ハリーポッターの魔法を解き明かす光と化学(山下教授)
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7月に東京ビックサイト、10月には仙台夢メッセにて開催された「夢ナビ」にて講演を行ってきました。
夢ナビは全国の高校生を対象に、大学の教員が講義をするイベントです。文科系から理系まで多くの分野の講義があり、3万名ほどの高校生が集まるため会場は熱気であふれていました。私は、昨年から「ハリーポッターの魔法を解き明かす光と化学」というタイトルで夢ナビの講義を担当しています。夢ナビのイベントでも1,2を争う人気科目となり、ブースに入りきれない人たちは後ろから立ち見となりました。
もともとこの講義は、本学のオープンキャンパスの際の模擬講義の一つとして立案されたものでした。現在では物質は原子・分子から構成させていることは誰でも知っていますが、昔は金属のように固いもの、水のようにさらさら流れるもの、火のようにゆらゆらするものなど、一体何からできているのか不思議で堪らなかったに違いありません。石や水が、つきつめれば同じ粒子、すなわち陽子、中性子、電子からできているなど、現在でも直感的には信じがたいことでしょう。昔の人たちも物質の本質を知ることに興味をもちました。彼らはどの物質にも、それをその物質たらしめる精がはいっていると考えたのでした。火の中には火の精、水の中には水の精があるというわけです。もしその物質から精を取り出し、別の物質にその精を入れれば物質を変えることができると考えました。たとえば、金の精を他の物質に入れればその物質は金になってしまいます。これが錬金術の名前の由来です。しかし、当時の錬金術師たちが目指したのは単なる金儲けではなく永遠の生命を得ることで、即ち、生命の精を得て不老不死となることだったのです。