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書評「グリーンケミストリー」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

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今回紹介するのは

ポール・T. アナスタス, ジョン・C. ワーナー 著、渡辺 正、北島 晶夫訳 「グリーンケミストリー」丸善(1993)

です。

 「グリーンケミストリー」。

 日本語で言えば「環境に優しい化学」というべきものですが、その具体的な内容は漠然としています。本書はその内容を具体的な12の規則にまとめた「グリーンケミストリー12箇条」を示したことで知られています。

 グリーンケミストリー12箇条については本ブログでもすでに片桐教授が解説していますが、以下のものです。

  1. 廃棄物は「出してから処理ではなく」、出さない
  2. 原料をなるべく無駄にしない形の合成をする
  3. 人体と環境に害の少ない反応物、生成物にする
  4. 機能が同じなら、毒性のなるべく小さい物質をつくる
  5. 補助物質はなるべく減らし、使うにしても無害なものを
  6. 環境と経費への負担を考え、省エネを心がける
  7. 原料は枯渇性資源ではなく再生可能な資源から得る
  8. 途中の修飾反応はできるだけ避ける
  9. できるかぎる触媒反応を目指す
  10. 使用後に環境中で分解するような製品を目指す
  11. プロセス計測を導入する
  12. 化学事故につながりにくい物質を使う
この12箇条には化学物質の合成・開発から量産までいろいろなレベルでの行動が含まれています。
 別の言い方をすると、12箇条は応用化学の研究者にも、化学工学の技術者にも、同時に心掛けるべき行動指針を与えている、ということです。化学産業による汚染の主な原因は化学工場ですから、化学工学(化学工場を設計する学問)への行動指針は当然あるべきですが、あえて応用化学の研究にも提言を行っている点が注目されます。

 「問題を解決するより、問題が発生しない様にするべきだ。」第一条が典型的ですが、このような考え方がこの原則の根底にあります。安全な化学工場を化学工学者が設計することも大切ですが、そもそもの製品開発の段階でより危険性が少なく、サステイナブルなプロセスを設計するように心掛けるべきだ、ということです。

 化学産業の分野では製品開発と化学工場設計の仕事は分業体制で運営されています。それを考えると、この原則には製品開発を行う化学者、応用化学の研究者も環境保全に責務を負うべきだ、化学工場を設計する化学工学者に丸投げにはしない、という宣言ともよめるのです。

 第4条や第5条が典型的ですが、これは化学者の研究の中での選択枝に制限を加えるものです。しかし、このような制限を受けてもなお、化学の対象とするフィールドは広大であり、新たな発明・発見の可能性が損なわれることはないでしょう。

江頭 靖幸

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