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メリークリスマス(山下教授)

| 投稿者: tut_staff

 秋も深まり紅葉した樹々が葉を落とし始めたころ、本学名物のクリスマスツリーが点灯されます。高さ8メートル余りのヒバの木で、研究棟と厚生棟、図書館に囲まれた広場の中央にあり、きらびやかな飾りと電飾がクリスマスシーズンの訪れを告げています。ここからは、ちょうど片柳研究所が見渡せる恰好の位置ですが、写真のように片研にも見劣りしない立派なツリーです。

 1996年、私はMITに招かれ、ボストンで1年を過ごしました。10月のボストンは街中が紅葉に包まれ、ため息がでるような美しさでした。クリスマスシーズンになると、大通り沿いの空き地がクリスマスツリーショップに変身します。即ち、クリスマスツリーが植えられ、車で訪れた人が好みを木を見つけるとその場で木の根元から切ってもらい持ち帰るのです。木の種類もスギ、ヒバ、松など様々で大きさも180センチほどの「小ぶり」なものから3メールを超えるものまで様々です。日本では、ほとんどの家庭でプラスチックのクリスマスツリーが飾られているようですが、ボストンでこのような「生の」クリスマスツリーが好まれるのには秘密があります。

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 ツリーを部屋に入れると、針葉樹の発散する樟脳のようなかぐわしい香りが部屋いっぱいに広がります。日本でも小さなヒノキの木片がアロマとして売られており、それを部屋にいれるとほのかに香り、すがすがしい気分になることはよくご存知だと思いますが、生の木ではその何百倍もの勢いで発散される香気があり、生の木でなければ味わえない迫力があるのです。その木に飾り付けをし、クリスマスを心待ちにしながら、クリスマスまでの日々を目と鼻とからだ全体で楽しめるのがその秘密なのです。

 本学のクリスマスツリーは大変立派であるにも関わらず、大学では後期の講義も終盤にさしかかり、中間試験や卒論のまとめなどで忙しく、とても浮かれてばかりはいられないというかのように学生達は慌ただしく通り過ぎてゆき、なかなかツリーを楽しんでいる余裕もないようです。辺りが夕闇に包まれる頃、学生達が帰宅し広場に静けさが戻ると、イルミネーションの金色の輝きは星空と一体となって、まるでそこだけ何かのシンフォニーを奏でているかのように見えます。私は誰もいなくなった広場からクリスマスツリー越しに片柳研究所棟をしばし眺めてから帰宅することにしています。光と闇のコントラストの空間はまるでボストンのクリスマスツリーが放つアロマのように私の心を癒してくれます。

山下 俊

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