成軌道のうち1つはもう一つのsp2炭素と電子を共有して炭素ー炭素結合を作り、残り2つの混成軌道は水素と結合を作り、エチレンの骨格が見えてきます。
さて、ここで、最初の混成の過程でpz軌道が混成に参加せず残ったままになっていたことを思い出しましょう。エチレン骨格は上述のようにxy平面内にすべての結合が広がっています。一方、pz軌道はxy平面に垂直に位置しています。この2つの隣り合うpz軌道どうしが重なり合いπ結合を形成します。即ち、亜鈴型をしているp軌道がxy平面の上と下の空間で互いに電子を共有しπ結合を形成し、その電子雲はxy平面の上部と下部に広がっているのです。
このようにしてsp2混成した炭素どうしの結合はσ結合とπ結合からなります。化学式では2本の線を引いて表しますが、実際には2種類の異なる結合からなっていることがわかります。そしてそれぞれ反応性が異なっているために、オレフィン類の独特の反応性を示すのです。
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