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学生との雑談から 心のリミッターを外そう(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 「TOEICで550点をとらないと、就職にひびくよ。」「えっ、そんなの無理です」。いとも簡単に「無理」と断じてしまった。「どうやったらとれますかねぇ。」ではなく、もうあきらめている。TOEICを受けたこともないくせにあきらめている。なんじゃそれは!。

 このときに限らず、話をしているときの学生さんのコメント中の「それは無理」「それはできない」ということばは気になる。これは,自分の能力にリミッターをかけていると思われる。なぜ「やってみます」と言えないのだろうか?。

 火事場の馬鹿力、ということばがある。人間は壊れないように、筋肉の出せる力にリミッターをかけている。普段出せる力は、本当の限界の3割程度と言われている。緊急時(火事場)でこのリミッターが外れると、絶対出せない力、3倍くらいの力を出すことができる、といわれている。体のリミッターは体を壊さないためのものである。しかし、心のリミッター、能力のリミッター,人生のリミッターには益はないと思う。

 自分が傷つくことが怖いのだろうか。心が傷ついてもそこから回復できるのが若者の特権ではないのだろうか。ナイーブなこと,傷つきやすいことは必ずしも美徳ではない。

 「あきらめ(絶望)は愚者の結論」(ディズレィリ)ともいう。これはいかにも西洋人的な思考です。日本人ならむしろ「人生あきらめが肝心」の方がしっくりとくるかもしれない。どっちが正解かはわからない、でも、私自身は自分にリミッターをかける=あきらめる人生を送りたいとは思わない。

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 今、私は第二種永久機関を作ることにより熱力学第二法則に挑戦しようとしている。

第二種永久機関は作ることができないとされている。本当だろうか。第二種永久機関ができない理由は熱力学第二法則を根拠としている。では、この法則は証明されているか。否、まだ証明されていない。「常識的に考えて」できない、とされている。できないことは悪魔の証明であり、1例でも作ることに成功すれば、熱力学第二法則を崩すことができる。

 私が最初にこの着想に至ったのは、1998年であった。それから約15年間、地道な準備で研究を始めることができた。そして、やっとそのしっぽをつかんだ。ナノテクノロジーにより、第二種永久機関の鍵デバイスであるマクスウェルの悪魔と言われる機構のさらに前段階のマクスウェルのバルブの作成に成功した。15年間の間に、「柔らかな結晶性サブナノサイズの細孔構築」「完全結晶の作成」など、これまで不可能とされてきた課題を複数クリアしてここまでやってきた。われながらしつっこい性格である。

 ピンチはチャンスである。「できないのではないか」と疑問を持つことは大いなる発見発明のチャンスである。その課題に挑戦すれば良い。「できない」というあきらめはその人の限界である。

 もうひとつ、気になったのは「ようするに」とまとめて概論的に理解しようとする行為である。「要するに、英語は苦手だから、TOEIC550点は無理!」と大くくりで議論に終止符を打つ行為である。「無理」とあきらめる前にもう一度問い直してほしい。なぜ?を5回繰り返してほしい。あなたの英語が苦手な理由は1つではないだろう。そして、それを解析すれば、それぞれに対策が立てれるだろう。まとめてしまうと無理なように見えることも、ばらしてみると何とかできそうになる。

 自分の思考のリミッターである「無理」と「要するに」を外してみよう。このことばを自分の考えから排除してみよう。自分に言い訳をして自分をごまかす人生は、もったいない。自分に言い訳しても、いいわけ? 

片桐 利真

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