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学生実験をみてみよう(第2期) 番外編 実験室ライフハック「蒸留の温度測定」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

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 本学、応用化学科の学生実験、「工学基礎実験Ⅱ(C)」の実験内容を紹介する本シリーズですが、今回は番外編です。

 実験でのちょっとした工夫を紹介する、という意味での実験室ライフハック、ここで紹介するのは蒸留実験用の温度センサーです。

 学生実験では水とエタノールを蒸留で分離する実験を行う予定です。その予備実験を行っていてすぐに気がついたのが以下のポイント。

「蒸留が進んで液にも蒸気にもエタノールが無くなり、ほぼ水だけが蒸留されている状態になっても温度計の表示が100℃まで上がらない」

 蒸留において温度測定の役割は多くの場合、温度の変化を観察するもので、温度の絶対値にはそれほど大きな意味はないのかも知れません。ただ、水、という良く知っている物質が蒸留されていて、その沸点が100℃に至らない、というのは面白くありませんよね。(その方が教育的かもしれませんが...。)

 という経緯で作成したのが写真のセンサー。サーミスターのセンサーを外径3ミリのガラス管に入れたもので通常の温度計のホルダーにセットできるようにスリーブを付けてあります。上が蒸気測定様、下は液温度測定用ですが長さ以外の違いはありません。蒸留装置にセットアップした状態は下の写真のようになります。

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 この温度センサーをつかって水だけの蒸留を試してみたところ、ちゃんと100℃になりました。(実際は±0.5℃の誤差があります。)

 では、なぜこの温度センサーは100℃を示すのでしょうか?普通の棒状温度計による測定値はなぜ100℃まで上がらないのでしょう?

 以下に示す解答は私が温度センサーをつくるときに考えたことで、定量的な検証をしている訳ではないことを、まずお断りしておきます。私は、結局のところ普通の棒状温度計が太すぎて長すぎることが原因だろうと考えました。

 上の写真の様に、棒状温度計は三ツ口フラスコにセットした状態で全体の半分以上が外部に出て大気に露出されています。これはフラスコ内の液体側から見れば棒状温度計に向かって熱の逃げ道があるように見えるはずです。にもかかわらず蒸留中に棒状温度計の三ツ口フラスコ外部に出ている部分をさわってもたいして熱くなっていません。棒状温度計の先端は100℃になっていても、そこから20cm程度はなれた部分は室温にとどまっているということは棒状温度計に大きな温度分布がついている、ということです。実際、長さ1mm当たりに0.4℃程度の温度勾配があっても不思議ではありません。また、棒状温度計の温度測定部(液だめの部分)は意外と大きく、4mmくらいの長さがありますから、0.4×4=1.6℃程度の温度分布があると見込まれます。これが温度測定に影響していると考えられます。

 では、棒状温度計から熱が逃げて温度分布がつく、という問題はどうしたら解消されるのでしょうか。一番最初の写真を見てください。温度センサーは接続用のプラグぎりぎりの長さとし、熱が逃げる「外部に出て大気に露出され」る部分が少ない構造にしてあります。温度センサーに組み込まれているサーミスタも温度測定部は直径0.5mmの球形というコンパクトなものを使っています。

 では、温度測定部が小さくて長さが短い棒状温度計があれば、同じように巧く測定できるでしょうか?巧くいく、と私は思います。ただ、棒状温度計の全体が三ツ口フラスコの内部に入っているとすると温度を読み取るのが大変ですよね。

 

江頭 靖幸

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