熱と温度と熱分析(高橋教授)
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風邪かな、熱があるのでは?
熱、計ってみましょう。
あれっ、36.5℃しかないな・・・。
計ったのは、温度(体温)ですね。日常よく使う言葉のひとつである温度と熱。物理化学Ⅰを学習した応用化学科1年生の諸君は、この二つの言葉を厳密に使い分けることを学んでいます。
さて、私たち応用化学科では、サステイナブル工学の基礎となるものつくりや材料特性の解析を行っています。熱的な特性を明らかにするために必須の実験装置のひとつである熱分析装置が、学生実験用に導入されています。熱重量-示差熱量測定(TG-DTA)、示差走査熱量測定(DSC)、熱機械測定(TMA)の3種類の熱測定装置で構成された熱分析システムで、2年次と3年次の応用化学実験における実験課題の中で使用します。
座学である物理化学Ⅰでは、化学反応を理解する上で重要な因子であるエンタルピー変化をDSCで測定できることを学びました。そもそもDSCという装置では、どのような測定・分析を行うのでしょうか。
示差走査熱量測定(DSC)では、熱(エネルギー)を測定したい物質・材料(試料)と基準物質に独立に加えます。加熱に伴い、両者の温度が等しくなるように加える熱流(エネルギー)を制御し、この熱流の差を記録して解析します。相転移や分解などの物理的、化学的変化で生じる発熱や吸熱を補償するように加えられた熱流から、温度に対して、定圧熱容量(一定圧力下で物体の温度を単位温度だけ上昇させるために必要な熱量、比熱というと分かりやすいでしょうか)の変化が求められます。物理化学Ⅰの講義で学んだように、温度に対する定圧熱容量の曲線からエンタルピー変化を求めることができますから、DSC測定によって物理的、化学的変化に伴うエンタルピー変化を測定できるのです。
あとの2機種(TG-DTAとTMA)についても簡単に紹介しておきましょう。
熱重量(TG)-示差熱(DTA)測定では、温度変化に伴い発生する試料の質量変化と熱変化を測定します。試料を加熱(または冷却)すると、試料物質の分解や酸化・還元などの化学変化や気化、昇華、吸脱着などの物理的変化による質量変化が生じます。また、相転移、分解、融解などの変化に伴い発熱や吸熱が生じます。この熱変化を基準物質との温度差として検出します。質量変化の測定や熱変化の測定から、物理・化学変化の原因解明や物質の同定を行います。DSC測定装置は、このTA測定を改良した測定方法といえます。DSC測定やDTA測定測定から、化学反応の速度論的な解析やガラス転移などの現象の解析が行えます。
熱機械分析(TMA)では、試料の温度を変化させながら試料に圧縮、引っ張り、曲げ、ねじりなどの非振動的な力(応力)を加えて、試料の変形を測定します。小さな線膨張係数(たとえば10-6K-1オーダ)を測定可能であり、高分子のガラス転移などの解析にも用います。
応用化学科では、これらの装置を用いた熱分析実験から物性値としての測定にとどまらず、材料を創り材料を使うために物質や材料の熱的性質を理解し、サステイナブル化学に応用する学びを進めていきます。
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