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冷蔵庫で野菜や果物の鮮度を保つ触媒(原准教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回は、家庭の冷蔵庫の中で活躍する触媒について紹介します。

 リンゴと一緒に保存するとバナナが腐りやすくなると聞いたことはありませんか? これは、リンゴから放出されるエチレンという気体が植物の成熟を促進するからです。エチレンは、バナナのみでなく、キウイフルーツなどの他の果物、ブロッコリーなどの野菜、カーネーションなどの花といった実に多くの植物の鮮度に影響を与えます。

 家庭の冷蔵庫でいたずらをするこのエチレンを除去するために、効率的な触媒を開発しました。触媒ですので、原理的には交換の必要がありません。これまでの技術では、活性炭のような吸着材にエチレンを吸収させる方法や、エチレンを分解させる薬剤が用いられてきました。しかし、これらは効力がなくなったら交換をしなければなりません。

 新しい触媒の開発は、私の前任地、北海道大学の触媒化学研究センター(現 触媒科学研究所)で行われました。

 

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福岡淳教授、大学院生、学部生、博士研究員の皆さんと一緒に数年間にわたって毎日実験とディスカッションを行って、家庭の冷蔵庫でも役立つレベルの触媒を見つけ出すことができました。ナノメールサイズの穴が開いたシリカ(SiO2)を用いて、小さな白金(プラチナ)の粒子をその穴の中に作製することが鍵でした。そして、とてもうれしいことに、この夏大手家電メーカーから販売を開始された新型の冷蔵庫に開発した触媒が搭載されています。家庭の冷蔵庫のみならず、生産地からの物流や店舗での販売においても利用されるのではないかと期待されます。

 この触媒がなぜ高い機能をもっているのか?その答えは完全にはまだわかっていません。その謎を解くために、兵庫県の山間部にある世界最大級の実験施設のSPring-8に今月も行って来ます。 エチレンを除いている反応条件下での触媒の構造を最先端の測定法で明らかにしようとしています。

 今回は冷蔵庫の中で活躍する触媒について紹介しましたが、天然の酵素の機能を模倣した触媒、水素で走る燃料自動車のための触媒、不要となった木材などから燃料を得るための触媒、医薬品や機能品を作るための触媒など、いろいろな触媒の開発を行っています。これらの紹介もひとつひとつ、これから発信していこうと思います。

原 賢二

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