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講義 「有機化学1」 第4回目の講義から-1 配座異性体、アトロープ異性体の話(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義のポイントを読み物にして、解説して行きます。

 異性体の分類については、教科書により大きく異なります。図には、その一例を示しています。ここで、話を難しくしているのが、異性体間の相互変換の早さです。

 例えば、アミンの非共有電子対はsp2構造を経て反転します。そのため、原理的には2つの対掌体は存在していても、テクニカルに分離できません。そのため、この2つの対掌体は「(実質的に)同じもの」とされます(式1)。

 同様の現象は、シクロヘキサンのフリップフロップにも言えます。2つのコンフォマーは分離できないので、原理的にはジアステレオマーであっても「(実質的に)同じもの」とされます(式2)。

 一方、単結合周りの回転が阻害されている場合、例えばBINOLという化合物では、2つのコンフォマー間の変化ができないため、分離することができ、これは対掌体とみなされます。このような分子をアトロープ異性体と呼びます。

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 近年の分離技術の進歩により、これまでは分離できなかっ異性体がアトロープ異性体として認知された例も出てきました。その意味で、具体的な化合物が異性体と呼べるかどうかは、日々変化しています。

 一つ一つの化合物で憶えるのではなく、昔の人は異性体と言うことばにどのような意味をもたせたのかを理解しなければ、新しい技術についていけなくなります。

片桐 利真

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