理系の文章技術(基礎編)-6(片桐教授)
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6 報告の技術
大学における学生から教員への「報告」は、中間情況の提出を求められる場面のみである。したがって、研究室へ配属されるまでは、実験以外の場での「報告」はほとんどない。しかし、実験時や研究室配属後はこの報告ができるかどうかが仕事の効率に大きな影響を与える。
6.1 報告の方法
報告には3つの方法がある。
- 口頭による報告
- 文章による報告
- 文章と口頭とによる報告
である。この中から、
- 相手に分かりやすいこと
- タイミングが良いこと
を勘案して手段を選択すること。
実験中事故が起きた場合に、文章を作成していては被害が拡大する。なぜ、事故が起こったかの報告を口頭で行っても、後に残らない。また、忘れてしまうため、同じような事故を防ぐ手だてにはならない。
6.2 報告の必要な場合
- 指示された作業が終了したとき(その時点で口頭、後日文章で報告)。
- 中間報告(口頭)。作業の遂行が困難な場合、予定よりも長引きそうな場合は、早めのタイミングで報告する。報告は ・どこまで進んだか、・見通しはどうか、・問題点は何か、を明確にし、指示を求める。
- 異常事態発生時(口頭)。速やかに情況を説明する。このとき事実と自分の意見は明確に分けるように。異常事態発生時、報告が遅れて被害が拡大した場合はその責任は報告すべき者に課せられることとなる。たとえ微細な事故でも、事故発生時は速やかに報告すること。
- 外出中の来客・電話(文章)。必ず必要事項をまとめたメモを作成すること。
口頭で報告すべきこと:
- 簡単なこと、
- 緊急を要すること
- 文章報告に時間がかかる場合は、要点を口頭で報告する。
文章で報告すべきこと:
- 正確さを求められる場合
- 多くの人に知らせる場合
- 保存する場合
- 1:1の関係でない場合
6.3 報告のコツ
- 悪い話は早めに報告・相談:あなたに対応策がなくても、教官には打つ手があるかもしれない。悪い話の報告をしたくないのは人情であるが、その人情を押し殺す心の強さが求められる。失敗をしない人間は偉くない。失敗を恐れず、しかし失敗に備える人間が偉いのである。
- 要領良く簡潔に:報告は、結論→理由→経過→関係事項→私見の順で報告すべし。時候の挨拶や、無用の前振り、自己紹介や生い立ちから始めてはいけない。実際に、身内の不幸でレポートの提出が遅れた、その理由の説明で、自分が祖母に愛されていたことを話すために、延々と生い立ちを話そうとした者がいた。
- 報告は原則・事実と意見のみ:推測や希望を入れてはいけない。事実と意見は必ず明確に分けること。事実と意見では事実を先にしゃべること。人情として自分の意見をまずしゃべりたいのはわかるが、聞き手にしてみればいけ塩だけ聞いてもなんの話をしているのかを把握できない。
- 口頭報告:落ち着いて報告すること。結論をまず述べること。回りくどい表現や文末まで聞かなければわからない表現は避けること;「〜ではありません」ではなく「〜でした」で報告すること。質問された場合、その質問を最後まで聞き、それから答えること。
- 文章報告:文章だけでなく図や表を用いて詳細に報告すること。事実を漏れなく報告すること。報告書の作成前には必ず読み直すこと(目を通すではない、声にだして読んでみること)。夜に作成したモノは明朝確認してから提出すること。
6.4 5W1H、または6W2H
情報の発信や受け入れにおいて、5W1Hあるいは6W2Hを意識することが重要である。特に、受け入れの場合、それが自明だと思われても確実な取材のために、確認を取る努力は必要である。中学・高校の国語で習う5W1Hは、「いつ」「どこで」「だれが」「どうして」「どうなった」と表される。しかし、この5W1Hの使い方も、TPO(Time Place Occasion)にあわせなければならない。
大前研一氏は週刊ポストの連載で企画会議における6W2Hを提案していた。残念ながら私は元記事を持っておらず、要点のメモしか手元に無い。これを紹介する。
What: 会議の目的、どのような意思決定をしたいのか明確にせよ。会議の主催者は、その会議の結論を予定しておかなければいけない。想定しないでいては何も決まらない。
Why: どのような理由で会議を開催するのか明確にせよ。参加者に周知徹底をはかるのを目的とするのか?。仕事の分岐点で意見を集めるのを目的とするのか。
Who: 実行者は誰か。利益を得るのは誰か。このとき「誰か」は特定の個人ではなく、組織や社会全体を差す場合もある。
When: 具体的なスケジュールは如何に。具体的なスケジュールの無い計画は動かない。
Where: 対象は?。一部の者か?。会社全体か?。全国的に行なうのか?。
Which: 目的達成手段(複数)の可能性と選択。ベストな手段はどれか?。
メリット・デメリット、計画見直しの規準。
How to do: 具体化。どのようにして具体化するのか。
How much: 予算額とその負担者。
このやり方で、電話のメモを分析してみよう。
日時: これはWhenである。
宛先: これはWho、だけではなく、Whereにも関係する。
発信者: これはWhoであろう
対応: (電話をして欲しい→先方の電話番号・また電話します→いつごろ電話します・電話があった旨伝えて下さい)WhichとWhenの要素を含む。同時に受け手のWhenとHow to doを含む。
用件: WhatとWhyである。
記入者: Whoである。
以上のように、How much 以外の全ての情報を電話メモは含んでいる。
(「理系の文章技術」、次回からはノウハウ編を掲載予定です。)(11月13日公開予定)
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