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講義 「有機化学1」 第9回目の講義から Markovnikov則(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義のポイントを読み物にして、解説して行きます。

 Markovnikov則とは、「非対称なアルケンへのハロゲン化水素の付加において、より多くの水素の結合しているsp2炭素(二重結合を持つ炭素)にハロゲン化水素由来の水素が結合する」という反応の位置選択性についての経験則です。この法則は19世紀の中頃に提唱されたもので、当時はどのように反応が進むかについての反応機構的知見はありませんでした。つまり、この法則は原料と試薬と生成物の構造という事実からのみ記述されたものです。そのため、この規則のscope & limitationは明確ではありませんでした。

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 この反応の中間体はカルボカチオンであり、その安定性は 1級<2級 であることが明らかになり、オレフィンへの付加反応の位置選択性の説明や理解は格段に広がりました。経験則のMarkovnikov則と区別するために、この機構を元にした位置選択性をModern Markovnikov則と呼ぶことがあります。

 このModern Markovnikov則は、ハロゲン化水素だけではなく非対称ハロゲンによる酸化的な付加やヒドロホウ素化などの位置選択性も説明できる優れものです。

 反応機構の解明はこのように反応を一般化して理解する手助けをしてくれます。

片桐 利真

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