学生実験をみてみよう(第2期) その10「蒸留」(江頭教授)
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応用化学科の1年生を対象とした学生実験は前期が工学基礎実験(C)のⅠ、後期がⅡとして通年で行われています。週1回、金曜日の午後は前期も後期も学生実験の時間、と決まっています。
さて、今回のテーマは「蒸留」です。
「蒸留」という操作は蒸留酒が昔から造られていたことを思い起こせばわかるように化学そのものよりも古い歴史のある操作です。お酒を加熱しすぎるとアルコール分が抜ける。だから、逆に蒸発したものを集めればアルコールが濃縮されるだろう、という発想で発酵では到達出来なかったアルコール濃度の高いお酒が造られたのでしょう。(もちろん、本当の経緯は今となっては検証し様がありませんが。)その手法が化学の実験に取り入れられて今でも重要な分離手段のひとつとなっています。
今回の学生実験でも水とアルコール(エタノール)系の蒸留を行います。この系は共沸現象が見られる系として有名で、いろいろと複雑なことがおこる系です。でも、今回の実験ではエタノール30wt%の溶液を60wt%程度に濃縮するだけなので共沸点(96wt%)には到達しませんから、典型的な蒸留の一例と見なすことができます。
蒸留で得られた留出液を数個の三角フラスコでサンプリング、蒸留が進むにつれて留出液中のエタノール濃度がどのように変化するかを屈折率計を使って測定します。
留出液のサンプリングと同時にフラスコ内の溶液の温度、凝縮される直前の蒸気の温度とを温度センサーで測定しています。フラスコはスターラーで撹拌しつつオイルバスで加熱するのでスターラーとオイルバスが二段重ねに。これをジャッキに乗せて高さを調節して使っています。
下の写真は蒸留を終わらせた状態。ジャッキを下げてフラスコをオイルバスから出した状態になっています。蒸発が止まって蒸気温度は下がっていますが、フラスコ内の液温がさがるにはもう少し時間がかかりそうですね。
さて、この実験では「物質収支」の検討を行っています。簡単に言うと「蒸留で回収されたエタノールの量が最初にフラスコに入れた量と等しい」ということで、これをチェックします。
成立して当たり前の関係ですから、これをチェックすることは実験が巧くできていることの証明になる、とまでは言えませんが、この関係が成り立たないなら実験のどこかに問題がある、ということになります。
蒸留の実験そのものは1コマ(90分)程度の時間で終わりますが、データを解析して物質収支の計算を終えるころには帰るのにちょうど良い時間になっています。
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