講義 「有機化学1」 第5回目の講義から-2 「体」には2つの意味がある(片桐教授)
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このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義のポイントを読み物にして、解説して行きます。
さて、立体化学の章では、いろいろな「体」が出てきます。「立体異性体」「鏡像異性体」「対掌体」「S体」「R体」「メソ体」「光学活性体」「ラセミ体」….。これらの名称では共通して「体」と言うことばを使っています。しかし、その「体」の表す意味は大きく2つの異なるものに分類できます。
例えば「立体異性体」「鏡像異性体」「対掌体」「S体」「R体」「メソ体」などは、分子の性質を表しています。1つのこの分子がどのような構造的な特徴を持つかについて表しています。
一方、「光学活性体」「ラセミ体」は分子の集合した実際の物質の性質を表します。ラセミ体はS体とR体の1:1の混合物のことです。
この2つの概念を同列に扱うと、混乱をまねきます。さらに、「光学活性体」と言うことばは、キラル分子を表す場合もあれば、S体とR体のどちらかが過剰に存在する混合物を表す場合もあります。大混乱です。
といっても、いまさらどうしようもないので、日本語で有機化学を学ぶ限り、やむを得ないこととあきらめてください。
英語では、それぞれ「立体異性体」=streo-isomer、「鏡像異性体、対掌体」= enantiomer、「S体」= S compound、「メソ体」= meso compound、「ラセミ体」= racemateなど明確です。マクマリーの教科書ではメソ体ではなくメソ化合物と表記していますね。いずれにせよ、日本語訳にした弊害です。先人にはもっとよく考えて呼び方を考えてほしかったところです。
また、皆さんには、日本語だけではなく、英語で論文が読めるように、化学を英語で学ぶことを強くお勧めします。
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