推薦図書 ヨシタケシンスケ「もうぬげない」ブロンズ新社(片桐教授)
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大学のブログで、しかも大学生向けの推薦図書であえて絵本をもってくることには、若干の逡巡がありました。その上で、あえて、若い学生さんに読んでもらいたいと思います。
私の中学時代高校時代の愛読書はグリム童話集でした。大学で第二外国語にドイツ語を選んだのは、グリム童話集とハイジを原文で読みたかったからでした(同じクラスにはSFのペリーローダンシリーズの最新刊を早く読みたいから、という人もいました)。
童話や絵本は、子供の最初に出会う本であり、その後々に大きな影響を与えます。「三つ子の魂百までも」です。しかも、巧妙に教訓が含まれています。もっともペロー童話集のように明示してあるものもあれば、いくつかのグリム童話のようにどのように読んでも教訓が含まれていないものもあります。その意味で、良い絵本や良い童話や良い児童文学を見いだすことは,子孫への大きな貢献といえます。
さて、今回紹介する絵本は、お風呂の前にシャツを脱がされかけて、脱げなくなった小さな子供が「うん大丈夫!ぼくはこのままでいよう!」とひらきなおってしまうはなしです。しかし、この子は更なる困難な事態に直面し、「もうおしまいだ」と絶望してしまいます。我々にとって些細なことを重大事にとらえ、その上であきらめて開き直ってしまう、その結果絶望の淵に突き落とされる子供を客観的に見ると、滑稽です。この本を実際に読まれたならば、きっと大笑いすることでしょう。
自分で子供を育てると、子供の万能感に驚かされます。「一人でできるもん!」「ぼくにやらせて!」です。これは成長に必須のものです。それで問題を解決できればそれは成長につながります。しかし、困難を克服できなくて、それでも自分の限界を認められず、ひらきなおってしまう態度は、滑稽です。
少し前のブログで「学生との雑談から 心のリミッターを外そう」を書きました。そのときに感じた学生さんの「それは無理、だからやらない」の論理を奇妙に感じた理由をこの絵本は浮き彫りにしてくれました。そして、その開き直りは事態を悪化させ、「もうおしまいだ」ということにもなりかねません。
この子の服を脱げないと言う困難は、お母さんの助力によりいとも簡単に解決します。自分一人で解決できない問題は、誰かの助けで解決できるかもしれません。しかし、その助力を拒否して、できない状態をあきらめて開き直る姿勢と、学生さんの学修に対する逃げ腰の姿勢が私には重なって見えました。もっと教員を使ってください。この大学には学修支援センターをはじめとする手厚いサポートがあります。それを利用せずに、できないことを開き直るのは、客観的に見て滑稽です。
ここまで上から目線でのコメントでしたが、「いや、われわれ教員も、自分一人では解決できない課題を他との協力で解決できるのではないか。」などと考えると、この本は広く大人に、あるいは社会に自らを省みることを勧めているのかもしれません。
深みのある笑いの足りていない皆様に、この絵本をお勧めします。
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