講義 「サスティナブル概論」から グリーンケミストリー12か条(片桐教授)
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以下は、グリーンケミストリー12条と言われる原則です。
- 廃棄物は「出してから処理ではなく」、出さない
- 原料をなるべく無駄にしない形の合成をする
- 人体と環境に害の少ない反応物、生成物にする
- 機能が同じなら、毒性のなるべく小さい物質をつくる
- 補助物質はなるべく減らし、使うにしても無害なものを
- 環境と経費への負担を考え、省エネを心がける
- 原料は枯渇性資源ではなく再生可能な資源から得る
- 途中の修飾反応はできるだけ避ける
- できるかぎる触媒反応を目指す
- 使用後に環境中で分解するような製品を目指す
- プロセス計測を導入する
- 化学事故につながりにくい物質を使う
しかし、この原則は常に正しいものではありません。例えば、ポリ塩化ビニルはその加工品の可塑剤の環境ホルモン作用(女性ホルモン様の活性)ゆえに環境に優しくない素材とされていました。さらに、他の炭化水素系樹脂とは異なる物性のため、リサイクルの邪魔になり、また燃やすと塩化水素等だけでなくダイオキシン発生の原因になると嫌われました。さらに土に埋めても自然分解しないために上記10番目に反します。
私の手元にポリ塩化ビニル製のマグカップがあります。これは1972年に私の父がアメリカで購入したものです。今でも使用できます。つまり、もう43年間使っています。半世紀近く使っています。しかも,陶器のように落としても壊れることがありません。その意味で「究極のエコ」商品のはずです。
実は、上記の12か条は、作ったものを最終的に捨てることを前提としています。永久的に使えるものなら、使い続けることこそが、究極のエコではないでしょうか。そう考えると、上記12か条の裏に隠れた問題点が明らかになります。そう、エコはエコでもエコロジーではなくエコノミーへ強く配慮しています。
このマグカップを購入して使う人は、おそらく一生新しいマグカップを購入しません。すると、このマグカップを作る会社は製品が売れなくなり、倒産してしまいます。
つまり、エコロジーはエコノミーと必ずしも両立しないため、ジレンマが生じるということです。実際にはこれにエネルギーの問題が絡み、3Eのトリレンマが発生します。エネルギーとエコロジーの間の問題はPETボトルに見られます。1本のペットボトルをリサイクルして元のものと同じレベルのPETボトルを再生するには、PETボトルを7本作ることのできる石油を使います。これはエコロジーとエネルギーのジレンマです。そのため、回収されたPETボトルの60%以上は燃料として、「サーマルリサイクル」されます。
さらにリサイクルの優等生と言われるアルミ缶も、子供会で集めたものは回収業者にお金を払って引き取られます。つまり、市は税金から、回収する業者にも子供会にも手間賃を支払っているわけです。これもまた3Eのトリレンマです。
環境問題は正解のない難しい問題です。いや、正解がないから難しい問題なのです。そこにあるのは正答ではなく、責任ある決断です。そして、多面的にいろいろな視点で見なければ、一方的な主張に飲み込まれ洗脳されます。
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